任天堂 岩田聡社長からのメッセージ    社長が訊く『Wii U』 特別篇  みなさん、こんにちは。 ほぼ日初代電脳部長、いまは任天堂社長の岩田です。 任天堂の新しいテレビゲーム機Wii Uの 発売の少し前のことになるのですが、 ほぼ日のイトイさんのところに 当社の宮本と一緒にお邪魔する機会がありました。  いつも新しい製品が出るたびに 3人でお話しする機会をつくるようにしています。 これは、イトイさんを交えてお話しすることで、 普段とは違う全く視点で、 自分たちの製品開発のことを 振り返ることができるからです。 結果、商品広報の話ではなく、 むしろ、任天堂のものづくりの考え方、 Wii Uの根底に流れている思想みたいな話ができました。  今日から、ほぼ日の永田さんがまとめてくれた わたしたちの鼎談を、 ほぼ日読者のみなさんにお届けしたいと思います。  もう、Wii Uは発売されていますけど、 実際にWii Uに触っていただいた方が いらっしゃる今だからこそ 読んでいただく価値のある内容に なったような気がします。  ご興味があれば、お付き合いください。
 
 



岩田 Wii Uというハードが年末に出るんですが、
今日は、糸井重里さんを交えて、
この新しいハードがいかにできたか、
ということを話していければと思っています。
 
糸井 今日はもう、聞き役のつもりで。
宮本 よろしくお願いします。
糸井 宮本さんはハードの責任者でもあるんですか。
岩田 責任者というか、全体を見てますよね。
宮本 そうですね。役員でもありますしね。
やっぱり、新しいハードが出るときというのは、
ソフトも含めた、遊び全体の話になるので。
 
岩田 ハードづくりというものが、
昔のハードづくりとは
意味合いが大きく変わってきているんですよ。
糸井 ああ、なるほどね。そういう感じはする。
岩田 だから、ひとつのハードをつくってるというよりは、
仕組みづくりだったり、プラットフォームづくりに近い。
宮本さん、昔の、ハードが独自につくられて、
ソフト屋さんがそれに合わせて
いろいろ考えてた時代からすると、
大きく変わったと思いません?
 
宮本 劇的に変わったのはDSからですよね。
ニンテンドーDS以前のハードというのは、
基本的には、まず、
前のハードを高性能化するプランがあって、
その高性能になったものをソフトで
どう料理しようかっていうのが常だったんですけど、
DSをつくるときは、
「高性能のゲームボーイアドバンスをつくっても、
 果たしてそれが求められているのか?」
というところから考えはじめました。
よそも新しい携帯ゲーム機を出してくるなかで、
たんなる高性能機でいいの? と。
そういう話をしているときに、
山内(溥)さんから「2画面に」という提案があって。
糸井 ああ、そのタイミングで山内さんの
「2画面や!」があったんだ。
岩田 「2画面や!」とはおっしゃってないですけど(笑)。
糸井 そこは勝手に脚色させてもらってさ(笑)。
「ええか、これからは2画面や!」。
 
宮本 まあ、とにかく(笑)、
そういうタイミングでしたから、
簡単な提案ではなかったんですけど、
その線はたしかに追うべきやと。
糸井 つまり、岩田さんのことばを借りれば、
既存のゲーム機の延長線上にある
「ただの高性能化」よりも2画面のほうが。
宮本 そうですね。
岩田 このまま、いままでと同じようなことを
くり返すように新しいハードを出しても、
新しさは感じられないだろうし、
ゲームをやる人は増えないだろう、と。
宮本 それはもう据置型ゲーム機も含めて、
同じようなものをつくってても、個性はない。
個性がないところには価格競争が起こるだけだと。
 
糸井 はーー、それは、
言ってもらってありがたいことばだね。
それは、「なにをやってるんだ!」ぐらいの
強いことばで言われたわけ?
岩田 ああ、おっしゃってましたね(笑)。
糸井 そのへんのさぁ、
山内さんの「キツい言い方」って、
ちょっと聞いてみたいね。
それは、山内さんのファンとしてさ。
岩田 (笑)
 
糸井 宮本さんも言われるんですか?
宮本 ぼくにはわりとね、直接はおっしゃらない。
ふつうの提案はよくされるんですけど、
ちょっとよくないことを言うときなんかは、
ぼくには電話はかかってこない。
糸井 へぇーー(笑)。
でもさぁ、「そのままではあかん」っていうのをさ、
懇々と説く役目の人が、
いま、世の中の会社には、
ものすごく欠けているのかもしれないよ。
 
