明日公開の『ちづる』という映画のこと、紹介させてください。


こんにちは、武井です。
『ちづる』という映画のことを紹介させてください。

『ちづる』は、ドキュメンタリー作品です。
ちょうど「ほぼ日」では今月、
映画『エンディングノート』を応援する
コンテンツ
がありましたが、
『ちづる』もまた、
監督自身の家族をテーマにした作品です。
(セルフ・ドキュメンタリー、というそうです。)

『ちづる』監督の赤武ウ和さんは、
ことし立教大学現代心理学部映像身体学科を
卒業したばかりの23歳。
『ちづる』は卒業制作としてつくられたものです。
つまり、担当教授や、親しい友人たちだけに
観てもらうことを前提につくられた作品。
それが、学内の上映会でたいへんな評判をよび、
立教大学の友人たちが「上映委員会」を結成、
担当教授であり、映画監督であり、
ドキュメンタリー作家でもある
池谷薫(いけやかおる)さんの後押しもあって、
宣伝・配給までのすべてを
池谷さんと学生たちの手で行なう
『ちづる』プロジェクトがうまれました。

● ◇ ● ◇ ●

ぼくがこの映画のことを知ったのは、
フェイスブック経由で届いた
一通のメールがきっかけです。
差出人は「赤赴v美」さん。監督のお母様です。

 以前、ほぼ日指名手配で、
 武井さんを“逮捕”して、
 その後、今から5年ほど前にも、
 一度メールのやりとりをさせていただいたのですが、
 覚えてくださってますか?

と、メールの書き出しに、ありました。
赤赴v美さん。
記憶にありました。
メールに書かれていた「ほぼ日指名手配」というのは
1999〜2000年の企画で、
出かけた先でぼくら乗組員を見つけたら
その場でプレゼントをさしあげます!
という、お出かけ系のコンテンツ。
そのなかで、横浜に出かけたぼくを、
“逮捕”してくださったのが、赤浮ウん一家。
久美さんは「お母さん」でした。
(そのときの写真が、こちらです。)

そして、
「今から5年ほど前にした、
 メールのやりとり」のこと。

 5年前のメールは、夫が交通事故で急死し、
 当時浪人生だった息子が、
 父親の名を検索するうちに
 ほぼ日指名手配の記事を発見して、
 たいそう興奮した・・・という内容のものでした。

そうなんです。
赤赴v美さんから5年前に届いたのは、
そんな内容のメールでした。
「指名手配」以来、赤崎さんたちに
お目にかかることはなかったのですが、
夫の正幸さんが亡くなったこと、
あの元気でちっちゃかった息子さんが
もうそんな年齢になったんだということを知り、
とてもふくざつな気持ちで
メールを返信したように思います。

そして話は『ちづる』へつながります。

 息子は翌年、立教大学の
 映像身体学科というところに進学し、
 卒業制作で自閉症の妹千鶴をテーマにした
 ドキュメンタリー映画を撮りました。
 その映画が、思いがけなく
 この秋、劇場公開されることになりました。

メールは、つづきます。

 武井さんにこのことをお伝えし、
 できれば、映画を観ていただきたいと思ったのは、
 武井さんが偶然にも私たち家族の象徴的な瞬間に
 2回も居合わせてくださったから、
 そして、勝手な思い込みではありますが、
 この映画と、ほぼ日の縁を感じるからなのです。

 子犬を迎えるというイベントが
 映画の中ではかなり大事な部分なのですけど、
 犬を飼おうと思ったきっかけが、
 「Say Hello!」を観たことだったり、
 息子が自閉症を描写するだけのつもりだった映画が、
 亡き夫を含む家族の話になったのは、
 プロデューサーで息子の師でもある
 池谷監督(『延安の娘』・『蟻の兵隊』)が
 偶然ほぼ日指名手配の私たちの写真を見たことも
 影響していること、
 それとたまたまなんですが、
 私がほぼ日Tシャツを着ている場面が
 ちらっとあること(笑)などです。

と。
これは、観に行かねばなりません。
ぼくは山下をさそって、都内の試写室へ出かけました。

● ◇ ● ◇ ●

主人公の“ちづる”(千鶴さん)は、
監督である赤武ウ和さんの妹。
つまりメールをくださった赤赴v美さんの娘です。
知的障がいと自閉症をもつ彼女は、
一人暮らしをしている正和さんとは別に、
久美さんと「二人暮らし」をしています。


映画を撮りはじめるまでは、
その事実に距離をおいて、
妹のことを人に語りたがらなかったという正和さん。
けれども、そんな自分を変えたい、という気持ち、
そして、妹のもつ独特の魅力を伝えたい、という思い、
それが、正和さんにカメラを回させたのだそうです。
そうして彼女と母親を、
1年にわたって追いつづけた記録、
それが映画『ちづる』になりました。

これは“知的障がいと自閉症をもつ妹”の
映画でもありますし、
亡きご主人もふくめた、
あるひとつの家族の物語でもあります。
また、正和さんというひとりの青年の成長を
(まるで、偶然のように)
刻印した映画でもあると思いましたし、
母親であり、ひとりの女性である
久美さんの映画でもあると強く思いました。
ながながと感想をのべるのは控えますけれど、
とてもチャーミングで魅力的な映画でした。
テーマからして、ちょっと敷居が高いと
感じられるかたもいるとは思いますが、
もしこの記事で、すこしでも興味を持って、
足を運んでくださったらうれしいです。

事務所にもどって、もういちど。
2000年の写真を見ました。
そうか、これが久美さん、これが正幸さん、
Tシャツを手にしているのが正和さん、
そして久美さんに抱かれているのが、千鶴さんです。
そうか、ぼくはこの映画の登場人物たち全員に、
会ったことがあるのだと、
とてもふしぎな気持ちになりました。

ところで久美さんが映画のなかで着ていたという
「ほぼ日Tシャツ」がわからなかったので
あとから久美さんに教えていただきました。
映画のけっこうクライマックス、
正和さんとともに、観客のぼくらも
「ええっ! 久美さん!」と
ちょっと驚いちゃうシーンがあるんですが、
そこで着ておられたということです。
話の展開にびっくりしていて、気づかなかったなあ。

映画『ちづる』、
予告編も観られる公式サイトはこちらです。
10月29日(土)から東京「ポレポレ東中野」
神奈川「横浜ニューテアトル」で、
12月3日(土)から大阪「第七藝術劇場」で、
2012年1月21日からは福岡「KBCシネマ」で公開です。
よかったら、お出かけください。

また、お母さんの赤赴v美さんによる書籍
『ちづる 娘と私の「幸せ」な人生』
10月31日に上梓されます。
こちらも、手に取ってみてください。

ちなみに監督の正和さんは現在、
知的障がい者のための福祉施設で
職員として勤務なさっているそうです。

2011-10-28-FRI