気仙沼から「まいまい京都ツアー」に 参加しにいきました。

こんにちは、気仙沼のほぼ日のです。

あれはいつのことだったでしょう、
まだ季節は春だった気がします。
ほぼ日のからメールが来ました。

「サユミはいつ東京に出張に来るの?」
「ちょっと未定ですね‥‥」

そう答えたものの、せっかちな二人の先輩が、
「じゃあ、待ってられないからスカイプ会議するか!」
と言い出したので、
速やかに会議が行われることになりました。


▲限界までスカイプ画面に映り込む先輩2人。

「あのね、サユミが京都に行って
 京都のツアーに取材で参加してくるってことに
 なったから」
伝達事項はそれだけでした。
「私、京都行った事ないんですよ」
「逆に、いいんじゃない?」
「1人ですか?」
「そうだよ!」
会議の議題は一瞬で決着し、
その他のただただたのしい雑談ののちに、終了しました。
こうして、私は1人、
なんだかよくわからぬまま、
気仙沼から京都出張をすることになりました。

東北生まれ、東北育ち。
さらに私の通っていた高校は修学旅行がなかったので、
高校生の通過儀礼とも言える、
京都旅行をスルーした人生を送ってきてしまいました。
正真正銘、初めての京都なのです。

仕事とはいえ、初めて行く京都で、
ツアーに参加できるなんて、
正直ラッキーだなぁと思いました。
気仙沼のほぼ日で働いていてよかったー。

今回、私が参加させていただいたのは、
「まいまい京都」さんのツアーです。
運営をされている方から、
「ぜひ、一度きてみてくださいね」
というメールがほぼ日に届いていたので、
上記のような会議を経て、
私が参加させてもらうことになりました。
まいまい京都さんは、
地元市民がガイドつとめるツアーを企画されており、
ガイドさんの人数はなんと150名も!
リピーターが後を絶たない
知る人ぞ知る人気ツアー‥‥
というところまで、事前に調べました。

このとき、私が予約したのは、
8月のツアーです。
8月‥‥
いくら京都に縁がなくても、
「夏の京都は暑い」という事くらいは知っているので、
万全の態勢で出張に挑むべく、
服装は「最大の涼しさを得られる服」を
用意しておくことにしました。


▲サユミなりのクールビズ

それから季節は過ぎ、8月頭になりましたが、
気仙沼はまだ梅雨があけていませんでした。
聞けば今年は猛暑らしいじゃないですか。
でも、この時気仙沼はまだ肌寒いくらいでした。
京都の暑さが全然想像できません。


▲いざ、京都へ!

京都出張のために、気仙沼から東京へ、
東京で一泊して、京都へ向かいます。
ちなみに、気仙沼から京都までは900kmオーバーです。
日本って、結構広いんですね。


▲京都駅着。暑い。

なじみのない関西の言葉を
みんなが話してるというだけで、
すごく遠くまできた感じがします。
そして、やはり‥‥暑い!
でも大丈夫。そのために涼しい格好をしてきたんだ。
ここから地下鉄に乗って、
ツアー集合場所の北山へ向かいます。
西も東もわからない‥‥
全く土地勘がない一人旅なので、少々不安になりましたが、
私もいい大人なので、
集合場所までなんとかたどりつきました。


▲北山駅改札前に時間通り集合。

北山駅改札前にはすでに
ツアー参加者のみなさんが集合していました。
ビーチ仕様の私は、すこし浮いている気がします。


▲今回のツアーガイド、梅林さん(左)と
 まいまいスタッフの阿比留さん(右)

「今日は鞍馬街道、深泥池村の記憶をたどるツアーです」
と、今回の簡単な説明がありました。
京都と言えば、清水寺や金閣寺などしか知らなかったので、
とりあえず頭だけ頷いてみましたが、
「鞍馬街道とはつまり街道だ」ということ以上に
何も想像ができず、
「さ、みなさんの大好きな古地図ですよ~」
と、配られた資料を
嬉々として受け取る参加者のみなさんと、私の間には
大きな知識レベルの差が存在する気がしました。
大丈夫なのでしょうか。