宮本 そうですねぇ。
岩田 DSが生まれる前に、山内さんの
「いままでと同じことしてたらあかん」というお話は、
もう、ほんとうに何度も、ぼくら聞きましたよ。
宮本 それはもう、耳にタコができるぐらい(笑)。
 
糸井 ああ、そうですか。
岩田 ただ、おっしゃってることが理解できても
すぐに答えがポンと出るわけじゃないですからね。
糸井 そりゃそうだよね(笑)。
岩田 だから「ちょっと待ってください」って(笑)。
 
宮本 わかりますけど「答えが難しいんですよ」って、
ぼく、山内さんによく言ってました。
たぶん、ぼくがもうちょっと上の世代の社員やったら、
ガツーンと怒られてますよ。
ぼくらの子どものような世代になると、まあ、
「苦笑いして終わり」くらいでしたけど。
糸井 ぼくも、山内さんの話を定期的に
聞いてた時期があるからわかるんですけど、
すごく核心を突かれるんですよね。
「娯楽屋がよそと同じことして
 どうすんねん」、みたいな。
宮本 そういうことはもう、一貫してるんですけども。
岩田 だから、信念がずーっと変わってないですから。
それはどこかでわれわれに乗り移ってるんですよね。
やっぱり。
糸井 ああーー、感じますよ、それは。
宮本 だから、山内さんの信念と自分の原点みたいなものが、
とけてしまってるというか。
岩田 乗り移ってますよね。
ま、語り口は多少ソフトになってるとは思うんですけど。
一同 (笑)
 
糸井 それはさぁ、いわば「哲学」じゃないですか。
宮本 そうですね。
糸井 つまり、山内さんはいつも、
根底を問うてるわけだよね。
岩田 はい、はい。
糸井 そういう人が会社にいるっていうのは
そうとう希有なことだと思いますね。
宮本 以前、山内さんがおっしゃったことばに
「一強皆弱」論っていうのがあって、
「娯楽の世界は秀でたものが
 独占するんだ」っていう話なんですけど、
山内さんがそれを持論として言ったときに、
傲慢な思想だとも言われたんですよ。
でも、山内さんが言ってる「一強皆弱」っていうのは、
市場を独占するとかそういうことじゃなくて、
「ほかが思いつかない無二なものをつくって、
 それが勝ってしまったら、
 ほかは追いつけない」っていうことなんですよ。
つまり、娯楽の世界というのは、
「一強皆弱」になってしまう構造なんです。
 
糸井 あー、なるほど。
宮本 だからこそ、よそと同じでどうする、と。
糸井 いや、逆に言うとそれしかないですよね。
エンターテイメントでなにかやろうとするときに、
「よそとそっくりなんですけど、
 うちのほうがちょっといいんです」
とか言ったって、興味持てないもんねぇ。
岩田 どう違うのかをひと言で説明できないだけで
人は興味を失ってしまいますからね。
宮本 その一方で、
よそにないものがあるのはいいんですけど、
よそにあるものがないっていうのは、
それはそれでみんな嫌がりますから。
糸井 ああー、そうか。
宮本 だからといって、よそにあるもの、
過去にやってきたことをぜんぶ盛り込むと
新しいことができなくなってしまう。
岩田 まあ、ぜんぶを盛ったうえに
独自のことを追求しようとなると、
サイズも価格もどんどん上がっていきますし。
宮本 だからこそ、やっぱり、
よそにない新しいことが重要なんですよね。
それがないと、古いものを外せないので。
ハードの技術を直線的に積み上げているだけだと、
こわくて、ぜんぶ、盛っていくしかないんですよ。
 
糸井 そのあたりも山内さんの言ってることと
根っこのところでつながってきますね。
おもしろいなあ、その、
哲学というか、DNAというか‥‥。
岩田 そうですね。
その意味でいえば、Wii Uって
「テレビゲームが2画面になったらどうなるの?」
っていうものでもあるので。
糸井 あ!
 
岩田 Wii Uの開発に向けて、山内さんは
なにひとつ具体的なことは
おっしゃってないんですけど、
間接的には、山内さんのDS時代の提案から
つながってるとも言えなくはないですよね。
糸井 ああ、そうだねぇ。
しかも、まさにあれだ、
Wiiにあるものを残しつつ、
よそにない新しいものを加えて。
岩田 はい。


(つづきます)


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2012-12-20-THU
 
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