松本人志まじ頭。

第11回 ひとりでもずっとそんなこと考えますからね

糸井 でもねえ、おもしろくないこと言っている時間が
ものすごく多い。
あ、でもなあ、舞台以外では松本人志もそうだよねえ。
松本 そうですよ。
なんにもおもしろいこと言ってないし。
糸井 そっか。
黙ってるか、まじめなこと言ってるか。
そうね、温泉3日は無理だけれど、
1回ちゃんと訊いてみたいなあ……。
松本 とことんねえ。
糸井 松ちゃんさえよければ、俺はなんとかするから、教えて。
教えてっていうか、学生になってみたいの、そのことで。
大学院の研究テーマに「お笑い」っていうのがあって、
もう教授にもわからない。
で、学生同士で集まって、この微生物について
もっと話し合いたい、みたいな感じで……。
俺、この問題についてはね、
ほかに話せる人がいないんですよ。
これ、おそらく、たけしさんじゃないんですよ。
たけしさん、もう、違うところに行ったから。
松本 そうですね。
糸井 タモリさんはもっとわかってるんですよね。
だけど、タモリさんは
「それはないことにしたほうがいい」
って言う気がするんです。
「そっち行くのはわかってるんだけど俺は違うんだよ。
 趣味として2時間だけ参加させてよ」って言うと思う。
「温泉3日間」って言いたくなる気分の人は、
ほかにいないよね……。
松本 だって僕、ひとりでも
ずっとそんなこと考えますからね。
糸井 僕もねえ、その問題とポルノの問題、
この2本立ては考えなかった日がないんですよ。
つまり“スケベ”のことと“笑い”のこと。
もしかしたら“泣く”こともかなあ……。
泣くっていうのは笑いにつながってるんだけど、
感情が動くということと、スケベなことっていうのは、
考えることを休んだことがないね。
ずぅっと考えてる。
やはり、あなたも。
松本 そうですねえ。
糸井 人には言っちゃったんで、
土産話的に言うのはなんなんだけど、
インターネットを始めてから何がわかったかと言うと、
いちばん面白かったのは、
自分がふつうのスケベだってことがわかったこと。
要するにいろんな映像がいくらでも見られるんですよ。
馬とやってようが、お婆さんのヌードだろうが、
あらゆるものが全部あるのに、自分が集める画像は
結局「誰々さん」だったの。答えが。
「知らなかった、俺はそういうスケベだったんだ」って。
そういう材料があったからわかったんですよ。
足りないときにはわからなかった。
ある程度お金にゆとりができると、
自分の好きなものがわかるじゃないですか。
買えないときは、マスクメロンが好きだって言うんですよ。
でもマスクメロンが実はあんまり好きじゃなかったって、
お金もったらわかるじゃない。
あんなことが、インターネットで、
エロでわかったんですよ。
そういうことがお笑いでも
わかるのかなあと思うんだけれど、
メニューは大衆食堂のメニューしかないから、
「トゥール・ダルジャンで何10年修業して」
みたいなのは、飯を食ったときに、
これが好きだって言いきれないんですよね。
「俺にはつくれない」って言ってもしょうがないわけで。
「なにそれ?」って言いたいのよ。
松本 イトイさん、あれやりましたか?
「お話ゲームどこでもいっしょ」。
糸井 やってない。
けっこうはまっている人多いね。
松本 やっぱりはまりますか。
糸井 うん。
だけど、本当には信じてないんだ、
そのハマりようを。
松本 あれね、いわゆるオモチャなんですよ。
こっちが単語いっぱい覚えさせて、
向こうが勝手に入れていきよるんですね。
その微妙なズレで笑わそうとするんですね。
僕は一瞬面白いんかなあ、と思ったらね、
もう僕の中では、ないんですよ。
でも一般人は、ハマるかもしれないかなあ、
と思いましたね。
糸井 それは松っちゃん僕と構造がいっしょで、
仕組みがわかっちゃったわけでしょう。
松本 そう、仕組みがわかったんですよ。
糸井 僕は作り手だから、仕組みがわかりたくて
やっちゃうんですよ。
するとゲームやる気、なくなるんですよ。
松本 コイツは笑い取りに来てる、ていうのが
バレてしまったんですよね。
故意にコイツ、ワザとやっとるな!
というのが、けっこう早めにピーンと来てもうたんで、
最初は僕ね「ながぶち」とか入れたんですよね。
そしたら
「昨日の夜障子を開けてたら
向こうからながぶちが覗いてた」と言うんですよ。
「コワイよねえ」って言い出したんです。
なるほどなあ、と思ったんです。
「ながぶち」は「歌手」ということで僕は設定したし、
ちゃんとやったのに、
そこで「ながぶち」出してくるってことは、
コイツ完全に、計画的にやっとるな、というのが見えて。
糸井 ネタが見えちゃった。
松本 冷めてしまったんですよね。
でも一般人はそれを面白いと思うんでしょうね。
糸井 うーん、そうねえ……それわかっててもやってる、
暇つぶしな人の人口がけっこうあるかもね。
その人たちに、俺はもっと仕事を与えたいんですよね。
そんなことやってるヒマない、ってやったほうが、
面白くなると思うんですよ。
松本 そうなんですよ。
糸井 それ、おんなじよ、俺も。だから今ゲームしてない。
つくってて、ネタ割れないゲームつくりたいんですよね。
松本 あれね、シモの言葉を入れることありきで
考えてるんですよ。
糸井 ああ、そうかそうか。
松本 だから「おまんこ」とか「オナニー」とか、
そういう言葉を入れたら、
世間的にはそこそこおもろいような
文体になるように仕組まれているんですよ。
「何でも好きな言葉入れたらええで」って、
僕はそんなの入れたくないんですよ。
だから、面白くないんですよ。
糸井 ようするに「うんこちんちん」ものですよね。
うんこちんちんだったらうんこちんちんで、
追及してほしいよね。
松本 してほしいんですよ。
浅いんですよ。
糸井 「うんこちんちん」の魅力も、捨てられないからねえ。
松本 非常に大事なものとしてあるんですけどね。
だからこそもっと奥深く行ってもらわんとね。
「うんこちんちんを、なめんなよ」ってね(笑)。
糸井 そうなのよ。
楽しそうだなあ、その話したいなあ、俺も。

2000-01-10-MON

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