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おもしろ魂。
三宅恵介さん土屋敏男さんと、テレビを語る。

8. 息が合うかどうか、ということ。


「出演者と制作者は、
 おたがいの全力でぶつかりあってこそ
 おもしろい番組を作りだせるもので、
 『お言葉をありがたくちょうだいする』
 みたいなことになればなるほど、
 芸人さん側としては、つまらない番組になる」

前回に語られた、この言葉につづいて、
たけしさんと、番組を作るとしたらこうしたい、
と、2人ともが、真剣に、
やはり尊敬をこめて、語っています。
今日も、ここでしか聞けない話、ばかりですよ。

三宅恵介さんプロフィール
土屋敏男さんプロフィール

糸井 三宅さんは、
『ひょうきん族』や
『世紀のゴルフマッチ』以外では、
たけしさんと、
どういう番組をやられましたか?
三宅 『タケちゃんの思わず笑ってしまいました』
という年二回の番組があったんですけど
(一九八三年〜一九八六年)
あれはほんとに、
今でも、大爆笑できる番組だと思います。

あとは、さんまさんと一緒の
『有名人の集まる店』という……。
糸井 あれも、
とんでもなくおもしろい、
ものすごい番組でしたねぇ。
三宅 おもしろかったです。
たけしさんがほんとに酔っぱらって、
財前直見さんを
口説きにかかってしまったり……。

なんとか、さんまさんのことを
引きずり落とそうという、
たけしさんのキャラクターが、
おもしろかったんです。

「『HANA-BI』で
 賞を取ったからって、なんでんの?」
「うるせぇな、この野郎!」

あの番組は、さんまさんとのバトルですから、
やっぱり、収録が、かなりかかるんです。

だいたい、ひとりのゲストに
一時間半ぐらいかけて、
二日にわけて、七〜八人のかたを
招くんですけど……たけしさんが、
あるときに「疲れちゃうんだ」と
おっしゃったことがあったんです。

「じゃあ、生にしましょうか?
 生だったら、ぜんぶで二時間ですから」

それでもう一回やることになって、
生の時間が取れなかったので、
生っぽい収録にしたんですけど、
そこで
「アイツ(さんまさん)は、もういいよ。
 もう、アイツのしゃべりには勝てない(笑)」
と、いい意味で、
さんまさんのことを認めたときがあったんです。

それでは、
「鬼瓦権造」のキャラクターの
この番組は、もう成立しないなぁ、
ということになりまして……
それが、四〜五年前になるんですかね。

「振り子のように、映画とテレビと、
 両方やっていないと飽きてしまう」
と、かつてしきりにおっしゃっていたので、
たけしさんは、どこかで
映画に飽きるときが来るのかもしれません。

そうだとしたら、また、
たけしさんだからできるおもしろいことが、
テレビでやれると思うんです。

「ぼくらがつきあっているのは、
 映画のたけしさんじゃなくて、
 笑いのたけしさんなんです。
 浅草の芸人で、コメディアンで……
 というところでつきあってきたんだから」

そういう方向には、
一度、ちゃんと向かいたいとは考えています。
だからいまの状態は、
たけしさんにとって、
ほんとにやりたいことをやるための
前フリだ、と言うか……。
糸井 三宅さんは、
やっぱりしつこいですね。
大したもんだなぁ。

「たけしさんがやると
 他の人がやるよりおもしろいもの」
って、たとえば、どういうところですか?
三宅 たけしさんは
「ホステス講座」とか「料理教室」とか、
解説や評論のポジションに置くと、
いちばん力を発揮すると思います。
企画だとか考えかたが、特にすごいですから。
土屋 いまでもやっぱり、
さんまさんとたけしさんのユニットは、
とんでもなくおもしろいと思うんですよね。

