よりみち
パン!セ
中学生以上すべての人たちへ。
キミたちに、
伝えたいこと。




今日の、ひとことパン!セ

その「みんな」って、
クラス全員かどうかは、
ほんとうはわからないよね。
そのことは、忘(わす)れちゃいけない。
絶対(ぜつたい)に。

重松清『みんなのなやみ』より

重松清さんは、
いろいろな悩みをすべて、
悩んでいること、
悩んでいるその人じしんを含めて、
そんな迷いやつらさを生きている人すべてを、まるごと肯定する。
本に収録された悩み以外の、
寄せられたすべての悩みに対しても、
ひとりひとりのかたわらに立つようにして、
きみはだいじょうぶだよ、ということばが、
どうかきちんと届くように、と祈っていました。
重松さんの、悩みに対してこたえようとするときの、
真剣な表情と、注意深い、
そして心の底から絞り出しているようなのに、
静かでやさしい声が、ひとりひとりのみんなに届くといいな、
と思います。

(編集担当 清水)





その1 ぼくには、書けませんでした。
「よりみちパン!セ」の、うみの親(つまりは編集者)、
理論社の清水檀さんから糸井重里に、
このシリーズへの執筆依頼があったのは、
3年前のことでした。
糸井は、このシリーズで本を書くことを、断りました。
そのあたりから、ふたりの話はスタートします。

糸井 このシリーズがはじまろうとするときのことを
ぼくはよく憶えています。
こうやってすばらしいシリーズになったことは、
えらい、えらい。えらいですよ。
清水 いちばんはじめの段階で、
糸井さんには執筆をお願いしたんです。
でも、「無理です」とおっしゃっていましたね。
糸井 無理です!
ぼくには無理だ、ということと同時に、
この企画そのものが無理かもしれない、
という思いもありました。
たぶん「そうとうむずかしいですよ」というお話を
当時、したと思います。
清水 はい、よく憶えています。
あまり気にしないようにしましたけれど(笑)。
糸井 13歳あたりの年代に向けたような、こういう企画は、
みんながやりたいにきまっているんです。
でも、みんながやりたいと思っていることは、
じつはちょっとちがっている、ということも、
また、みんながわかっている。
たとえば、百科事典をつくるような発想をしちゃったら、
うまくできっこない。
むずかしい、やった人はいない、
清水さんたちには、それが、できたんです。
だから、ほんとうにえらいと思う。
清水 執筆依頼に行っても
すぐに「はいはい、やりますよ、できますよ」と
おっしゃる著者は、まずいませんでした。
糸井 うん、そうだと思う。
清水 とても興味を持ってはくださるのですが、
「すこし考えてみます」と、みなさんがおっしゃいます。
でも、そういう著者にこそ書いてほしかったんです。
で、引き受けてくださってからも、
まずは、つっかえつっかえです。
考えて、考えて、
考えが一周してから、やっと書けるそうなんです。
糸井 そうでしょうね。
清水 たとえ得意なテーマであっても、
文体を含めた内容はもちろん、
「考えすぎる」ことを
まずはやらなくてはいけなくて、
それまでに時間がすごくかかってしまう、と。
きっと糸井さんは
その時間までお読みになっていたんでしょうけれども。

(ふたりのはなしは、つづきます)

2006-01-10-WED




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