トゥルーマンショーは、
秋に来る。

映画のおすすめメールが突然「受信箱」にあった。
おおっ、昔いっしょに仕事したことのある
「テレビマンユニオン」の日比野さんじゃないか。
なになに、どうしてもみせたい映画があったんだって?
ぼくは、いま、試写会に行ってる時間がないんだよ。
ほんとに。
それに、それほど強くすすめたい映画なら、
「ほぼ日」のお客さんたちにぜひ教えてくれたまへ。
頼む、よろしく。
ってことで、かなり強引に依頼した、
この秋に封切される映画の話です。
熱いよ、これは。観たくなったもん。

凄まじい映画を観て、試写会へお誘いをしたら、
糸井さんの<商売敵?>の 映画だった!の巻

*あるテレビ屋が観た
<ハイパーテレビジョン的映画>
の、感想と推薦

パラマウント映画『トゥルーマン・ショー』
監督:ピーター・ウィアー
脚本:アンドリュー・ニコル
出演:ジム・キャリー/エド・ハリス
配給:UIP

この映画、まだご存じの方は
そういらっしゃらないと思います。
なんせ、アメリカでも6月5日に公開されたばかりで、
日本ではようやく今秋の公開が決ったばかりなんで。

いやー、凄い!腰、抜かした。
試写会が終わって20分くらい、興奮状態で、
誰とも口をききたくない。
ところが、しばらくすると、止めどなく、
この映画について喋りたくなってきた・・・。

普段、滅多に他人には映画を勧めない。
だって、趣味嗜好は人それぞれだし、
熱を込めて推薦しても「ちょっとね・・。」
なんて言われた日にや、がっかりしちまうし。

でも、はっきり言って、
この映画をつまらないという人は、
駄目です。
少なくとも、テレビや広告・・
<メディア>にちっとでも関わり合いをもつ人は、
必見!制作側も、出演者側も、
もちろん、受け手(Viewer)も。
(この三層構造が、映画の中身にリンクしているぞ)

でもって、ご無沙汰していた糸井さんに、
いの一番にお薦めしたら、
なんと<商売敵?>の「GODZILLA」の
PRのお仕事をされていて、
「へっへっへ!その映画、観たい。
その前に、投稿しろ」という指令が下った次第。
なぜ、<商売敵>かって言うと、
全米公開されるやいなや、
観客動員数でアッという間に
「GODZILLA」を抜いて
トップに躍り出た映画なんです、
この「トゥルーマン・ショー」は。

どんな映画かって、うーん、とても、
ムツカシイ、説明が。
ストーリーをあまり話すとまずいんで、
パラマウント映画のPR文を引用します。

(以下、引用)
 全世界220カ国に向け、週7日、24時間ノンストップ生中継。
視聴者17億人。放送回数はすでに10,000回を超えた。
“トゥルーマン・ ショー”は、そんな世紀の連続テレビ番組だった。
そして、今、まさに番組の山場を迎え、
視聴者は固唾を呑んで見守っていた。
その瞬間、視聴率は史上最高の数字を記録しようとしていた。
現代映画史に、突如、凄いやつが現れた!かってない奇抜な発想と、
100%オリジナ ルなストーリーで、
映画『トゥルーマン・ショー』は世界の観客に挑む。
新鮮さも感動も、あの「フォレストガンプ」を凌ぐ話題作。
ブラックなユーモア、それでいて愉 しく、
活気に溢れる『トゥルーマン・ショー』は、21世紀に近づくにつれ、
普通の 人たちが抱く希望と不安を反映している。
そして、この映画は、どんなシリアス・ド ラマよりも、奥深い。
何故なら、そこには、人生は誰のものかという、
人類にとっての永遠の命題が秘められているから。
人生がもし、自分のものでなかったら。
人生の 何もかもが、誰かに与えられたものだとしたら?・・・・・・
 トゥルーマン・バーバンクは、平凡なサラリーマン。
ただ、普通に生きてきただけ だ。与えられた世界の中で。
そして、ある時、一つの“?”が、トゥルーマンの脳裏 をよぎった。
自分は誰かに観られている・・・・・・。

(ここまで、引用でした)

というわけですが、これじゃ、
なんだか分からないよねえ。
ちなみに、アメリカの批評
(ニューズウイーク・タイム・・ETC)は
絶賛の嵐でした。
「10年に一度しか巡り会えない
洗練された素晴らしい作品」
「新しいジャンルの誕生だ!」
「人を笑わせるジム・キャリーは知っているが、
人を考えさせるジム・キャリーは初めてだ!」
「オリジナリティに満ちた感動的で知的な作品!」

だいたい、どんな映画の宣伝文句にも
こういう言葉が並んでるから、
ほとんど眉唾もんなんだけど、
この映画に関しては、掛け値なし!まんま!

絶賛の中に、CNNのホスト、ラリー・キングが、
「21世紀まで語り継がれる映画史に残る名作!」
「未来の芸術形態を変える!」
っていってるんだけど、
このCNNの<MRテレビジョン>が
コメントしているってとこが、
この映画ならではの、ミソなんですね。

あの、話は変わるんですけど、テレビって、
不思議なメディアですよね。
<ホント>と<嘘>の境目が、微妙で。
ドキュメンタリーと言ったって
演出はあるし、ドラマって言っても、
その役者さんなりの<素>の部分が
うっすらと二重写しになってみられたり。
あるいは、湾岸戦争が良い例だったけど、
どんなホントっぽい出来事を中継していても、
どっか、作り物っぽいと言うか、
ショー的に見えたりする。
ワタクシ、テレビはその本質論として基本的に、
全て<やらせ>があると断言してはばからないのです。
だって、カメラを向けた瞬間に、
場合によっては、カメラを意識して、
<やらせ>ならぬ自ら
<やり>をしたりするもの。演技。
普通の生活にだって、「演技」は切り離せないよね。
何がホントで何が嘘か?嘘の中のホント。
ホントの中の嘘。

また話が飛ぶようですが、テレビって、凄いよね。
どんな悲しい出来事もハッピーな出来事も、
観る側からすると、
ボタン一つでパッパッって選択できて、言ってしまえば、
いろんな人の人生模様を、ザッピングで覗けて、
そのくせ自分は安全圏にいるから、
あれは、言ってしまえば、
下界の人々の人生を高みから見下ろしている
「神様」のスタンスにいる訳ね。

人類がテレビジョンというものを手にして、
たかだか50年くらい。
まだ、テレビの影響とか、テレビジョン
(ハイパーメディア)の先行きの姿とか、
これまで、ちゃんと題材にしてきたものって、
実はあんまり無いんだな、これが。
そいつを映画でやられてしまった!うーん、
テレビ屋としては、ショックだ。

いやあ、たまげた。
10年ほど前、吉本隆明という人が
「ハイイメージ論」という本の中で「天空からの視点」
ということを言っていたのを
思い出したりもした。
とにかく、
是非もんの映画です。
「トゥルーマン・ショー」は。
びた一文、宣伝費も貰ってないし、
自分の今の仕事には直接の結びつきは
ナーンモ無いけど、
みんな、観て観て!

ロードショーは秋からだけど、
どーしてもっていう人は、
配給会社に相談してみたらどーでしょーか。
全てのオーダーに対応していただけないとは思うけど、
連絡先は以下の通り。

UIP映画宣伝部   橋本礼子さん
中央区銀座5−14−1 銀座クイントビル6F
FAX:3248−6274

1998-07-04-SAT


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