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おもしろ魂。
三宅恵介さん土屋敏男さんと、テレビを語る。

7. 芸人とスタッフのぶつかりあい。


三宅さんや土屋さんが、
バラエティ番組の制作をする上で、かなり長い間、
才能に惚れこみ、更にその力を間近で感じたのが、
『ひょうきん族』
『元気が出るテレビ』
などの仕事で会ったビートたけしさんだそうです。
たけしさんを、どう見つめてきたか、のお話です。

三宅恵介さんプロフィール
土屋敏男さんプロフィール

糸井 タモリさんの次は、
ビッグ3ということで、たけしさんですね。

たけしさんのことを、おふたりは、
どんなふうに見ていらっしゃいますか?
土屋 かつて、たけしさんとは
『元気が出るテレビ』
とかで接触があったのですが、
たけしさんとは、もう一度、
本気で一緒にテレビを作ってみたい、
という夢があるんです。

いまも、たけしさんは、
いわゆる司会をなさっていたりするけれど、
失礼ですが、どうもテレビに対して
本気ではないという気がするんですよね。

映画に力を注がれて、そちらに
気持ちがすごく行ってしまっていて……
本当に失礼な言いかたかもしれなませんが、
ぼくは正直、そんなふうに感じていて、
そのことを「さびしい」とも思っています。

かつての『元気が出るテレビ』では、
テリー伊藤さんがメインのディレクターで、
もともと、
ぼくはその下でやっていたわけですから、

「今度はメインのスタッフとして、
 たけしさんと、ちゃんと番組を作りたい」
という気がしているんです。

『元気が出るテレビ』では、
ぼくらのように伊藤さんの下でやっている
ディレクターにとっては、
ロケしたVTRが勝負になるわけです。

高田純次さんと一緒に行って
撮ってきたものをスタジオ収録に出して、
そこでたけしさんが笑ったら
「よっしゃ!」とガッツポーズ……
そういうかたちでした。

だから、たけしさんを笑わせることを
目標に、ずっとやっていましたね。

VTRがおもしろいと、
たけしさんはそのあとのトークも
ガンガンにおもしろくしてくれるわけです。

スタジオのトークは、それはもう、
とんでもなくおもしろかったですよね。

最終的に、
一時間のパッケージにしたときに、
VTRを使うか、たけしさんのトークを
使うのかというところで
「どうする?」
と迷って作ってきたところがありますから。

つまらないVTRを見せると、
たけしさんは、終わった瞬間に
「これカットだな」と言われるから、
もうほんとにやる気がないわけで……。

たけしさんを笑わすためだけに
ロケに行っていたところがありました。
糸井 たけしさんは、
作り手という立場では、
参加していなかったんですか?
土屋 いえ、
『元気が出るテレビ』の冒頭の
「たけしメモ」というのを
必ずやっていました。

「こんな人はお嬢様じゃない」
とか、ああいうところは、
たけしさんが考えてくださるので……。
糸井 あれ、おもしろかったですよねぇ。
土屋 あの手のことを、
たけしさんは、いま、
やっていらっしゃいませんよね。

タレントにとっては、
同世代のテレビを作る人間たちが、
好敵手だったりすると思うんです。


ライバルは
『ひょうきん族』の三宅さんであったり、
『元気が出るテレビ』の
テリー伊藤さんであったりするわけです。

タレントの側にも、明らかに
「あいつをおもしろがらせてやろう」
という気持ちはあるはずでして……。

だから、
「伊藤(テリー)の野郎!」
と思いながらも、たけしさんは
「たけしメモを作るときは、
 ヘタなことはできねえぞ」
と考えてやっていたのでしょうし。

だけど、どこかの時期に、
やっぱり作り手の世代が変わってしまう。

そうなると、どこかで
たけしさんのことが怖くなって、
そこそこのネタでも
「けっこうでございます」
なんて言っていると、
本気でおもしろいことを書く気が
しなくなっちゃうでしょうから。
三宅 それは、ありますね。

ディレクターが
プロデューサーになるとか部長になるとか、
そういうことも、
テレビ局側の都合だけじゃないですか。

「いままで一緒にやっていたやつが、
 いなくなっちゃうんだ?」

出る側も、そういうことは、
思わないことはないでしょう。

ぼくが、さんまさんと
ずっと一緒にやらせていただいているのは、
そういう気持ちもありまして……
「さんまさんとは、
 ディレクターとして一緒に現場にいたい」
と思っているからでもあるんです。


たけしさんは、テレビでは、
もうおもしろがれないなと
思っちゃったのかもしれないとは感じるんです。

だからやっぱり、
二〜三年ぶりに、
ゆっくりとお会いしてみて、飲みながら
「最近のテレビはどうですか?」
というような話は、してみたいなぁと思います。

そういうところから、
おたがいにおもしろがれることを見つけて、
もう一度なにかをできればいいかなぁ、と……。
土屋 お笑いって、
芸人さんとテレビのスタッフの
ぶつかりあいでもありますから、
「こいつの言うことは、やっぱり気になる」
とか、
「こいつをおもしろがらせなければ、
 しょうがない」
とか、そういうことがあって、
おもしろいテレビになるわけですよね。

下の世代が、
レベルとして下がっていないとしても、
コワがってしまったりとか、
未熟な若い頃のことを
知られていたりとかいうことで、
やっぱり、言いづらくなるということは
あると思うんです。

だけどほんとは、
「たけしさんの言うことだから」
とか、
「さんまさんの言うことだから」
とかいうふうに、
お言葉をありがたくちょうだいする、
みたいなことになればなるほど、
きっと、芸人さん側としては、
やっていて、どんどん
つまらなくなっちゃうだろうなぁ、

と思うんです。
  (次回に、つづきます)


今日のひとこと:

「タレントにとっては、
 同世代のテレビを作る人間たちが、
 好敵手だったりすると思うんです。
 ライバルは
 『ひょうきん族』の三宅さんであったり、
 『元気が出るテレビ』の
 テリー伊藤さんであったりするわけです。
 タレントの側にも、明らかに
 『あいつをおもしろがらせてやろう』
 という気持ちはあるはずでして……。

 だけど、どこかの時期に、
 やっぱり作り手の世代が変わってしまう。
 そうなると、どこかでが怖がってしまい、
 そこそこのネタでも
 『けっこうでございます』なんて言うと、
 本気でおもしろいことをやる気が
 しなくなっちゃうでしょう。
 お笑いって、
 芸人さんとテレビのスタッフの
 ぶつかりあいでもありますから、
 こいつの言うことは、やっぱり気になるとか、
 こいつをおもしろがらせなければ、
 しょうがないとか、そういうことがあって、
 おもしろいテレビになるわけですよね。
 お言葉をありがたくちょうだいする、
 みたいなことになればなるほど、きっと、
 芸人さん側としては、やっていて、
 どんどんつまらなくなっちゃうだろうなぁ、
 と思うんです」
               (土屋敏男)

※このコーナーへの感想をはじめ、
 テレビや、企画づくりについて思うことなどは、
 postman@1101.com
 ぜひ、こちらまで、件名を「テレビ」として
 お送りくださると、さいわいです。
 どのメールも、すべてじっくり拝読しますし、
 つい、おおぜいと分けあいたくなるような
 メールの感想などは、「おもしろ魂」連載中に
 ここで、ご紹介させていただくかもしれません。


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2004-09-09-THU

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