『スーパースター』
 東京事変

 
2006年(平成18年)

私の変貌ぶりに驚いた先生と
道ならぬ恋に落ちちゃったりして。
 (今が初恋)

もしも逢えたときは誇れる様に
テレビのなかのあなた
私のスーパースター


中学生の時、担任の先生に淡い恋心を抱きました。
退屈で窮屈な田舎の中学校で、
唯一私の気持ちをわかってくれる大人かも、
なんて思っていました。
奥さんも子どももいる先生でしたが、
気がつくと目で追ってしまっていました。
話ができたときはドキドキして、
気持ちがばれていないか不安で、
でも少しだけ楽しくなった学校生活。

心身共に背伸びしたいのに、
やっぱり子どもな15歳の自分自身に、
当時はかなりイライラしました。
ああ、早く「大人のお姉さん」になりたい。
結成したばかりの東京事変のこの歌を聞きながら、
5年後の成人式で、素敵な美人女子大生として
先生に再会することを夢見ていました。
私の変貌ぶりに驚いた先生と
道ならぬ恋に落ちちゃったりして‥‥なんて。

時は流れ20歳の私は、
別の人への失恋で激太りし、
大学に来た意味も見失いかけ、
新成人というよりは大御所演歌歌手のような
振り袖姿にうんざりしながら
成人式に出席するはめになりました。
先生の姿を見つけた時には嬉しさより
「この姿で会いたくない!」
という気持ちが先に立ってしまい、
一言二言あいさつしただけで
そそくさと帰ってしまいました。
言いたいこと、話したいことが
たくさんあったはずなのに、
本当に情けない気持ちでした。

現在、体重は元に戻り
優しい彼にも恵まれていますが、
就職浪人をしています。
将来は不安で仕方ありません。
けれどそれも含めて、
自分の選択を決定的に後悔したことは
これまであまりないように感じます。
岐路に立ったとき、
先生に胸を張って報告出来るかどうか、
無意識に頭の片隅で確認しているからかもしれません。

今度こそ、もしも逢えたときは誇れるように、
2013年もがんばるぞー。

(今が初恋)

このコーナーで何度か
書いたことがあるのですが、
「あの人だったらどうするだろう」とか
「いまの自分を報告できるだろうか」と
振り返ることのできる人がいるのは
とてもうらやましいです。

椎名林檎さんの書いた
「スーパースター」の歌詞はまさにそんな感じ。
いまの私じゃだめだな、と思える瞬間、
ピッと背筋がのびますね。

「この姿で会いたくない!
 という気持ちが先に立ってしまい」
で思い出したんですけども、
先日若い友人と話してて
「女の人って、だめなときはホントにだめなんですね」
と驚いたように言っていました。
好きだけど、会う準備ができてない日は会わない。
男性は「なんで?」と思うらしいですけど、
うん、そうです。
ですから、彼女がそそくさと帰る日があっても、
彼のせいではない、というときがありますよ〜。

恋じゃなくてもありますよ、
「恥ずかしくて、会えない」という気持ち。
あまりにもその人が輝いていて、
いまの自分じゃはずかしくって仕方がない。
おなじ会うでも、もっとちゃんとしてから、
──対等とは言わないまでも──
胸を張って会いたい。そういう気持ち。
じぶんが「なにものでもない」ことを
もやもや感じているから、
そう思うんでしょうね。

でも、このごろ思うのは、
会いたい人がいたら早く会ったほうがいい!
だってさ、なにがあるかわからないもの。
いま会いたくても会えないひとがいるぼくは、
なおさらつよくそう思うのです。

いただいた投稿と
上のふたりのコメントを読んでいたら
以前、掲載したコンテンツのなかで
画家の奈良美智さんがおっしゃってたことを
思い出しました。

「なにかで迷ったときには、
 『昔の自分がかっこいいと思ってた大人』
 を思い出せばいい。
 二十歳のころの自分が理想としてた大人って
 どんなだったっけって思うと、
 もう、すぐ解決する」
「The Apple in My Heart」より)

大人になるということは、
そういった指針や基準を
自分の体に刻んでいくことかもしれません。
そのために、恋愛や失恋は
とても役に立ちますよね。

話はかわって、この投稿の文体は
とってもいいですねー。
ちょっとしたユーモアもおかしい。
大御所演歌歌手、って。

そう、どことなくコミカル。
(今が初恋)さんが、チャーミングな主人公に感じました。
いや、でも、失礼、笑いごとじゃないですよね。
「いまは会いたくない」
という切実な気持ちはよくわかります。
男にだってそれはありますし、
武井さんの言うように恋愛以外でもそれはあると思います。
自分のことを振り返れば、
同窓会につらくて行けない期間がたっぷりありました。

それはそれとしまして、ハンドルネームの話をすこし。
投稿者の中には、
ハンドルネームに想いをそっと忍ばせる方が
わりと多いような気がします。

(今が初恋)さん。

「優しい彼にも恵まれていますが、」
の1行は、きっととてもたいせつな1行なのですね。
今の彼は、(今が初恋)さんにとって
大きな支えになっているのでしょう。

今のその恋をどうぞたいせつに。
もう、いっそのこと、いっしょにその先生に会って、
ごあいさつできちゃったりしたらいいのに。
「この人とお付き合いしてるんです」なーんて、ね。

みなさんの投稿、まだまだお待ちしています。
ふと、思い出したら、気軽にお送りくださいね。
すべてきちんと読ませていただいています。
それではまた、土曜日にお会いしましょう。

2013-09-18-WED

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