SHIRU
まっ白いカミ。

165枚目:「廊下」

廊下を走っても誰にもしかられなくなりましたね。
まあ、走りたくなるような廊下もほとんどありませんけどね。
私なんか夜眠る前に理想の廊下を想像して楽しんでますよ。
大正末期には約10度のバンク角をもった
周囲500メートルの走行用円型廊下なるものも
日本橋には二三軒あったらしいじゃないですか。
あーそうそう、高度成長期にはローラーゲームという
野蛮なスポーツがたいそう流行ったらしいですが、それなんか
私に言わせれば糞ですよ。糞。わかりますか。
廊下でじゃれあう若者たちというロマンチックなイメージを
猥雑にアレンジした低俗きわまる行為ですよ。く、くーだらない。
子供にはとても見せられないし説明もできませんよ。
ホントにくーだらないんだなー。
私の住んでるここなんか廊下は幅50センチメートルで
大人が真正面を向いて歩くのさえたいへんなんです。
壁は全てドアでうめつくされてるし。
朝の出勤時刻は戦争です。
安い部屋の住人は
まだ星の出ている時間に起き出して
はるか遠くの出入り口へ向けて歩きはじめるんです。
ええ。そうですそうです走ってはだめなんです。規則?
まあそうですけどやってみれば分かります。
や、冗談ですよ。やらないで。
私なんかローンが組めたおかげで
15番目のドアなんですから全然楽ですよ。
あれ。なんか外がうるさいですね。
なんだろう。ちょっとみてきますね。
うわっ。人が走っている。細長いこの廊下を走っているよ!
はじめて見た。
こ、こらキミ走るな走るな。走ってはいけない。
思うつぼだぞ。死にたいのか!ずるいぞキミだけ!

文・Kohji-3200

2001-03-07-WED

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