▲ガイドさんがそれぞれ独自に用意されるという資料。

「梅林さんのツアーは、募集開始から一瞬で
 予約がいっぱいになってしまうんですよ」
という参加者の方のお話を聞くたび、
そんな人気ツアーの枠を
うめてしまって良かったのだろうかと
思ったりもしました。

いろいろと不安になりつつも、
定刻通りツアーはスタートしました。


▲出発! 日差しがまぶしい。

梅林さんのお話によると、
ここ北山は
「東京の青山みたいにしよう」という計画がたてられ、
おしゃれな建築や、お店が沢山あったそうです。
「でも、洛北(京都の市街地北部)の歴史をみれば、
 そういうのが似合わない街だってことはわかります。
 スカしただけの建物は
 時の流れとともにだいたい
 なくなってしまいました。」


▲「スカした」を連呼する梅林さん

「北山は、スカしてる。でも、そんな街じゃないはずです」
梅林さんのはっきりした物言いに
「気仙沼のジャックナイフ」と呼ばれている私サユミも
驚きを隠せません。
ですが、どうやら梅林さんの本意は、
もっと北山には北山らしさというものがあるんだ、
というところにあるようです。なんだか安心しました。
上辺だけの「おしゃれさ」に対して容赦なく発せられる
「スカしてますねぇ~」の言葉は
この街を愛しているが故の、
梅林さんの愛のムチのようです。

駅からまっすぐ歩いて行くと今回のメインスポットの一つ
「深泥池」にたどり着きました。


▲深泥池。「みどろがいけ」とも
 「みぞろがいけ」とも読みます。

ここは、あの有名な
「タクシーに乗せた女性客がこつ然と消えていた」怪談話の
発祥の地?なのだとか。
いろんな伝説があるとか‥‥。
つまり、怪談系のお話です。
蛇の化身と人間が結ばれたという
「蛇女伝説」というお話も教えていただきました。
ところで、私は「怪談大好き」の「超怖がり」なので、
きっと怪談の話し甲斐があると思います。
みなさんも、私を見かけたら、
ぜひ怪談話を教えてください。


▲夜に来たら怖いと思う。
 しばし、池を堪能し、鞍馬街道をさらに進んでいきます。

街道沿いには、貴舩(きふね)神社
という神社がありました。
この神社には、深泥池村の近代史が
多くのモニュメントとして
記憶されています。


▲戦死者の記録として立てられている碑

「このまちを襲った大きな台風の記録」や、
「村から出兵した大東亜戦争の戦死者の記録」など、
そのひとつひとつが、
村人による村人のための記録
であることがよくわかります。


▲昭和9年の台風の記録

「神社合祀」とか「廃仏毀釈」とか
「役行者」とか「南方熊楠」とか
どんどん単語が出てきますが、
参加者のみなさんの知識がすごい。
ツアーの中では、学校で習ったな~
と思う言葉がたくさん出てきました。

そしてツアーは、
街道の峠越えにさしかかります。


▲峠。それは上り坂と下り坂のコンビネーションである。

しかし、真夏の峠って、結構、きついですよねー。
ちがうちがう、これは「やせるチャンス」‥‥!
気仙沼で山登り中にスガノから教えてもらった魔法の言葉。
それが「やせるチャンス」!
どんなにキツい坂でも、
そう思うとやすやすと耐えることができます。
上り坂、出てこいや!

途中、立派なお屋敷があったり、
「喧噪御免」と書かれた
猪犬訓練道場っていうのがあったり、
ツルハシをもったお地蔵さんがあったり、
ひとつひとつが面白いです。


▲気になるものは一つ一つ説明してもらえます。

こういう所って、ガイドしていただかなければ、
通り過ぎてしまうものですよね。
でも「これはなんだろう?」っていう
好奇心を持って歩けば、
街の記憶が沢山隠れていることに気づきます。
そして、それってきっと
このまいまい京都ツアーの
一番の醍醐味だと思うんですよね。

