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 『人にやさしく』
 THE BLUE HEARTS

 
1988年(昭和63年)

これが最後だし、
誰に聞かれてもいいと
覚悟して‥‥。
(まぁちゃん)

僕が言ってやる
でっかい声で言ってやる
ガンバレって言ってやる
聞こえるかい ガンバレ!


それは、中学生のまだ付き合うってことが
リアルに想像出来なかった幼い頃の話。
学年に一人、嫌いな男子がいました。
部活の練習中に、私と一緒の部活の友達を
「○○さ〜ん!」と黄色い(?)でっかい声で
応援してて、その感じから
「なんてふざけた野郎だ!」と思っていました。

その男子と三年の時にクラスが一緒になり、
なんとなくその思いを強くするのだろうな
と予測していたのに、
転校してきたばっかりのまだ馴れてない男子に
積極的に声をかける様子を見て、
「え?」っと思いながら、
スポーツ大会で、あんまり好かれてない女の子が
失敗したのを、馬鹿にしたりせず、
本気で励ましてる姿を見て
気づけば、好きになっていました。

と言っても、話しかけることが苦手な私は、
もちろん好きな人になんてもってのほか。
なんのアプローチもせぬまま、
クラスでの行事やその打ち上げやら、
輪の中で楽しむのが精一杯でした。

でも、だんだん近づいてくる卒業を前に、
同じ高校に進むかと思っていたのに、
違う高校に行くと知って相当ショックを受け、
この想いを伝えようと決意しました。

直接好きと言うのは出来ないけど、
第2ボタンをもらおう。

卒業式当日。
教室をうろうろして話しかける隙間を
全く与えないその男子にやきもきしながら、
彼が廊下に出たタイミングで、
これが最後だし、誰に聞かれてもいいと覚悟して‥‥。

「第2ボタン下さい!」
たった一言だけど声をかけました。

その時の彼の照れた笑顔は忘れられません。
ボタンを外している姿も。

その日の夜は、クラスの打ち上げで、
クラスメイトの家で集っていました。
もう会えることなんてそうそうないんだろうな、
彼ともクラスメイトとも、と思いながら、
楽しい時間を過ごしました。
上手く話せない私は
ただ彼に好意が伝わったことだけで充分でした。

「じゃあ私帰るね」
すると彼が手を挙げて、
「僕が送るよ」と。
そして
「そんなことしたらまあちゃんが
 余計危険だわ、私もついて行く」
と頼もしいクラスメイト(泣)。

頼もしい女子を真ん中に3人で歩いて、
角を曲がったタイミングで気がつくと
彼が隣にいました。

別れ際には律儀に握手をしてくれました!

二人だけだったら、減るものじゃないし
彼さえよければ
手をつなぎたかったんだけどな〜。
でも充分甘くて思い出すと
ほっこりなる私の大事な思い出です♪

ボタンをもらうくだりの
あのシーンの心の躍動感が
『人にやさしく』がよく合うように思います。

数十年後の同窓会で、
妻も子供もいることも知ってるし、
私も大事な子供と旦那と犬の家族がありますが、
彼が私を含めたくさんの人を励ましてくれたように、
それが必要であれば、いつでも
「ガンバレ!」って伝えたいです。
ちゃんと、黄色くなくて、
本気のでっかい声で言ってやる。
ガンバレって言ってやる。

(まぁちゃん)

ああ、まさに、
この恋歌くちずさみ委員会の
王道を行くような、甘酸っぱい思い出です。

もちろん、主演のお二人も素敵なのですが、
「私もついて行く」のクラスメイトが
個人的には、助演女優賞。
ひょっとしたら、ついてきた彼女も
彼が好きだったのかもしれない。

ところでいまも「第2ボタン」って
そういう扱いなのかな?
ブレザーの制服とかだと
意味合いが違うような気もするけど。

恋歌の『人にやさしく』は
ブルーハーツがデビューしたころの曲ですが
(2002年にドラマ主題歌として再発)、
この曲はインパクトがあったなあ。
まさか、パンクが「ガンバレ!」なんて
人を応援するとは思わなかったもの。

楽曲そのものはいつでも再生できますが、
そういう「当時の違和感」みたいなものは
そのときに感じる以外にないのでしょうね。
いまや、誰かを応援する曲は、
恋を歌う曲と同じくらいポピュラーですが。

いやいや永田さん、
なんてやさしいんだ永田さん。
「私もついて行く」女子に
彼への好意はないと思う。
根拠はないがきっとそう!
その子はこんな感じっていうのを
あしたモノマネで説明する!
え、べつにいい?
あ、そう?

そこは本題ではなかった。
なかったんだけれども、
「いいよね、彼」って思っていた女子は、
少なからずいただろうという気もする。
(まぁちゃん)さんの文章は、
かつて惚れたことがあるモードだから
尚更そう思うのかもしれないけれど、
こんな男子、学年に1人いるかどうかだもんね。
ずっとまっすぐにそうだったんだろうね。
そして、きっと今にいたる道も
まっすぐだったんだろうなって気がする。

ブルーハーツって、
ぼくはそこを通らなかったんだけれど、
あらためて歌詞を知って
とってもいいなあと思いました。
インディーズ時代の曲なんだってね。

が好きそうなエピソードなのですが、
いまお休みをとっていますので、
私が3番手でアンカーです。
何度かこのコーナーで書いたのですが、
この『人にやさしく』という歌、
だめなんです、弱いんです、ほんとうに、
社会人として新人の頃に励まされた歌なんです。
ううううー。
ほら、ブルーハーツが
ガンバレって、言ってくれる。ガンバレ!

でも、これは、恋歌です。
しかもほんとうに、淡く甘酸っぱい‥‥
友だちのおせっかいのおかげか、
発展はせず、それが
友情に育っているといううつくしさ。
まいりました。

「好かれてない女の子が失敗したのを、
 馬鹿にしたりせず、
 本気で励ましてる姿」
それは、ズギューンと、惚れてしまいますね。
そういう人はしあわせになってほしいし、
みんなにガンバレと言われる人なんだろうなぁ。

きゅんとなる思い出をありがとうございました!
また土曜日に(1月の最終日ですね)
お目にかかりましょう。

2015-01-28-WED

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