「世界一のクリスマスツリー」の植樹式。

来る11月17日、
10階建てビルくらいはありそうな、
大きな大きな「あすなろの木」が、
巨大船によって神戸港に届けられます。
富山県の山奥で発見されたその木は、
「世界一のクリスマスツリー」になるため、
丸3日間かけて海から神戸に入り、
17日朝には、船から巨大クレーンで
木を植え込む「植樹式」が行われます。
この前代未聞のプロジェクトを率いるのは、
プラントハンターとしておなじみの
「そら植物園」代表・西畠清順さん。
「ほぼ日」では、そんな歴史的瞬間を
現地からテキスト中継でお届けします!
レポーターは「ほぼ日」の稲崎です。

西畠清順(にしはた・せいじゅん)
幕末より 150年続く花と植木の卸問屋「花宇」の五代目。
日本全国、世界数十カ国を旅し、収集している植物は数千種類。
2012年、ひとの心に植物を植える活動「そら植物園」をスタートさせ、
国内外含め、多数の企業、団体、行政機関、
プロの植物業者等からの依頼に答え、
さまざまなプロジェクトを各地で展開、反響を呼んでいる。

11月14日(火)〜16日(木)
  • 本プロジェクトのくわしい内容や、
    清順さんのお話などを随時アップします。

11月17日(金)
  • 午前7:00ごろ 中継をスタート
  • 午前8:00ごろ 現地受付の開始
  • 午前8:30ごろ 「植樹式」開始
  • 午前9:30ごろ 「植樹式」終了
  • その後、すこしだけ神戸をぶらぶらします。
goro.inazaki

神戸が選ばれた理由。

2017/11/14 12:30
世界一のクリスマスツリーの
立てられる場所が
神戸になった理由は、
大きく2つあります。

まずひとつめは、
今回のプロジェクトが
「神戸開港150年記念事業」の
関連事業のひとつということ。

それからもうひとつは、
震災からの復興都市として、
このツリーを
復興と再生のシンボルに
しようという思いからです。

清順さんは
兵庫県のご出身だそうで、
1995年1月17日に起きた
「阪神・淡路大震災」の
被災者のひとりでもあります。

清順さんは、
神戸の復興にかける思いもつよく、
「復興と再生をなんとか
やりとげようとしている神戸から、
東北や熊本、全世界に希望を届けたい」
という気持ちで、
このプロジェクトに挑戦しています。

清順さんはこう話します。

「プラントハンターとして、
ひとつだけ
わかったことがあります。
ぼくたちは植物を、
ただ運ぶだけではなく、
植物といっしょに、
なにかのメッセージも
運んでいるような気がしてならない、
ということです。

もしそうだとしたら、
ひとが植物を運ぶことで、
どれだけのメッセージを届けられるか、
巨木の力をお借りしながらですが、
その可能性に挑戦してみたいと、
そう思ったんです」


※Photo Credit : そら植物園 
1枚目:イメージ画像 
2枚目:西畠清順さん(左)と、
メリケンパーク協議会の渡辺真二会長(右)
goro.inazaki

めざせ、世界一のクリスマスツリー!

2017/11/14 12:00
メッセージの最後にあった
「その可能性に挑戦してみたい」
という清順さんの思い。

それを今回のテキスト中継で
できるかぎりみなさんに
お伝えできればいいなと
思っています。

清順さんがこのたび
実現しようとしているプロジェクトは
「めざせ!
世界一のクリスマスツリー PROJECT」。

生木としては
「世界一の高さ」になるという
「世界一のクリスマスツリー(※注)」を、
日本で実現させようというものです。

ツリーの全長は、約31メートル! 
総重量は、約24トン!

ニューヨークにある
ロックフェラー・センターの
クリスマスツリーよりも高く、
10階建てのビルと
ほぼ同じくらいの高さだそうです。
もう、スケールがすごすぎます‥‥。

そんなクリスマスツリーが
立てられる場所は、
神戸屈指のデートスポット
「神戸メリケンパーク」です。

そう、今回の中継先は、
神戸からなんです!


※Photo Credit : そら植物園

※注:本プロジェクトの
「世界一のクリスマスツリー」とは、
人工物ではなく、
人が届けた生木のクリスマスツリーとして
根鉢を含めた鉢底から葉頂点までの
植物体の全長が史上最大、
という意味を指します。
goro.inazaki

西畠清順さんからのメッセージ。

2017/11/14 11:20
はじめに。

たとえばあの時代に、
誰かがスペインに
ひまわりの種を運んでいなかったら、
ゴッホの傑作「ひまわり」は
生まれていなかっただろう。

たとえばあの時代に、
誰かがチャノキを
中国大陸から運ばなかったら、
日本文化を象徴する茶道も、
欧米の貴婦人たちが
アフターヌーンティーを楽しむ文化も
生まれていなかっただろう。

たとえばあの時代に、
誰かがオリーブの苗を小アジアから
ギリシアにもたらさなかったら、
オリーブは、
古代アテネオリンピックの
勝者の象徴にはならなかったはずである。


カザフスタンの道端で売られていた
野生のリンゴの苗が、
たとえばあの時代にトルコを経由して
ヨーロッパに広まらなかったら、
ニュートンは、人類は、
いったいどれだけ
重力の発見に遅れただろうか?

世界史をみても、
プラントハンターとは
船で植物を運び、産業、医療、
芸術、生活様式、文化などに影響を与え、
有形無形問わず、
あらゆる面で世界を変えてきた職業である。
それは、例えばコロンブスが
トウモロコシなどを新大陸から運び
世界に広まったことが物語るように、
私たちの今日の食卓にまで影響している。


時代は流れ、世界を変えた
プラントハンターたちは姿を消し、
革新的だった植物は
いつしか私たちの日常となった。

世界の飽和を成立させるために、
生鮮品、衣料、牧草、
種苗、家具、建築資材など、
時には姿を変えて、
毎日毎日莫大な量の植物が船で運ばれ、
私たちはいつもその恩恵を受けているのだ。

いまの時代、
火傷をしたからと言って
アロエを塗る時代でもなければ、
プラントハンターが運んだ植物が
直接世の中の生活に
影響するわけでもない。

しかし、プラントハンターがいまの時代に
世界を変えることができたとしたら、
それは植物を運ぶことで、
現代人が忘れがちな、
大切な「気付き」を与えること
なのではないだろうか。

大好きな人に花束を届けることも、
茶室に一輪の花を届けることも、
巨大な木を運ぶことも、
本質的には変わらない。

人は、いつの時代も植物を運び、
その恩恵を受け、
喜怒哀楽のシーンを彩ってきた。


いま一度、
ひとが植物を運ぶという行為が、
どれだけのメッセージを届けられるか、
その可能性に挑戦してみたい。


西畠清順


※Photo Credit : そら植物園
goro.inazaki

物語のはじまり。

2017/11/14 11:00
みなさんは、
西畠清順さんという方を知ってますか?

もし名前を知らなかったとしても、
写真をみていただければ
「あ、プラントハンター!」
という方も多いのではないでしょうか。

清順さんは自らを
「プラントハンター」と名乗り、
世界中のさまざまな場所から
植物をあつめる仕事をされています。

そんな清順さんが代表の
「そら植物園」さんから、
あるプロジェクトの企画書が、
「ほぼ日」に送られてきました。

その企画書には
清順さんからのメッセージが
そえられていました。

すこしながい文章なのですが、
いままさに進行中の
壮大な物語を知るための、
とても重要なメッセージだと思いましたので、
ご本人の許可をいただき、
そのまま全文を公開させていただきます。


※Photo Credit : そら植物園