第1回おもしろいチームをつくらなきゃ。
糸井 いちおう、今回の対談をやるにあたって、
「つぎの野球」っていう仮題を
いただいているんですけど、
中畑さんはどんなことが思い浮かびますか。
中畑 ああー、「つぎの野球」‥‥。
うーん、まぁ、これからつくっていく野球は
あるかもしれないけど、
野球の原点は変わりようがないと思うんです。
糸井 ぼくも、そう思います。
中畑 戦術、戦略なんかも含めて、
もう出がらしに近いところまで
来てるともいえる。
だから、原点は変わらないにしても、
「つぎの野球」として、あるとしたら、
たのしむための演出をどうするかとか、
さっきから話している
「勝つことだけがすべてなのか」ということ。
そのあたりに踏み込む時代に
入ってきてもいいんじゃないですかね。
糸井 うん、うん。
中畑 自分についていえば、
ぼくの監督人生、そんなに長いはずないんで、
ほかにはないオリジナリティが出せればいいなと。
「俺みたいな監督がいてもいいんじゃない?」
っていうね。
糸井 たしかに、野球全体が新しくなるというよりは、
個々のオリジナリティが求められるように
なるのかもしれませんね。
日本のプロ野球の仕組みとしては
メジャーリーグのサービスを
だいたいコピーし終わった感がありますし。
それがうまく吸収できているかどうかは別として。
中畑 サービスからルールから、
みんなアメリカからもってきちゃってますよね。
それは正しいことなのかなって、
ぼくはずっと思ってるんだけど。
糸井 ああ。
中畑 もう、日本の国技みたいなもんじゃないですか、
野球って。
糸井 国技じゃないけどね(笑)。
中畑 でも、国民的なスポーツですよ。
だから、なんというか、
その誇りをきちんと持って、
「日本の野球」をつくっていけば
いいんじゃないかって思う。
アメリカをマネするばっかりじゃなくてね。
糸井 うん、そうですね。
中畑 せっかく、WBC
(※ワールドベースボールクラシック
 4年に1度開催される野球の世界一決定戦)

というものができて、
世界と争うこともできるんだから、
「日本の野球」をもっとしっかり確立して、
そのうえで勝てば、おもしろいじゃないですか。
「足をつかった緻密な野球」
っていうのもわかるけど、
もっとぜんぜん違う個性があると、
観てる人もおもしろいと思うんですよね。
糸井 つまり、ファンサービスとか、
そういうことではなくて、野球そのものの個性。
中畑 ファンサービスは当たり前のことだからね。
そうじゃなくて、野球そのもので
どれだけよろこんでもらえるのか。
よろこんでもらったうえで、
どうやったら勝てる野球ができるのか。
ひとりひとりの選手は
答えを出しはじめてますよ。
今年のダルビッシュの活躍なんて、
おもしろかったでしょう?
糸井 そうですね。
中畑 だから、たとえばぼくは、
ひとつのチームとして、
メジャーリーグの中に
単独で日本のチームができても
いいと思ってるんだ。
糸井 ああー。
中畑 メジャーのなかに、
アジアチームがあったりね。
そのくらいになっていくべきじゃないかと
思ってるんですよ。
糸井 それは、「変える」っていうことを、
本気で考えて自分の仕事にする人がいないと
変わんないですよ。
中畑 そうですね。
ただの野心じゃなくて、仕事としてね。
だから、4年に一度、WBCに参加するだけじゃ
やっぱりおもしろくない。
メジャーリーグの組織のなかに
どっぷり入って1年間戦えば‥‥。
糸井 中畑さん、
コミッショナーを狙ってませんか。
中畑 だははははは!
そういう話題もマスコミから
ちらっと出たんだよな!
糸井 うれしそう(笑)。
一同 (笑)
糸井 要するに、中畑さんの目指す野球は、
「もっとおもしろくしようよ!」
ってことですよね。
中畑 そうそうそう。
糸井 でも。「おもしろい」っていうのは、
いいことばですよね。
「おもしろいねぇ」とか言われると、
なんかちょっと軽いというか、
相手を低く見てるみたいだけど。
中畑 いやいや、「おもしろい」はいいですよ。
「おもしろいね」って言われたら、
ぼく、うれしいですもん。
糸井 最高ですよね。
中畑 最高ですよ。
「おい、今年のベイスターズの野球、
 おもしれぇぞ」って言って、
どんどん輪が広がっていったら、
こんなにうれしいことないですよ。
糸井 ねぇ。
中畑 そんなふうに言われるチームを
つくっていきたいですね。
「おもしろい」は最高の賛辞ですよ、
ぼくにとって。
(つづきます)
2013-12-26-THU