三國万里子の  編みものの世界。

展覧会の朝
みちこ では、なんちゃん。
なんこ はい、みっちゃん。
みちこ いよいよ本編です。
なんこ 本編!
みちこ 三國さんの作品が展示された、
「長津姉妹店」の様子をレポートしますね。
なんこ たのしみー。
みちこ それでは、
時計の針をぐぐーっと戻しましょう‥‥。
それは去年の12月11日、土曜日のことでした。
なんこ 「長津姉妹店」の、初日?
みちこ そう、初日。
このDMを手にギャラリーへ向かいました。

なんこ あ〜、DMだけでわくわく〜!
みちこ 場所は吉祥寺のギャラリーフェブ
なんこ 近ごろなにかとご縁のあるギャラリーですよね。
「ほぼ日ハラマキ展」でもお世話になりました。
みちこ オープンはお昼の12時からだけど、
この日は朝の10時に到着。

なんこ いいお天気。
‥‥でも、なぜオープンの2時間も前に?
みちこ あのね、「長津姉妹店」の初日には、
行列ができるって聞いていたから。
なんこ あー、そうかー。
そのうわさは、わたしも聞いていたけど‥‥
ほんとにそんな、列とかできるの?
みちこ わたしが到着したときには‥‥。

なんこ うん。
みちこ 午前の太陽をあびるギャラリーの前に‥‥。

なんこ うん、うん。
みちこ すでに‥‥。

なんこ わ。
みちこ こんな‥‥。

なんこ わわ。
みちこ こーーんな列ができていました。

なんこ うわー、すごーい!
やっぱり、人気者なんだねぇ。
みちこ 先頭にいらしたこちらのかたは、
かなり早朝から並んでいらしたそうです。

なんこ なんだか、たのしそう。

みちこ うん。
この日を1年間、
たのしみにしていたみなさんだから。
なんこ そっかー、そうだよねぇ、うれしいよねぇ。
三國さんの編みものと
妹さんのお菓子に、やっと会える日。
みちこ しばらくしたら、
ギャラリーのかたから
整理券の配布がはじまりました。
なんこ そうか、整理券。
そとで2時間並ぶのはたいへんだからね。
みちこ 熱心なファンのみなさん、
整理券をぶじゲットですー。



なんこ いいなぁ〜、行きたかったよ〜。
みちこ ちょっと整理券をみせてもらいました。
なんこ 12時から12時20分‥‥。
これって、20分だけってこと?
みちこ そう、初日の入場時間はひとり20分。
すこしずつたくさんのひとに
入場してもらうために。
なんこ なるほどー。
みちこ じゃあ、なんちゃん。
なんこ はい、みっちゃん。
みちこ 整理券も配り終わったので、
ギャラリーに入ってみましょう。
なんこ いよいよー、ドキドキー。

みちこ お客様をむかえる前の、
いまはまだ静かなギャラリーにたたずむ、
こちらが三國万里子さんです。

なんこ 三國さん、緊張してる?
みちこ ううん、そういう感じじゃなかった。
なんていうんだろう‥‥
やるべきことをきちっとやり終えて、
堂々とオープンを待っている感じ。
なんこ そっかー、
やっぱりかっこいいなあ。
みちこ 「長津姉妹店」なので、
もちろん妹のなかしましほさんも一緒です。

なんこ 三國さんとなかしまさんという姉妹が、
「旧姓で催しものを」っていうのが、すてき。
みちこ なかしまさんのお菓子、
フードムードの箱がかわいいの!

なんこ 絵文字でfoodmoodって描いてある!
みちこ ねーーー。
なんこ このお菓子、おいしいんだよー。
みちこ そして、ご覧ください。
三國さんのうしろに、
さりげなくいらっしゃる女性‥‥。

なんこ このかたは‥‥?
みちこ おふたりのお母さんです。
なんこ えーーーー!
みちこ お母さん、フロム・新潟です。
なんこ 姉妹店の初日に、
お母さんがいるって、すばらしいと思う!
みちこ お母さんにすこしお話をうかがいました。
なんこ みっちゃん、えらい。
みちこ お母さんと、そしておばあちゃんが
編みものをしてるのをみて、
三國さんも編むことを始めたのだそうです。
なんこ へえーー。
みちこ 「それがまさかお仕事になるとは」
とお母さんはうれしそうにおっしゃってました。
「いまでは、わたしが着るものは、
 ほとんどあの子が編んだものです。
 わたしは歩く広告塔なんです(笑)」って。
なんこ いいなぁ、お母さん。
お母さん!
このすてきな姉妹をうんでくださって、
ありがとうございます!
みちこ 12時の会場まで時間があったので、
ギャラリーにいらした方々に
三國万里子さんのことをうかがいました。
三國さんに聞こえないよう、こっそりと。
なんこ みっちゃん、えらい。

