2012-12-14-FRI




糸井 西水さん、
今週行かれる気仙沼は、どちらへ?
西水 ああ、気仙沼は大島に渡るんです。
糸井 あ、大島なんですね。
大島に行くことにした
いちばんのきっかけはなんですか?
西水 直接の縁は、呼んでくださって、です。
私の本『国をつくるという仕事』が、
月刊誌の連載だった頃からの読者の方が、
川尻さんという50代の男性の方なんですけどね、
その方が去年、東日本大震災で、
ものすごいショックを受けられて。
東京の方なんですが。
糸井 はい。
西水 それで私、川尻さんのブログを
いつも読んでたんですよ。
で、震災が起こってすぐのときに
そのブログを読んだら、
いつもはもう生気がみなぎって
リーダーシップ満々の川尻さんが、
もう気が抜けたようにオロオロしているのが、
手に取るようにわかったんです。
糸井 はい。
西水 それで私、「どないしよう」思って
川尻さんに、直感的に短いメールを
ひとつだけ打ったんです。
糸井 それは、どんな?
西水 「おっちゃん、動きなはれ。西水」
糸井 あああー。
西水 私はいつも彼のことを
おっちゃんって呼ぶんで。
糸井 それは、いいメールですね。
西水 そのオロオロしてるおっちゃんの様子を見て、
「動かんと、動いてもらわんと、
 おっちゃんがだめになってしまう‥‥」
糸井 それで、「動きなはれ」と。
西水 そうなんです。
後で聞いたところだと、
その言葉にちょっと背中を押されたって、
おっちゃん、おっしゃるんですけど。
糸井 そうでしょうね。
西水 それからおっちゃん、ボランティアとして
東北に通うようになったんです。
会社に勤めてらっしゃいますから、
金曜日の夜行バスで東北各地に行って。
最初は仙台に行かれたのかな。
で、土曜日は一日ボランティアやって
その日の深夜バスで帰ってくる。
そんな生活をずーっと続けてらして。
糸井 ええ、ええ。
西水 で、三陸沿岸各地、
いろいろボランティアの需要があるところに
引っ張って行かれるわけですけれども、
偶然、気仙沼大島で活動するようになって。
あそこの若者のみんなが
「おばか隊」というチームを作っているんですが、
おっちゃん、「おばか隊」の手助けに入って、
彼らにほれ込んじゃった。
糸井 はい。
西水 それからはおっちゃん、
気仙沼大島にも月一回は必ず通うようになりました。
深夜バスとフェリーに乗って。
糸井 動いてますねぇ。
西水 私はおっちゃんを通して、
「おばか隊」のことも
気仙沼の被害状況も知りました。
私は海外に住んでいるので
被災地にはずっと支援物資を送るくらいしか
できなかったんですけれども、
おっちゃんが動いたことを通じて、
気仙沼の人々のすばらしい活動を
見させていただきました。
それによって、
「大丈夫だ、こういう人たちがいるかぎり」
という希望をわけてもらったんです。
糸井 あそこの人たちは元気をくれますからね。
西水 だから大島には私、お礼に行きますねん。
「ありがとうございました」の気持ちで。
糸井 いい旅ですねぇ。
西水 「お礼にボランティアでも
 なんでもやりますので使ってください」
って言ったら、
「じゃあ小中学校の生徒さんたちに
 お話をしてください」
ということになって、
今回、島の小学生、中学生たちに
お話をさせていただくんですよ。
糸井 はい。
西水 島の旅館に泊まってね、
ふふ。おいしい海鮮物もいただいて。
「おばか隊」の人たちと会って。そんな感じです。
糸井 今はちょうど、サンマも美味い時期ですし。
西水 ふふ。
たのしみです。
糸井 それにしても、今日はお話をさせていただいて、
「オモロイ人だな」と思いました。
西水さん、たのしそうなんですよ、やっぱり。
どこかたのしそうなんです。
西水 じゃあ私も、「たのしかった」です。
人助けしながら、
自分が助けてもらってるんやもんねぇ。
たのしい。
糸井 あのね、西水さん、
ぼくはとくに望みがある人間じゃないですけど
よく思うことのひとつに、
「お通夜のにぎやかな人間でありたい」
っていう望みがありまして。
西水 ほー、それはまた。
糸井 みんながわいわい集まって、
ぼくの噂話をしてほしいと思ってるんです。
「いったん風呂に入ってからまたくるわぁ!」
みたいな、そんなお通夜。
西水 あはははは。
糸井 西水さんもすごそうですね。
世界中でお通夜ができますね。
西水 そやなぁ(笑)、まぁお通夜、
やっぱり、お祭りにしてもらいたいです。
糸井 世界銀行の誰だったかなんてことは、
どうでもいいわけで。
西水 関係ない、関係ない。
糸井 この「ミエコさん」っていう人のことを
みんながしゃべりたいだろうなぁ。
「あのときさぁ」って言いたいと思いますよ。
西水 ふふ。
悪口はたくさんありますよ、たぶん。
糸井 (笑)
西水 糸井さん、
今日はほんとにお時間をいただいて、
ありがとうございました。感激しました。
糸井 いやいや、こちらこそ!
「こういう人かぁ、やっぱり」
みたいな、ね。
西水 それは、お互い様で(笑)。
糸井 ときどき関西弁が混じるのが、
やっぱりすごかったなぁ。
西水 ああ、癖です。
糸井 関西弁の場所を取っといてるんですよ、
無意識で。
ここぞというところで、出す。
西水 たぶん、そうだと思います。
母に言わせると、私の関西弁はおかしな関西弁で
ちょっと京都が入ってるんですって。
糸井 さっきの「おっちゃん」への‥‥
西水 「動きなはれ」ね。
あれも、「君動け」って言ったら
命令調になりますでしょ。
だから「動きなはれ」とやるんですよね。
とくに女言葉の関西弁は、
キツイのがふんわり通じるので、便利ですわぁ(笑)。
糸井 いいなぁ(笑)。
西水さんの「ツール」でもあり、
もうひとつの居場所でもあり、みたいな。
西水 みたいな感じ、ですね。
糸井 おもしろいですねぇ、それは。
西水 というわけで糸井さん。
糸井 はい。
西水 おきばりやす。
一同 (笑)
糸井 きばらせてもらいます。
(西水美恵子さんと糸井重里の対談は、
 これで終了です。
 最後までのご愛読、ありがとうございました!)
2012-12-14-FRI






世界銀行副総裁という立場から、
つねに「現場」に根ざした「国づくり」を
推し進めてきた西水美恵子さん。
こちらは西水さんが、各国で向き合ってきた
改革や支援のことを書かれた1冊。
出会われてきた素晴らしいリーダーたちや
草の根の人々の話をはじめ、
胸に響く話が多数収められています。

英治出版、2009年4月発行 
本体1,800円+税



西水さんが、自身の体験から
考えてきたことや学んできたことを
書かれたのがこちらの本。
リーダーの姿勢やありかた、
働くということ、危機管理の方法など、
さまざまな発見があるとともに
西水さんのまっすぐな姿勢が
読む人に勇気を与えてくれます。

英治出版、2012年5月発行 
本体1,600円+税