HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN


		リンダ・グラットン×糸井重里

		寿命100年時代を
		どう生きる?

2年前に糸井と対談をした
ロンドンビジネススクール教授の
リンダ・グラットンさんが、
ふたたび、新刊の出たタイミングで
ほぼ日に来てくださいました。
今回リンダさんが出された本は
来る寿命100年時代を予測し、
その時代を生き抜くヒントを書いた
『LIFE SHIFT』。
本のサブタイトルでもある
「寿命100年時代の人生戦略」を
テーマに話しはじめると、ふたりには
通じあう思いがいろいろとありました。
全3回でご紹介します。

目次

リンダ・グラットンさんプロフィール

リンダ・グラットン
Lynda Gratton


ロンドンビジネススクール教授で、
人材論、組織論の世界的権威。
2年に1度発表される
世界でもっとも権威ある経営思想家ランキング
「Thinkers50」で2003年以降、
毎回ランキング入りを果たしている。
フィナンシャルタイムズ紙
「次の10年でもっとも大きな変化を
生み出しうるビジネス思想家」、
英タイムズ紙
「世界のトップ15ビジネス思想家」などに選出。
邦訳されベストセラーになった
『ワーク・シフト』(2013年ビジネス書対象受賞)や、
『未来企業』などの著作がある。
今回の『ライフ・シフト』は
ロンドン・ビジネススクールの経済学教授、
アンドリュー・スコット氏との共著。

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寿命100年時代に、
人生はどう変わる?

リンダ
おひさしぶりです。調子はいかがですか?
糸井
とてもいいですよ。リンダさんも元気そうですね。
リンダ
わたしもいい調子なんです。
うちの犬の写真、ご覧になります?
糸井
わあ、かわいい。
「ドコノコ」知ってるかな?
うちで作ったアプリなんですけど。
これはうちの犬ね。
リンダ
まあ、すてきですね。
たくさんの犬や猫の写真が見られるんですね。
糸井
そうなんです。イギリスの犬もいますよ。
リンダ
うちの犬もぜひ参加させてほしい。
糸井
もちろんです。
よかったらダウンロードしてみてください。
パンフレットあるかな‥‥どうぞ。
リンダ
ありがとうございます。
糸井
前回お会いしてから2年になりますが、
その間リンダさんは
どんなことをされていたんでしょう?
リンダ
1年前にこの本を書き上げ、
先日日本語版が完成しました。
装丁もいい感じでとても気に入っています。
糸井
半分まで読みましたが、おもしろいです。
リンダ
うれしいです。
あとこの2年間、わたしは本の執筆以外にも
いろいろあったんです。
糸井
はい、どんなことでしょう。
リンダ
じつは先日婚約をしまして、もうすぐ結婚するんです。
糸井
あ、え‥‥結婚!
リンダ
そうなんです。
糸井
わぁ、びっくりした(笑)。
そんなことがあったんだ。
リンダ
ふふ、そうなんです。
あとはこの本の内容について
たくさんのかたと話したりしていました。
糸井
それは大きな2年間でしたね。
まぁ、100年生きる時代だと考えると、
人生に大きなイベントは何度もありますよね。
リンダ
そうなんです。
寿命100年時代は、仕事にもプライベートにも、
これまで以上に可能性があるんです。
糸井
すでに本の話に入ってるとも思うんですが、
本を読んでない読者のかたのために、
あらためて本の内容を教えていただけますか?
リンダ
今回の『ライフ・シフト』という本は、
「これからの寿命100年時代に
どんな変化が起こり、どんな人生戦略をとるべきか」を
書いたものなんです。
たとえば100歳まで生きる場合、
65歳に引退して、それまでに蓄えた資産で
残りの人生を暮らすのは現実的じゃないんですね。
糸井
そうでしょうね。
リンダ
また人生が長くなると、健康や人間関係についても
考えなければなりません。
ですから1945年生まれ、1971年生まれ、
1998年生まれの人物を想定し、
「それぞれこんな可能性がありそうですよね」と
例を出しながら、読者の皆さんの
人生設計のヒントにしてもらえるような
内容になっています。
糸井
大きく言うと、人々の人生はどう変わるのでしょうか。
リンダ
大事なキーワードが2つあるんです。
ひとつが「人生のマルチステージ化」。
もうひとつが「無形資産」。
糸井
それぞれ教えてください。
リンダ
まず「人生のマルチステージ化」は、
いままでのような
「学ぶ時期/会社勤めの時期/引退後」という
3ステージでの人生を選ぶ人が減り、
より多くのステージからなる人生を
選ぶ人が増えるということです。
「◯歳ではこのステージ」といったことも減り、
生きることが多様化する。
「学ぶ時期」「会社勤めの時期」「引退後」以外の、
別のステージもでてきます。
糸井
そのステージとはどんなものでしょう?
リンダ
新しいステージには、こんなものがあると思います。
旅をしたり、経験を積んだりして
社会の見聞を広める
「エクスプローラー」のステージ。
キャリアを外れ、自分で職を生み出す
「インディペンデント・プロデューサー」のステージ。
同時にいくつもの活動に関わる
「ポートフォリオ・ワーカー」のステージ。
すでにいま、そういった生き方を選ぶ人たちが
増えてきているんです。
糸井
そして、本のもうひとつのキーワード
「無形資産」とはどういうことでしょう?
リンダ
これは、寿命100年時代には、
マイホームや現金や銀行預金といった
「有形資産」だけでなく、
目に見えない資産の「無形資産」についても
どう増やし、どう運用していくか、
目を向ける必要がでてくるだろうということです。
糸井
「無形資産」とは具体的にはどういうものですか?
リンダ
わたしは大まかに次の3つを考えています。
まず「生産性資産」
──これは仕事に役立つスキルや知識など。
また、仕事につながる人間関係や
評判といったこともそうです。
次に「活力資産」
──これは健康、友人、愛など。
それぞれの人に肉体的・精神的な幸福感と
充実感を持たせ、やる気をかきたて、
前向きな気持ちにさせてくれる資産です。
そして「変身資産」
──人生の途中で、新ステージへの移行を
成功させる意思と能力のこと。
人生がマルチステージ化する100年時代には、
次のステージにうまく移ることが
非常に大事になるんです。
糸井
興味深いです。
リンダ
寿命100年時代、それぞれの人の人生は
より複雑になります。
背景となる社会も、長い時間のなかで変化しますから。
ですから「有形資産」だけでなく、
いまお伝えした「無形資産」についても考えつつ
人生戦略を立てていくことが、
さまざまな危機を回避することに役立ち、
より充実した人生を送りやすくすると思うんです。
そんなふうに、人生設計のヒントにしてもらえたらと、
今回の本を出したんですね。

(つづきます)
2016-12-16-FRI

リンダ・グラットンさんの新刊

『LIFE SHIFT─100年時代の人生戦略』

リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット 著

book

誰もが100年生きうる時代には、
いままで常識とされていた
はたらきかた、学びかた、結婚、子育てなど、
人生のすべてが変わってしまう。
そんな、来る長寿社会を
戦略的に生き抜くための、
人生設計のヒントとなる一冊です。

前回の対談はこちら。

100年生きるわたしたちの価値観。リンダ・グラットン 糸井重里