Hobo Nikkan Itoi Shinbun 社長に学べ! おとなの勉強は終わらない。vol.6  株式会社パソナ社長 南部靖之×糸井重里


第4回 人が起こす、すてきな化学反応。

  農業のようなむずかしい場所で
人がほしい時代に
パソナのような会社が動き出したことに
「やったー!」と思いました。
 
そうですね、
農業は、終身雇用であり世襲制であって、
規制ががんじがらめで、
もうずーっと何十年も
人が入らなかったんですよ。
守りに守られたところです。
  ほんとにそうですね。  
その牙城に
僕はなんとか人を送りたいなと
思っているんです。
規制緩和が起こって、
リースであれば企業が
農地を手に入れられる、
という情報も入ってきました。
  やっとそういう時代が来たんですね。  
「雇用の流動化」とよく言われますが、
ニート、フリーター、定年後の方々を
どうにかしなくてはならない、と
僕たちはずっと考えてきました。
今は少しずつ景気がよくなってきたけれども、
ほんの3、4年前はほんとうに
仕事がなかった。
60歳で体のいいクビ切りだし、
そういう方々に、
「農業ならばだれでもやれるんだ」という
道を開きたかったんです。

それに、僕の役割は
農産物を作るということよりも、
ほかにあると思っているんです。
それは例えば
金融関係やIT関係、
メーカーにいた方々を、同じ農地に
5人や10人いっしょに送り込むことによって、
いい化学反応を起こそう、というようなことです。
  なるほど。
それぞれの人が持ってる資産が
そこで活きていくんですね。
 
金融関係の人は、
ほかのことは苦手だけれども
金の借り方や生み出し方を教えてくれる。
食品関係の人は、
加工製品の作り方を知っている。
  トマトそのものは知らなくても
缶詰は知ってるぞ、と。
 
そう。
IT関係なら、温度の管理、天候の情報を
効率よく調べたり提供する方法を知っていたり、
あるいはインターネットでもって
販売方法を考える、ということだって
あるかもしれない。
  そういうメンバーが組むと、
ほんとにいいですね。
 
そのことに加えて、
じつはもう1つ、考えていることがあるんです。
  はい。  
農業をはじめる人は、
サラリーマンという職業と都会の生活をやめて、
1人で地方に行くんです。
会社人間が農業を急にやるのは
やっぱりなかなか不安なんですよ。
メンタル面で、
うまく自分をコントロールできないことも
出てくるかもしれない。
  なるほど。  
それが、10人のグループだったら、どうでしょう。
10人ならば、
10人で構成された1部署が
そこにあると思えばいいんですよ。
  ゲリラ部隊のように。  
1人で行くと不安だけども
10人揃えば、
「お前、ちょっとがんばれよ」とか、
「いやー、今日はちょっと家帰りたい」とか、
「がまんできない」とか、
言えるでしょう。
会社側だって、10人いると
健康管理も福利厚生的なものも、
株式会社形式で見れるわけですよ。
ですから、1名2名の構成はやめて、
一定の単位で1ヶ所に集めることにしたんです。
(月曜日につづきます!)
2006-09-08-FRI
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