CAKE

 
 
旅まくら


大人は地味なお菓子を好むものだな~、と
子供の頃、思っていました。
母が両口屋是清の“旅まくら”がとても好きで、
おいしそうに、
本当においしそうに食べるのを見て。

和菓子全般、
決してけばけばしくなく、出過ぎず行き過ぎず、
もしかしたら侘びや寂びよりも抑え控えた見た目と甘さで
茶托の上に楚々とあるのは、
良いものだなぁと思っていました。
残念ながら味覚や量は育ち盛りには如何ともしがたく、
落雁よりは大福、干菓子よりは断然、饅頭で、
しかも大振りだったり、もちっとしてたりしたら、
すごく得した豊かな気持ちになったものでした。

不惑を越えたのに、最も基本の、というか、
一服の茶とひと口の甘みがあれば自足するような域には
全く達しておらず‥‥
饅頭も出来ればチョコレートがかかってたらナ♪ とか、
ケーキまで行かなくても
カステラあたり無いかナ? とか、
始終、願ってる自分がいます。

だから、旅まくらは憧れで、
ぽつんと一つ、漆とか七宝のきれいな菓子皿に
置かれたのをゆっくりお茶とともに味わいながら
満ち足りることが出来たら、
そんなのを本当の大人っていうんじゃないだろうか‥‥
(菓子の側面から見た場合の“大人”ですけれど)
なんて思ったりする四十路の春です。

このまま終わろうかと思いましたが、
旅まくらと詰合せで入ってた、志なの路やよも山も
やっぱり一度に食べてしまうんですよね、
勢いというか、充足感を求めて。
しかも子供時分から皮の部分が好きなので、
お腹がふくれてくると皮だけむいて
餡は餡好きの母に託すような
とても大人と言えないいただき方をしてることも
白状します。
あと20年くらいしたら、もっとしっとりしたことを
書いていられれば‥‥と願う春先です。

もうすぐ桜が咲きますね。


わたなべ まり

 

2010-03-09-TUE