Phoenix-7 花火師さんに訊く、「フェニックス」の規模。
── うちの仲間が去年の「フェニックス」に
大感動しまして。
小泉 そうですか。
── たまたま新潟出身者もいたので、
その者に「フェニックス」の話を聞いているうちに
もう、どんどん見たくなりまして。
小泉 なるほど。
── インターネットにいろんな人が撮った画像が
あったのでそれを見たりしました。
すごい! と思いながらも、
画面の横幅に「フェニックス」が‥‥。
小泉 おさまりきらないですよね。
── ええ。
なので、本物をみるのがほんとにたのしみです。
小泉 ぜひ、みにきてください。
── 最初の「フェニックス」は、
何年前になりますか。
小泉 ええと、昨年が5回目ですから、
今年が6年目になりますね。
── 「フェニックス」は
小泉さんが打ち上げてらっしゃる。
小泉 「フェニックス」という花火に関しては、
3社で打ち上げをやってるんです。
もともとそのお話は、
「3社の若手でやってもらいたい」
というふうな依頼だったんです。
なので、3社それぞれの
いわゆる担い手の人間が主体になって
構成をして打ち上げるのが、
「フェニックス」なんです。
── それが始まったのが6年前。
小泉 はい。
震災の翌年ですね。
── 震災にあった人々のために。
小泉 そうですね。
地震にあったみなさんの落ち込んだ気持ちを‥‥
なんて言いますか、
元気にしてさしあげたいという意味と、
あとは、支援をくださった全国のみなさんに、
長岡はこれだけ頑張ってるんだよ、
というものを見せたいと。
それが「フェニックス」という花火だと思います。
── 必ず平原綾香さんの
『Jupiter』がかかるんですね。
小泉 はい。
── それはなぜその曲に?
小泉 それはですね、震災があって、
震災以降のラジオとか、いろんなところで
あの曲が非常に多く流れたらしいんですね。
私は新潟市のほうに住んでいて
大きい被害は受けてないので、
現地の状況は正直わからなかったんです。
でも仮設住宅にみなさん移られていて。
そういった気持ちがすごく落ちているときに、
あの曲が非常に多くかかり、
あの曲を聴いて勇気づけられたとか
元気になったという方が
すごく多かったらしいんです。
それで、実行委員の方たちから
この曲を使いたいということに。
── なるほどぉ。
小泉 あの曲を使うために、
平原さんの事務所に何度もうかがって
調整を繰り返しました。
もともと『Jupiter』は5、6分の曲なので、
短く編集したものをわざわざ作っていただいて。
── フェニックス用に。
小泉 3分にしてもらったんです、曲を。
── それにしても、あの規模、
というか横幅がすごいですよね。
さっき信濃川を見てきたんです。
「あっちから、あっちまで」と説明されて、
いまだにちょっと信じられません(笑)。
小泉 上流に長生橋という橋があって、
下流側に大手大橋という橋があるんですね。
通常は、このふたつの橋のあいだで、
花火が上がっているんです。
長岡まつりでの花火大会は、
ずっとそこが打ち上げの現場でした。
大手大橋の下流側というのは、
花火を打ち上げたことがなかったんです。
─── はい。
小泉 それが「フェニックス」のために、
ぜひそっち側を使って上げてほしいと、
そういうお話があったんです。
それで、最初の年は、
約1.6キロメートルを総延長として、
6箇所にわけて花火を打ち上げました。
── それが最初の「フェニックス」。
小泉 で、去年は5年目ということで
今までにないものをぜひ、ということで、
川またぎをしたんです。
── 川またぎ?
小泉 今までは同じ平行線上のところで
花火を上げてたんですが、
川をまたいだこっち側でも打ち上げをしました。
最大で15箇所から一斉に花火が。
── えー!
もう、どこを見たらいいんだろう(笑)。
小泉 総延長は2.7キロメートルになったのかな。
よりワイドに。
── すごいですよねぇ‥‥。
それと、規模もそうなんですが、
最後に不死鳥が、
フェニックスがあらわれる演出にはしびれました。
小泉 あれは、型物といいまして。
── 型物。
小泉 うちでも「キティちゃん花火」というのを
つくっています。
── キティちゃん花火!
打ち上げるとキティちゃんが?
小泉 そうです。ちゃんとサンリオさん認定の。
── サンリオのかたが認定しにこられた。
小泉 ええ。
サンリオさんがこちらまでいらして、
この近くで打ち上げた試作花火を見て、
「あ、これならいいです」と。
── 「これはキティちゃんです」と(笑)。
小泉 はい(笑)。
── すばらしいです。
「フェニックス」の形も、
そういう型物のひとつなんですね。
小泉 はい。
花火っていうのは、
どこから見ても丸なんです。
球体の中に仕込まれた星が、
四方八方に飛んでいくので。
型物というのは、玉の中に
たとえばハートマークとか、
そういう絵を平面で描くんです。
こんな具合に(描く)。
── お絵かきですね。
小泉 そう、星を並べてお絵かきをする。
── なるほど。
小泉 これを打ち上げると、
どの位置で破裂するかわからない。
正面から見ればハートだけど、
真横から見れば、ただの線です。
斜めから見れば、ひしゃげたハート。
── なるほど、そうですよね。
小泉 花火は必ず回転して上がります。
無回転って絶対ないんです。
だから絵の向きは決められません。
── はい。
小泉 だから、型物のときはたいてい、
同じ型物を同時にいくつか上げるんです。
そうすれば100パーセントではないですが、
どれかがちょうどいい形で
見えるというわけですね。
── なるほど。
「フェニックス」の不死鳥も
いくつか上がっていました。
小泉 そう、そうなんです。

※小泉欽一さんの会社、
 「新潟煙火工業株式会社」のHPはこちら
 

(つづきます)


2010-07-28-WED