「あの日起こったこと」を 11人の漫画家が語り継ぐ『ストーリー311』。 発起人・ひうらさとるさんにインタビュー。 サイン本のプレゼントもあります!

こんにちは、です。
個人的な話で恐縮ですが、私は小学生のころから
漫画家・ひうらさとるさんのファンで
25年以上、作品を読み続けています。
以前行われたサイン会に参加したのをきっかけに、
「ほぼ日手帳」のページにこんな記事
書かせていただいたこともありました。

そして、昨年のこと。
ひうらさんが発起人となって生まれた
「ストーリー311」というプロジェクトのことを知りました。
これは、漫画家が東日本大震災の被災地に行って取材をし
漫画にして残すことを目的としたプロジェクトです。
それぞれの漫画はまとめて1冊の本にし、
印税および著作権料は被災地復興のために寄付するとのこと。
参加されたのは、ひうらさとるさん、上田倫子さん、
うめさん、おかざき真里さん、岡本慶子さん、
さちみりほさん、新條まゆさん、末次由紀さん、
ななじ眺さん、東村アキコさん、樋口橘さんの11名。
みなさん、一度はどなたかの漫画を読んだことがあるのでは? 
と思うような、すごいメンバーなんです。


▲第1話は、『ちはやふる』の末次由紀さんが執筆。

今年の3月11日に、それぞれの漫画を
1冊にまとめた単行本『ストーリー311』が発売されました。
単行本になる前は講談社の「デジキス」というサイトで、
1話ずつ期間限定で公開されていたのですが、
私自身、それを読みながら、第一線で活躍される
漫画家さんたちがこのプロジェクトに参加された理由や
現地でどんなことを考えたのかをすごく知りたくなりました。

そんな折、「ほぼ日手帳」の記事掲載の件で知り合った
ひうらさんのマネージャーさんから
3月16日に、『ストーリー311』の
発売記念イベントがあるとお誘いをいただいたんです。
そこで、イベント開始前におじゃまして、
ひうらさんにさまざまなお話をうかがってきました!

