Hobo Nikkan Itoi Shinbun 社長に学べ! おとなの勉強は終わらない。vol.6  株式会社パソナ社長 南部靖之×糸井重里


第5回 弱っているところがあれば、そこに光を。

  「農業をやりたい」という人たちって、
これまではずっと
ヒッピー上がりのようなイメージだったんです。
求められていたのは「自然回帰としての農業」で、
都会がいやになって逃げ出す
負のイメージがありました。
しかし、南部さんがされていることを聞くと
そうじゃない。
これは、流動なんだと。
 
流動なんですよ。
出稼ぎの逆です。
  そういうことですね。  
例えば、秋田なんて
11月頃から寒くなるんですよ。
そこから3月末まで、
5ヶ月間は雪の中に入っちゃうわけです。
だから、雪の間は東京に戻って
ITだとかいろんな仕事をすればいいんです。
そういうことができるように
我々もしくみを作っていきたいし、
実現できればいいと思っています。
  なるほど。  
今、企業内ニートがけっこう出てるでしょ?
  企業内ニート(笑)!  
じつは窓際族は、都会では
もうおかげさまで
リストラによって
いなくなった
んです。
  窓際には人がいないんだ!  
そうそう(笑)。
だってどんどんクビ切ってクビ切って、
クビ切りましたからね。

ところが、夜の9時10時まで仕事をしている人でも
なんだか一日中漠然と呆然としていたり、
あるいは部下を全く持たない状況だったり、
そういう人たちがいる。
窓際族じゃないんだけども、
なんとなくコミュニケーションができないような
閉じこもりがちな人が
会社のなかで、ものすごく増えてきたんです。
  それが企業内ニート。  
そうです。
この人たちは都会では治せない。
でも、健康なところに行けば
治るかもしれない。
  日をあてるんですね  
そう、日をあてるわけ!
みんなは
「そんな人は、農業できないよ」
と言うんだけど、そうじゃないんです。
その人は最初から
閉じこもっていたんじゃなくて
ずっと元気でバリバリ仕事をしてたのに、
何らかの原因で
そういう状況になってしまっただけだから。

以前聞いた話ですが、すごく優秀な40歳代の女性が
家庭の事情があって、
急に鬱っぽくなってしまったことがありました。
朝から晩までバリバリやってた人が
ぐっと落ち込んじゃったわけです。
周囲は異動にしようとか、
いろいろ考えたわけです。
そこで、半年間だけ会社の許可をもらって、
彼女は農地に行きました。
そうしたら、いきいきして帰ってきた。
もう2年くらい前の話ですけれどもね。
  農業療法というものがありますね。
具体的に自然を変えていく仕事をすると、
意識が「自分」じゃなくて、
「自然」に行く。
 
そうそう、まさにそうですよ。
  養老孟司さんは、
サラリーマンの参勤交代を唱えているんですよ。
 
おもしろいねえ。
  南部さんが今おっしゃったとおりなんです。
2つ場所を持って
2つ仕事をするやつらが、
順番に交代していけばいいんだと。
 
参勤交代でワークシェアリングね。
  そうすると、人間が人間を、
肉体を取り戻せる。
養老先生は脳の先生ですけど、
ボディ全部を取り戻すためのことを
おっしゃっているんです。

そうやってどんどんみんなが
ボディを使う方向へ
歩き出しているような気がするんですよ。
南部さんだって、
「今から八ヶ岳行くんですよ」
っておっしゃるけど、
もしかしたら、よく考えたら、
行かなくてもいいんだけど、
行くんですよね。
 
そう、「わざわざ」ね。
みんなから見れば、
「そんな時間あったら、もっと商売してくれ」
「会議してくれ」
ということになるんだけど
そうじゃないんですよ。
  「集中管理室にひとりでいる」状態が、
みんなの考える働き者の親分なんです。
だけど、各論のところに突っ込んでいかないと
見えないんですよね。
こういう、南部さんのような方が
人材の会社やってるのがおもしろいな。
 
(明日につづきます!)
2006-09-11-MON
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