CAKE

 
 
梅雨の最中の夏柑糖


こんな梅雨の最中には、
夏の予感というのか、かすかな期待なのか、
木や、空や、空気の湿り気に、
これからの季節の匂いを細やかに感じる気がします。

夏のお菓子も、
もうすぐ雨が上がって、高く青い空と入道雲が
のぞくことを約束してくれるようで、
もしかしたら、夏が始まってからよりも
涼やかに美味しく感じられる気もしてきます。

頂き物で、「老松」の夏柑糖が届きました。

夏みかんを丸ごとくり抜いて、
果汁そのままの寒天が流し込んである
ひんやりと甘酸っぱい、
喉ごしの滑らかな夏菓子です。
丁寧で綺麗な作りに、
値が張るのも頷かざるを得ない気も。

母方の祖母が健在で、
有難いことに百歳を越えるのですが、
七夕を少し過ぎた頃に、また誕生日を迎えます。
先日、夏柑糖を持って行ったらツルツルと
ほとんどひとつ食べてくれました。

なかなか食も進まなくなる季節、口元に運ぶスプーンから
ツルンとおいしそうに食べてくれるのが嬉しくて、
思わず夏柑糖に感謝しました。
もともと果物好きな祖母ですが、
多分ゼリーのプルンとした感じより、
寒天のツルンと滑らかな食感が格別、
喉に通りやすかったのかもしれません。

木々には恵みの雨が降り注ぐ時期ですが、
こんな湿り気も、これから訪れる日差しの強さも、
どうか祖母のような年代に優しく、
障りなく季節が過ぎていくことを祈りつつ。
良い初夏を。

 

わたなべ まり

 

2010-07-08-THU