ーー お久しぶりです。
漫画『ストーリー311』を
読ませていただきました。
ひうら ありがとうございます。
ーー ひうらさんが最初に、発起人として
このプロジェクトを立ち上げたのは
何がきっかけだったのでしょうか。
ひうら 最初は、友人の言葉がきっかけでした。
被災地でボランティアをしていた友人が、あるとき
「現地のことを、漫画で描いて伝えたらどうか」って
提案してくれたんです。
漫画家として役にたつことがあるなら、
やってみたいと思いました。
でも、発起人っていうのもおこがましくて、
私はたまたま漫画家の友人が多かったので、
みんなをつなぐハブ的な役割をしただけというか。
ーー これだけたくさんの漫画家さんたちを集めるのも、
大変だったんじゃないでしょうか。
ひうら それが、みんなすごく忙しいのにもかかわらず、
声をかけたほとんどの方がOKしてくれて、
すぐにスケジュールを調整してくださったんです。
でも、若干の不安もあって。
だいたい漫画家はみんな非力で、
ペンより重いものを持ったことがないし(笑)。
ーー (笑)
ひうら だけど、スケジュールが決まると、
みんな行動が速かったですね。
それぞれが取材に行って、
どんどん描き上げていきました。
ーー 実際に取材をされるにあたって、
どういうところが大変でしたか。
ひうら うーん、漫画ってどうしても漫画家のフィルターを
通した表現になってしまいますし、
何をどこまで描けばいいのか、
みんな、ものすごく迷っていましたね。
せっかく取材させていただいたのに、
1話あたり8ページと短いので、
ぜんぶ入れられないこともあったり‥‥。
ーー たしかに、どこまで入れるかって
判断が難しそうですね。
でも、限られた枚数のなかで、
どの漫画家さんも、さまざまな視点から
描かれている印象を受けました。
ひうらさんご自身は、
福島県へ行かれたんですよね。
ひうら はい。最初は南三陸に行って、
その後、福島県で、生徒数が
7分の1に減ってしまった小学校で
教師をしている女性に
取材をさせていただきました。
ーー その話を、最初にデジタル版で
読ませていただいたんですけど、
ひうらさんの覚悟のようなものを感じたんです。
これまでのひうらさんの作品に登場する女性って
すごくリアルで、私自身、元気づけられてきました。
漫画から伝わるメッセージ性のようなものを
すごく大事にされてきたんじゃないかな、って思うんです。
でも、今回の漫画に登場された女性の
「出産についての思い」っていうのは、
いろいろな捉え方をされてしまうかもしれないですし、
かなり勇気がいったんじゃないかと‥‥。
ひうら ‥‥正直、描くことを迷いました。
「私はそうは思わない」っていう意見も多いだろうし、
いろんな考えの人がいるのに、
そのとき出会った1人の女性の意見を描くことに対して
「本当にいいんだろうか」って思いもありました。
何より、こういうことを描くことで
せっかくがんばっている
福島の復興をさまたげることに
なるのではないのかな、って考えこんでしまって。
ーー ‥‥それでも、描こうと思った理由って、
何だったんでしょうか。
ひうら うーん‥‥
福島については、たとえば原発についても
さまざまな主張をする方がいて、
何が正しいのかって、やっぱり分からないです。
取材した小学校の先生は、いまも放射能の
影響が続く地域で教師を務めながら、
どっちにも偏らないニュートラルな発言を
されている先生だったんですね。
その先生が、あの、
「自分は出産を考えていない」って発言をされたとき
私自身、同じ女性としてすごくショックを受けたんです。
そういう発言がでるにあたって、
どれだけ不安な気持ちがあったんだろうって‥‥。
だけど、こういう問題は描くのを控えたほうがいい、
と思って遠巻きにみていたら、
そのとき、その先生が感じていた不安な気持ちが
おいてきぼりになってしまうと思ったんです。
ーー ‥‥おいてきぼり。
ひうら はい。
被災地のためにと思って描いているのに、
結果的に誰かを傷つける結果になるかも、
ってすごく悩んだんです。
だけど、その1人の女性が不安に思ったという
事実そのものが「なかったこと」になってしまうのは
どうなんだろうって思いました。
ーー 正しいかどうかというより、
そのとき、こういうふうに悩んでいた人がいる、
ってことなんですよね。
単行本には、後日談も収録されていましたが‥‥。
ひうら そうなんです。
デジタル版で漫画を公開したあと、
もう一度、追加取材に行きました。
最初に取材したときは、
本当に目の前のことに精一杯っていう感じの
印象だったんですけど、
2回目の取材では、学校の状況が少しずつ
落ち着かれているそうで、
先生ご自身も、前回お会いしたときよりも
やわらかな笑顔でお話をしてくださいました。
最初の取材以降、メールのやり取りをしていたのですが、
その間にご結婚されたこともお知らせくださって‥‥。
単行本では、その話も後日談として入れて、
漫画のなかの表現も少し変えて収録しています。
ーー ひうらさんだけでなく、ほかの漫画家さんたちも
被災された方1人1人の気持ちの揺れを
忠実に描かれているのを感じました。
ドキュメンタリーのように
一瞬一瞬を切り取った漫画が集まっているなと。
ひうら そうですね。
私と同じく福島県を取材した岡本慶子さんは、
現地で知り合った主婦の方をモデルにしています。
そのお母さんは、インターネットで
放射能の情報を調べるたびに敏感になってしまって
周囲から孤立していくんですけど、
あれも、お母さんの行動が正しいか
間違いかとかではなく、
そのとき、1人1人がとっても不安を抱えていて、
精一杯の行動をしていた、というのを
伝えたかったストーリーです。
読者の方からも
「被災者ではないけれど、お母さんの気持ちがわかる」
というふうな声をいただいたりして、
反響がとても大きかったです。
ーー 私も、あの話はとてもリアルだなって思いました。
ちなみに、実際に漫画のモデルとなられた
被災地の方たちは、
どんなふうにおっしゃっていますか?
ひうら それが、みなさん、
すごく喜んでくださったんですよね。
「いやいや、きれいに描いてくださって」とか、
第1話に登場する、南三陸の山内さんは
「自分がかっこよく描かれててびっくりしました」って(笑)。
みなさん、ほんとうにつらい経験をされたので、
「思い出したくない」という気持ちがありつつも、
日常を送るなかで、
「忘れてしまいそうになるのが怖い」という
気持ちがあるそうなんですね。
だから、漫画という形で留めておけることや、
みんなが読んで共感してくれることが
うれしいっていう感想をいただいています。
ーー すごく悲しい思いをされたはずなのに、
そのあたり、みなさん本当に‥‥
気持ちがやさしいんですね。
ひうら やっぱり、私たちも
最初に被災地に行く前は、自分に何ができるのか、
構えてしまう気持ちがあったんですけど、
実際に行ってみると、
「来てもらえるだけで十分だ」
「おいしいものを食べて土産話を持って帰ってほしい」って
言ってくださる方がいて。
1回行くだけで、もちろん喜んでくれるんですけど、
2回行くと、とてもびっくりされて、
「また来たのか!」って、すごく喜んでくれるんですね。
行ってよかったなと思いますし、
みなさんもぜひ機会があったら
現地にも行っていただきたいなと思います。
ーー ここからも1年、また1年と時が経つたびに
現地の様子や、そこで暮らす方々の心境に
変化もあると思いますが、
続編を描く予定はありますか?
ひうら できれば第2弾もやりたいと思っています。
今回参加できなかった漫画家さんで、
「次回は絶対参加したい」と
言ってくださっている方が多いんです。
ただ、第2弾を出すにあたって
出版社さんにご協力いただくためにも
第1弾の反響っていうのがかかわってくるので、
いま宣伝活動にも力を入れているところです。
実現できるようにがんばります!
ーー 応援しています。
ひうらさん、どうも、ありがとうございました!

