『PRAYER』
 矢野顕子

 
1992年(平成4年)
 アルバム『SUPER FOLK SONG』収録曲

私の目が
閉じられてゆく時が来ても、
夫が愛に包まれていますように
 (ミー)

私の目が閉じられてゆく時が来ても
あなたの声も 指先も 心も
愛に包まれているように



夫とは、大学時代に知り合い、
もうかれこれ18年の付き合いになります。
子供はいなくて、結婚してからも、
それぞれの仕事、趣味に夢中で、
周りから見ると、好き勝手しているようで(笑)、
あまり褒められた夫婦ではないのかもしれません。

生活のサイクルもまったく違うので、
同じ家に住みながらも、
二人でゆっくり過ごす時間が少ないのですが、
私は、逆にこの距離感を心地よく感じていました。

彼は、自分の格好悪いところ、
弱いところも全部見せることができる貴重な存在です。
付き合い始めた頃から、恋人というより、
兄妹、家族の様な存在でした。

私は、4年ほど前から闘病しており、
先日、主治医から、
もって半年という事実を告げられました。
覚悟はしていましたが、ショックでした。
どうして私がと、悔しくて涙がとまりませんでした。
夫も動揺したと思いますが、それを表情には出さず、
冷静に主治医に質問をして、
私には「大丈夫だから」と、励ましてくれます。

あと半年で何ができるのだろう?
考えていても、月日は経ちます。
人間、死ぬまでは生きるのです。
そう思うと、メソメソしている時間がもったいない!
と思えてきました。
やりたいことリストを作って、
少しずつ実現させていっています。

あまりいい奥さんじゃなかったけれど、
これからは、夫の為にも、
せめて毎日笑顔で過ごしたいです。

そしていつか、
私の目が閉じられてゆく時が来ても、
夫が愛に包まれていますように。
私は彼の大きな愛に包まれて、もう何も怖くありません。
他人をこんなに大切に思えることが
できた人生に感謝しています。
一日一日を大切に、
二人の思い出を積み重ねていきたいです。

その日が来るまで、
いっぱいいっぱい、私の名前を呼んでほしい。

今、とても幸せです。

(フジロックの夕暮れ時に聴いた
 矢野顕子さんの「PRAYER」、
 美しくて涙がとまりませんでした)

(ミー)

「恋歌くちずさみ委員会」には
たくさんの投稿が届きます。
届いた順番に読んで、選んで、掲載しているので、
最近はどうしても掲載を
お待たせしてしまうことになります。
それで、痛恨の極みなのですが、
この胸を打つ投稿にぼくらが目を通したのは、
つい最近のことだったのです。
メールが届いていたのは、昨年の6月19日。
いま、どうしてらっしゃるでしょうか。

思い浮かぶさまざまなことを
一旦押しやって、
投稿そのものに目を向けます。

「彼の大きな愛に包まれて、
 もう何も怖くありません」
という一文が、何度読んでも心に響きます。
そういう方がそばにいてよかったと思います。
お子さんはいらっしゃらないということですが、
「恋人どうし」というよりは、
やはり、「家族」というほうが
読んでいて自然に感じます。

矢野さんの『PRAYER』を
くり返し聴きながら、書きました。

フジロックの夕暮れ時に
矢野顕子さんの「PRAYER」を聴いたのですね。
いいな。
どんなに美しかったことでしょう。

「いっぱいいっぱい、名前を呼んでほしい。」

この一文に胸の奥をつかまれます。
そういえば「PRAYER」の歌い出しも、
 夕暮れの光が溶けて消えないうちに
 あなたの名前を呼んでみる
という歌詞でしたよね。
名前を呼ぶ‥‥ただ、呼ぶ‥‥それで十分。
もっと、名前を呼ぼうと思いました。

(ミー)さん、
ぼくたちにメールを送ってくださって
ありがとうございました。

「PRAYER」はPat Methenyさんが
書きおろした曲に、
矢野さんが詞をつけた歌です。
矢野さんのなかでも、特に好きな歌です。
時を越え 空を越え
の高音の歌声に
いつも胸がつまりそうになります。

この歌を聴くとき、わたしは
いつもいちばん大切な人を思い浮かべます。
どんなに遠く離れていようとも
あの人が愛につつまれているように、と。

ほかの人の幸せを
こころから祈れることは、
とても貴重で尊いと思います。

先週、急に思い立って
重松清さんの『その日のまえに』を読みました。
小説のなかに出てくる、いろいろな運命のひとと、
いますぐには会うことができない
だいじなともだちや家族のことが重なって、
ひさしぶりに泣きました。
小説を読んで泣く、ということが
このところ、ずっと、なかったので、
じぶんでも驚いちゃったなあ‥‥。

「PRAYER」、大好きな曲です。
この曲を聴きながら、
ゆうぐれにぼんやり遠くを眺めていると、
たましいがどこか遠いところに
持ってかれるような気持ちになります。

(ミー)さん、どうしていらっしゃるかな。
「PRAYER」の最後のフレーズは
「あなたが 今日も 明日も いつまでも
 愛に包まれているように」
です。

2014-03-05-WED

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