三國万里子さんの妹・なかしましほさん

「保育園のころ、歯医者さんの待合室で
 編みものをしていた姉の姿を記憶しています。
 ですから4歳のときにはもう、
 姉は編んでいました。
 
 姉にはぜんぜん欲がないというか、
 家族のためだけに編んでいたんです。
 それ以上に編みためたものはぜんぶ、
 衣裳ケースにしまい込んで、押し入れに‥‥。
 山ほど編みためられたものたちを、
 わたし、8年前に見ちゃったんです。
 これ、どうして?
 こんなにかわいいのに、
 なんでしまい込んでるの?
 見せないのはもったいない!
 それが長津姉妹店のきっかけでした。
 わたしがむりやり、
 引っぱり出すようにしてはじめたんです。

 姉と私は、ひとつ違いの年子です。
 ちいさいころは仲が悪くて‥‥。
 きかんぼうなわたしは、
 姉にひどいことをたくさんしました。
 長津姉妹店は、その罪ほろぼしだと、
 わたしほんとうに思っているんです。
 ‥‥姉はなにをやっても、
 わたしよりできる人です。
 たくさんの人に、姉のことを知ってほしい。
 ずっとそう思ってきたし、
 これからもその気持ちは変わりません。
 三國万里子をよろしくお願いします」


ギャラリーフェブの引田かおりさん

「こまかい作業をする作家さんは、
 わりと内側に向かっていくタイプが多いんです。
 もちろんそういう作家さんには
 それだからこその魅力はあるんですけど、
 三國さんは真逆のタイプだと思います。
 彼女は、自分のそとがわの
 なにか大きなものとつながりながら
 作品をうみだしているような印象を受けます。
 "自分の世界を荒らさないで"ではなく、
 "つくりました、つかってください"って‥‥
 そう、開いているんです、いつも。
 はじめてお会いしたときから、ずっとそう。
 おおらかに、こころを開いて、
 かわいい作品をつくり出していくところが、
 彼女のいちばんの魅力ではないでしょうか」


ギャラリーフェブの引田ターセンさん

「ひとことで言うと、天使系です。
 この姉妹はふたりとも天使タイプ。
 説明がむずかしい魅力があるんです。
 三國さんの場合は、
 自分の作品を手もとにほとんど残さない
 っていうのが、まずすごいよね。
 使ってもらいたいっていう、
 素直な気持ちに満ちた作品なんです。
 で、気軽に使おうと思って
 編みものをよーくみると、
 素人じゃとても追いつけない技術と
 デザインセンスがギュッとつまっている。
 こういう"作家もの"の良さを
 理解する人が増えてきたのは
 すごくいいことだと思っています。
 天使系の展示に行列ができる。
 すばらしいことじゃないですか」

※ギャラリーフェブの引田さんご夫妻には、
 こちらのページでもご協力いただいています。ぜひ!



みちこ みなさんのお話をうかがっているうちに、
オープンの時間が近づいてきました。
なんこ 整理券を持ったみなさんが‥‥。

みちこ いよいよぼちぼち、会場です。
なんこ 三國さん、やっぱり緊張してない?

みちこ どうなんだろう?
たのしそうだけど‥‥
緊張してたのはわたしかも(笑)。
なんこ そうだよね、この場は緊張感あるよねー。
みちこ さあ、お客様がいらっしゃいました。

なんこ わあ‥‥。

なんこ なんか‥‥すごくいい風景‥‥。

みちこ すごく、いい時間だった。
静かなんだけど、みんなとってもうれしそうで、
そのうれしさが、じわーっと伝わってくるの。

なんこ そっかー‥‥。
みちこ あるお客さんがね、
ミトンを手にしたんだけど、
手が、震えてたんだよ。

なんこ ‥‥うれしかったんだ。
みちこ 編みものという作品で、
手が震えるほど
だれかをうれしくさせるなんて、
ほんとうにすごいことだと思って‥‥。
なんこ うん。
みちこ 1年間こつこつ編んだ作家さんがいて、
その作品をうれしく手にする人がいて。
‥‥なんだか泣きそうになった。
なんこ うん。
すごいよね、ものをつくる人って。
みちこ 泣きそうになっちゃうし、
お客さんの邪魔だし、
初日はこれでおいとましました。
なんこ あれ? そうなの?
じゃあ作品紹介は??
みちこ ご心配なく。
展示作品については
この前日、搬入のあとで
くわしくうかがってきました。
なんこ お、やるね、みちこ。
みちこ それを来週月曜日から、ご紹介いたしまーす。

          オープン前日の三國さん。

(作品紹介へ、つづきます)

2011-03-17-THU

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(c)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
イラスト/木下綾乃