その後、講談社の会議室にて
ファンのみなさんを呼んで
発売記念トークショーがおこなわれました。


ひうらさんがイベントに参加された漫画家さんたちを紹介。
左から、岡本慶子さん、さちみりほさん、
新條まゆさん、うめ(小沢高広・妹尾朝子)さんです。

実際に漫画のモデルになった南三陸町の山内さんが
「語り部」として登場。震災当日の様子、
いまだ癒えることのない気持ちなどを
とても丁寧に話してくださいました。


トークショーでは、
それぞれ、取材した土地に愛着がめばえていると
お話してくださいました。
東北の新鮮な魚介類や地酒の話で盛り上がります。


チャリティーオークションについても説明がありました。
なんと『ちはやふる』に出演できる権利!!
(こちらは、既に入札が終了しています)

そして、みなさん、口をそろえて、
「このプロジェクトに参加することで
 被災地に行くことができてよかった。
 現地の様子を少しでも多くの方に知ってほしい」と
力強くおっしゃっていたのが印象的でした。
そして私も、微力ながら少しでもお手伝いができれば、
と感じた1日でした。
というわけで、宣伝させていただきます!

『ストーリー311』、全国の書店やネット書店で販売中です!
(※発売日以降、全国で品切れが相次いでいるようです。
  在庫がない場合は、ご注文していただけますようお願いいたします)
また、電子書籍がAmazonまたはYahoo!ブックスから発売中です。

単行本および電子書籍の印税および著作権料全額と
利益はすべて被災地復興のために寄付されます。
みなさん、ぜひご購入くださいね!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ストーリー311の公式ページへ

 

単行本『ストーリー311』を
1名様にプレゼントいたします。
なんと、イベントに参加された漫画家さんたちの
豪華イラスト付きサイン入りです!



<応募方法>
件名を「ストーリー311」にして、
氏名とともに
下記のメールアドレスまでお送りください。

present@1101.com

※締切は4月1日(月)午前11時までとさせていただきます。
応募は締め切りました。
厳正な抽選の上、当選された方に
ご当選のメールをお送りいたしました。
たくさんのご応募、ありがとうございました!

厳正なる抽選の上、当選者には、
景品送付先の住所をお尋ねする
当選通知メールを差し上げますので、
必ずご自分のメールアドレスでご応募くださいね。

また、ご意見・ご感想などもお待ちしています。
メールアドレスpostman@1101.comまでお送りください。


 
2013-03-24 SUN