PHILADELPHIA
遙か彼方で働くひとよ。
フィラデルフィアの病院からの手紙。

手紙86 HIV 13 セカンド・オピニオン、など。

こんにちは。

HIVについての話は
「ほぼ日」での連載が始まった頃から
いつかはやろう、と思っていたシリーズだったのですが
いざ、始めてみると
果てしなく話が続いてしまいました。

できるだけわかりやすく説明できるよう
心がけてはみたのですが、
だんだん話が込み入ってくると
もう、自分でも止めることができない、という感じで
暴走気味になってしまったかもしれません。

ここまでお付き合い下さった方々、
ほんとうにありがとうございます。

今回のシリーズについては
わたしがフィラデルフィアに来る前の1年間を過ごした
HIV治療の専門病院での経験が
とても役に立ちました。

これまで、「ほぼ日」への原稿は
書いたらすぐに編集部にメールで送ってきたのですが、
今回のシリーズでは、編集部へ送る前に
当時お世話になった、
3人のHIV治療の専門医に目を通してもらって
わかりにくいところがないかどうか
確かめてもらっていました。

わたしが働いていたのは東京の新宿にある、
国立国際医療センターのエイズ治療・研究開発センター
というところでした。

あまりに長い名前なので、
ACCと略して呼んでいます。

シリーズの中でもご紹介してきたように
このACCは全国のエイズ拠点病院の元締めとして
さまざまな活動を行っています。

もちろん、その中心となるのは
HIVに感染した患者さんの治療です。
現在、ACCには毎月500人ほどの患者さんが
通院しています。

この中には
ACCをかかりつけの病院としていて、
毎月定期的に通ってくる患者さんだけではなく、
他の病院で既に治療を受けている方もいらっしゃいます。

これは、かかりつけの病院を
これまでの病院からACCへ変えるためではなく、
今の世界的な治療のスタンダードと見合わせて、
現在受けている治療が
その患者さんにとって
最良の選択となっているかどうかについて
HIV治療の専門医の意見を聞くためのものです。

こういった意見の交換を
わたしたちは「セカンド・オピニオン」と呼んでいます。
セカンド・オピニオンのためにいらっしゃった方については
ご本人に説明するとともに
その主治医宛にお手紙をお送りしています。

また、ACCでは「治験」といって
開発中の薬などを使ったトライアルも行っています。
現在行なわれているものの一つには、
アメリカ・オーストラリアなどの医療機関と
合同で進められている
インターロイキン2という
リンパ球から放出される物質を使った
トライアルがあります。

インターロイキン2を使うと、
体を守る兵隊のCD4が増えることがわかっていますが、
「このインターロイキン2によるCD4の増加は、
本当に実際の免疫力の改善を反映しているのか?」
ということをテーマに
このトライアルはデザインされています。

臨床治験は、正しい臨床データを得るために
その参加資格や経過について
厳しい基準が設けられていますが、
その基準を満たせば患者さんは誰でも参加できます。
興味のある方は
ACCと連絡をとってみてください。

国立国際医療センターは
最近開通した地下鉄・大江戸線の
若松河田駅から歩いて5分くらいです。
ACCでは平日は毎日、外来患者さんを診察しています。
初めての方は午前11時までにお越しください。

今回のシリーズにあたっては
すべての原稿に目を通してアドバイスを下さった、
ACCの岡慎一先生、源河いくみ先生、
それから、73回目の手紙でご紹介した
青木眞先生にたいへんお世話になりました。

また、青木先生は現在
都立大久保病院、都立駒込病院、
石川県立中央病院、国立仙台病院で
HIV専門外来をお持ちです。

ここで改めて先生方をご紹介するとともに
心よりお礼を申し上げます。

と、いうわけで
HIVについてわたしが言いたかったことは
これで全部です。

次回は
このシリーズの間にいただいたメールについて
考えたことを書こうかな、と思っています。

では、
みなさまどうぞお元気で。

本田美和子

2001-03-25-SUN

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