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2見ているだけでも、うれしい、たのしい

糸井
もとはといえば、
開発が行き詰まっちゃったのが原因で
「Mii」が生まれたわけですね。
そういう話って、任天堂の人と話していると
よく出てきますよね。
「ちょこちょこっとつくってみたら
変なものができちゃったんで‥‥」とか。

あれはどういう時間にやってるんですか?
坂本
どういう時間に、というと‥‥。
糸井
昼間?
坂本
昼間です(笑)。
ふつうに、業務時間中に。
糸井
それ、好きでやってるんですよね、きっと。
で、いつの間にか、
試作みたいなものができてる。
坂本
そうですね。
糸井
そのあたりの、ささっとつくる感じというか、
コソコソしているわけじゃないんだけど、
「あいつがいま何をやってるかが
わかられてない感じ」というのは、

任天堂ならではのおもしろいところだと思うなぁ。
坂本
ああ、それはたしかにそうかもしれません。
体質といいますか。
糸井
その体質がすごくうまく発揮されたのが、
ニンテンドーDSのときの
『脳トレ(脳を鍛える大人のDSトレーニング)』とか
『バンブラ(大合奏!バンドブラザーズ)』
だと思うんですよ。
あれって、ちょっとことばは悪いですけど、
いろんな人がささっとつくったものが
見事に形になったわけで。
坂本
はい、はい。
糸井
そのへんが会社の個性としておもしろいですよねぇ。
あの、宮本(茂)さんって、
ゲームづくりにおいては
いわば「スーパーマン」じゃないですか。
だから、ふつうの企業の考え方だと、
ぜんぶの開発の部署のてっぺんに置いて
「小さいことまで宮本さんに見てもらおう」
っていうふうになると思うんですけど、
そうすると宮本さんの時間が
どんどんなくなってしまうんですね。
さらに、ゲームも本格的なものばかりに
なってしまう可能性がある。
そこで、岩田さんは、いわば、
「宮本さんから隠れてつくるチーム」を
つくったわけじゃないですか。
坂本
そうですね。
糸井
それで、結果的に、任天堂のなかに
考える核がふたつできたんですよね。
宮本さんの場所と、宮本さん以外の場所。
岩田さんは宮本さんのことをいちばん好きで
ものすごく尊敬もしてたんだけど、
「宮本さんにぜんぶ任せておいたら、
任天堂の流れがひとつになっちゃう」と思って、

宮本さんの目が届かないチームをあえてつくった。
で、そのチームは、岩田さん自身が管理して、
半年で開発できるようなゲームをどんどんつくらせた。
それが、任天堂の豊かさにつながったわけで。
坂本
そうですね。
糸井
その、「宮本さんから隠す」という発想が
岩田さんの発明だったわけですよね。
坂本
はい。
実際、そのふたつの開発の部署は、
フロアも違いましたし、
文化も違っていたように思います。
糸井
かといって対立するような関係でもないですよね。
宮本さん自身も、
いわゆる『マリオ』だ『ゼルダ』だじゃなくて、
「小さくできるものが
あったほうがいいんですよね」というのは

以前からよくおっしゃってましたし。
坂本
そうですね。
糸井
坂本さんは、どちらかというと、
宮本さんとは違う部署にいたわけですか。
坂本
ぼくはそもそも、
宮本と仕事をしたことがないんです。
糸井
ないんですか。一度も?
坂本
はい、横井軍平さんがいた時代から
ずっと、宮本とは違う開発部にいたんです。
糸井
じゃあ、どちらかといえば、
『マリオ』とか『ゼルダ』とかの
流れとは違うところに。
坂本
はい。ずっと、のびのびと、
放し飼いにされてました。
糸井
ああ、放し飼い(笑)。
『どうぶつの森』チームは?
坂本
『どうぶつの森』は
宮本が見ているほうの開発ですね。
糸井
じゃあ『どうぶつの森』と
『トモダチコレクション』って、
まったく違うんですか。
坂本
ぜんぜん違います。
糸井
へーー、そうなんですか。
まぁ、たしかに、言われてみれば、
着地点のイメージが違う気がします。
勝ち負けがないとか、
点数やクリアーの概念がないとか、
似ている部分もありますけど。
坂本
共通するところはありますね。
ゲームで遊んでいるというよりは、
金魚とか、動物を飼っているような感じ。
ちょっと、おままごと的な感覚。
糸井
ああ、おままごとの要素はありますね。
『トモダチコレクション』にも、
『どうぶつの森』にも。
あんまりそういうゲームって、ないですよね。
坂本
ないと思います。
だから、『トモダチコレクション』を
発売するときは、すごく不安でした。
ぼくらはおもしろいけれども、
買ってくれたお客様がたは、
これを本当におもしろいと思ってくれるのか。
糸井
ゲームって、やっぱり競う部分が
必要だとみんなが思っていたからね。
でも、ある時期から、
そういう前提を疑うようなゲームが
たくさん出てきた。
その代表が、『どうぶつの森』であり、
『トモダチコレクション』であり。
坂本
そうですね。
スコアとか勝ち負けといった、
ゲームっぽいモチベーションで
引っ張るわけじゃなく、
毎日、起動して、見ているだけでも
うれしい、たのしい、という方向性の遊び。
糸井
うん。
そして、それがまさに、
『Miitomo』へとつながっていくわけですけど。

(つづきます)

2016-07-01-FRI