とんでもなくおもしろいことは
まちがいないし、さんまさんは、
たぶんやってくれるだろうと予想しています。

ただ、たけしさんが
「いや、もういいよ、疲れるから」
と言ってしまうところが、
なんと言いますか……

「テレビというフレームのなかで、
 オレ、そこまでやる義理もないし」

というふうに感じるんです。
三宅 そこは、
おっしゃるとおりだと思います。
土屋 そこは、やっぱり、すごいさびしい。

そういうふうに思われるように
さしむけたテレビというのが、残念なんです。

振り子のテレビ側が、
制作者の年が若くなってきたり、
話が通じていなかったりということで、
どうも、たけしさんからすると
「もう、あっちには振らないでいいよ」
というふうに思われてしまったとしたら、
ほんとうに残念なんです。
三宅 その気持ちは、すごくよくわかります。

前にテレ朝で、七時ぐらいから、
志村けんさんとふたりで
コント番組をやったんですよね……
あれで、たけしさんは、テレビにおける笑いを、
あきらめちゃったかなぁと思うんです。
土屋 やりました、やりました、
『タケシムケン』……あれはもう
「あのふたりを使って、そんなぁ!」
という感じでした。
三宅 あれで、
「もうテレビで、
 自分の目指してる笑いは伝わらないなぁ」
と判断したのではないでしょうか。

制作側が、
焦って作りすぎたのかもしれません。
もう半年あとに、
練ってからやればいいのにと思いました……。
見ていて、やっぱり作り手が
追いついてない感じがしたので。

組むときには、制作側も
「たけしさんのスタッフで行くのか、
 志村さんのスタッフで行くのか」
というところは、
とてもむずかしいところなんですよね。

それがうまくいかないと、俗に言う
「ショートしちゃう」
という話になってきます。

1+1を、3にするつもりが、
2にもならなくなるときもあるんですよね。
土屋 テレビマンが、
きちんと向かっていったら、
おもしろい番組が、じゅうぶんにできる
可能性があると思うんです。

ほんとに夢なんですけど
「こういう企画で、こうやりたいんです」
と、たけしさんに話したあとに、
「おもしろそうだな。やろうか」
と言われたいと言いますか……。

逆に言うと、
「たけしさん、何をやりましょうか?」
と御用聞きのようになっちゃうのが、
いちばんよくないと思うんです。

志村さんとやった番組って、
そうだったんじゃないかって想像するんです。

これは他局の悪口になってしまうから、
ほんとはあまり言いたくないんだけど、
たとえば、松本人志にしても、
かつて、テレ朝で、
土曜の七時の番組をやっていたんですよね。

だけど……やっぱり要するに
「なんでスタッフはこんなにわからんのだ?」
というふうになってしまったようだし、
もちろん視聴率もメタメタになっていました。

そうなると、出る側としては
「もう、知らんスタッフとはやりたくない」
というふうになっちゃうんです。
それぐらい、息が合うかどうかって重要で。
糸井 なるほどなぁ。
  (次回に、つづきます)


今日のひとこと:

「おもしろくない番組を作ると、
 もうテレビで自分の目指してる笑いは
 伝わらないなぁと、芸人さんは、
 判断してしまうのではないでしょうか。
 『タケシムケン』という番組は、
 焦って作りすぎたのかもしれません。
 見ていて、やっぱり作り手が
 追いついてない感じがしたので。
 組むときには、制作側も
 『たけしさんのスタッフで行くのか、
  志村さんのスタッフで行くのか』
 というところは、
 とてもむずかしいところなんですよね。
 それがうまくいかないと、俗に言う
 ショートしちゃうという話になってきます。
 1+1を、3にするつもりが、
 2にもならなくなるときもあるんですよね」
               (三宅恵介)

※このコーナーへの感想をはじめ、
 テレビや、企画づくりについて思うことなどは、
 postman@1101.com
 ぜひ、こちらまで、件名を「テレビ」として
 お送りくださると、さいわいです。
 どのメールも、すべてじっくり拝読しますし、
 つい、おおぜいと分けあいたくなるような
 メールの感想などは、「おもしろ魂」連載中に
 ここで、ご紹介させていただくかもしれません。


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2004-09-10-FRI

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