ツアー開始当初に感じていた不安はいつしか消え、
私の心はだんだんと喜びに満ちていくようでした。

それは、楽しさや面白さや喜びは、
日常の中にあふれているのだと、
ガイドの梅林さんや参加者のみなさんが
教えてくれたからです。
自分の心のもちようで、
街はいろいろな顔を見せてくれるのだから、
それに気付さえすれば、もっと街を楽しむことができる。
そうしたら、どんな場所にいても、
すばらしい毎日になると思います。
当たり前のことなのかもしれませんが、
私はこのとき初めて、そのことに気づくことができました。
こうして、町の魅力にふれながら
「やせるチャンス」を歩きまくった私は、
気持ちがふくらんでいくのがわかりました。


▲どんなところにも歴史はある。

峠を越え、岩倉方面へ抜け出ると、
そこには新しい住宅地が広がっていました。


▲路地をぬけると新興住宅地に。

「また、現代に戻ってきましたよ」という
梅林さんの言葉の通り、
このツアーで鞍馬街道を歩いただけで、
現代と過去をいったりきたりしているような
不思議な感覚がありました。


▲最終目的地の幡枝八幡宮に到着!

日本の観光地の代表とも言える京都に、
私は初めてやってきましたが、
一番最初にこういうツアーに参加させてもらえて、
良かったなぁと思いました。

旅行者としての見方も変わった気がします。
みなさんのおかげで、
私の目が少し変われたのかもしれません。
ありがとうございました。
そしてありがとう鞍馬街道‥‥!


▲さ~、みなさん!
 「では最後に、ここを昇りましょう!
 僕のツアーでお約束の、石段です。
 みなさんもこのまま終わっては物足りないでしょう!」

わー、これで終わりじゃなかった。
ゴールは幡枝八幡宮の、一番上だそうです!
ひえー。


▲出た! やせるチャンス!

あのねー、私、今までずっと文化部だったんですよねー。
結構、だから、石段とか、きついですよねー。
いやいやいや、ちがうちがうちがう!
これはやせるチャンスじゃないか!!
石段嬉しいなー。石段があってよかったー。


▲写真を撮るフリをして休む。夕日がきれいです。


▲おつかれさまでした!

‥‥ようやく上がりきりました。
本当に、貴重な体験をさせてもらいました。
息がきれまくっている私は、
「サユミさん、大丈夫ですか!?」
と皆さんにご心配いただきましたが、
「大丈夫です! チャンスですから!」
と張り切って答えました。


▲シメはモダン焼き

ツアー終了後は、
みなさんとモダン焼きのお店にいって、
いろいろなお話をすることができました。
参加者のみなさん同士も、
もうずいぶん昔から知ってる仲間のようです。
聞けば、100回もツアーに参加している方もいるのだとか。


▲参加回数を重ねた人はバッヂがもらえる

ツアーガイドの梅林さんもそうですが、
参加者のみなさんの
「まいまい京都ツアー」に対する思いも、
かなりアツいものがありました。
確かに、毎回発見があるので、
参加するほどに面白さが増しそうな気がします。


▲夜の部もお別れ。みなさんありがとうございました~!

ガイドの梅林さんはじめ、みなさんから
「今日、サユミさんは、
 初めての京都とは思えないところをまわりましたよね。
 明日は良かったら、普通の京都観光をしてみては?」
と言われました。
せっかくなので、
夏の京都をちょっと観光しました。




▲金閣寺と銀閣寺と私
   
さすが日本有数の観光地です。
国内外の観光客であふれていたため、
劇団セルフタイマーをする余裕はなく、
表情にも余裕がありません。
はじめての京都で、
はじめての自分撮りを経験することになりました。

私の出張はこれでおしまいです。

私が知っていた有名な京都の姿も
やはり、素晴らしかったですが、
1人で京都にやってきたら
絶対に出会えなかった京都の姿にも
触れられた気がします。
だから、もっとこの街の事を知りたいなと思いました。
気仙沼に帰ったら、このツアーで養った「目」で
まだ知らない気仙沼の姿を
探してみたいと思います。

まいまい京都

まいまいとは「うろうろする」という京ことば、
京都の住民がガイドする京都のミニツアーです。
京町家大工の棟梁、老舗呉服屋店主、
花街のお姐さん、占い師、妖怪の子孫など、
バラエティに富んだガイドさんが、
それぞれの独自のツアーを案内してくれます。

全164コース「 まいまい京都2013秋」が
9月から開催するそうです。

 

2013-09-02-MON