『You're My Best Friend』
 Queen

 
1975年(昭和50年)

少しばかり
納得できない思いは、
うやむやになったまま、
わたしは大人になりました。
  (レッド・スペシャル)

Oh, You're
my best friend

高校1年生、同じクラス。
お互いにはじめての、彼氏と彼女でした。

学校祭の準備やクラスイベントでは、
みんなと一緒にワイワイ楽しく話せていたのに、
つきあって二人になったとたん、
ぎこちなくはずまない会話、不器用なデート。
「あの、トイレに行きたいんだけど…」
と言い出すまでの、わたしの逡巡、数十分。
何やら思い詰めた表情で
「手、つないでもいい?」
と彼が問いかけるまでに、数か月。

何をあげたのか、もう忘れてしまった
彼への誕生日プレゼント。
お返しにと、彼から渡された細長くてシンプルな白い箱。
中にはふんわりと綿にくるまれた木彫りの人形。
テニスラケットを胸に抱えたボブヘアの女の子。
実物よりずいぶんスタイルよく
掘り出してくれていました。

バスケの試合、こっそり応援に行ったのに気づかれて、
彼はミスの連発。
「ちゃんとレギュラーになれるまでは、
 見に来てほしくないんや」
と言われ、ぶわぁっと盛り上がった涙。

さだまさし好きのわたしに、
「ロックは聞かんかもしれんけど、
 ボクはQueen好きなんや。よかったら聞いてみて」
と貸してくれたLPレコード。
「ブライアン・メイがかっこいい!」
と言うたびに、ちょっとだけ鼻にしわを寄せて、
だけど誇らしげに笑った彼。

「『オペラ座の夜』は聞いたら返して。
 もう1枚のはクリスマスプレゼントやから」
彼から渡された袋には
『You're My Best Friend』の
シングルレコードが入っていました。
貸してくれたアルバムに入っている曲なのに、
何故、シングル盤も?
フレディ好きの彼が、何故、ジョン・ディーコンの曲を?という疑問とともに、
わたしはカノジョではなく、
Friend=お友達、なのね、というかすかな不満。
少しばかり納得できない思いは、うやむやになったまま、
わたしは大人になりました。


数年前、息子と一緒に
Queenの特集番組を見ていた時のこと。
「You're My Best Friend はジョン・ディーコンが、
 最愛の妻に贈った曲なんですよ」
という声がテレビから聞こえた瞬間、
夕食後の重ねたお茶碗とお皿をもったまま、わたしは
「あぁぁっ、そうだったのか!」
と流しの前で呻き、その場に座り込んでしまいました。
あの時のわたしは、なぜ、"Friend" ではなく
"My Best" にフォーカスできなかったのでしょうか。
歌詞の内容を知ろうとしなかったのでしょうか。


Aくん、おかげさまで、息子もQueenが好きなのですよ。
You're My Best Friend を iPod に入れて、
このあいだ、口ずさんでいるのを聞きました。
プレゼントする彼女がいるのかどうかは、
わかりませんけど。

(レッド・スペシャル)

前半の、高校時代のみずみずしい恋の風景!
いいな、いいな。
「ちょっとだけ鼻にしわを寄せて、
 だけど誇らしげに笑った」
というあたり、とっても好きです。

(レッド・スペシャル)さんのメールには、
恋の終わりのことが書かれていなくって、
まさかfriendの解釈のちがいが原因、
というわけではなかっただろうけれど、
その「うやむや」を、何十年も引きずってた。
そうですよ、高校生には
friendは「お友達」ですもんね。
boyやgirlがつくと、恋人の意味になるけど、
歌詞に出てくるのは、friendだけ。
いまさら、あらためて歌詞の内容を追うと、
この曲のなかのfriendという言葉には
「生涯の伴侶」くらいの
おおきな意味がこめられてるんだけれど。
‥‥でもね、わかんないですよねえ。
彼、粋な男の子だったですね。

わりとけれん味たっぷりの
楽曲が多いQueenですが、
この「You're My Best Friend」は
すごくシンプル。
ギター、ベース、ドラムス、そしてエレピ、
ボーカルと、これぞQueenっていうコーラス。
(レッド・スペシャル)さんの思い出のように、
みずみずしいです。
その後フレディ・マーキュリーが
I Want To Break Freeで女装したり、
牛柄のタイツ着たりしてるのを、
ベストヒットUSAとかで見て
すんごくびっくりしたりしてました。

「おーい、誰かこの話をそのままドラマか映画にしてー」
と言いたくなるシリーズです。

時間が経過してからの描写に、息を呑みました。
お茶碗を洗う手がピタリととまり‥‥。
‥‥まったくもう、
すごい瞬間を届けてくださったものです。
事実のすごさ、すばらしさを、あらためて感じます。

「最高の恋愛関係とは、友情のことではないか?」
という、このコンテンツを続けながら
ずっと思っていたことにも関わる投稿ですよね。

『オペラ座の夜』は、ぼくの青春です。
おおげさではなく、ほんとに擦り切れるまで
レコードを聴きました。
ああ‥‥「You're My Best Friend」、名曲です。
そんな個人的な想い出も重なることもあって、
(レッド・スペシャル)さんのこの投稿、大好きです。
愛聴盤のように、この先何度か読み返すことがありそう。
本気でそう思います。ありがとうございました。

まずは、枝葉の話からさせてください。
‥‥「木彫り」て。
しかも、「手彫り」て。

以上を枕として本題ですが、
いいなぁ、またしても名作だなぁ。
お茶碗とお皿を持ったまま座り込む場面が
ほんとうに映画みたい。
ぼくの好みで極端にデフォルメすれば
『ユージュアル・サスペクツ』の
ラストシーンみたい。(ジャンル違いすぎ)

しかし、これ、前にも話したと思いますが、
男が曲に何かを込めるのは、
ほんとうに伝わりづらいからやめたほうがいいね。
伝達という意味ではね。
ま、本来の目的は、前にも言ったと思うけど、
「曲に想いを乗せて送る行為」にあるから、
つい、やっちゃうんだけどね。

投稿者のお子さんにまでつながるエピソードも
たいへん素敵です。
何度も読み返したくなる投稿、
ありがとうございます!

さて。おきまりの、ではございますが、
蒸し返すように、
わたくしのセリフ、言わせてください。

「男子!
 わかりにくいんじゃコラ!!」

はー、すっきりしたー。

もう、曲は、贈らないで‥‥
気持ちをはっきりと、口に出して、伝えて‥‥
暗喩とかもう、ぜったい伝わらないし‥‥
女の人、忙しいし‥‥
はー、すっきりしたー。

『You're My Best Friend』は
最高のラブソングですね。
おおむね、ストレートパンチですけれども
やはりfriendの言葉遣いがややこしいです。

恋人と友達の違いは、最後の最後の最終的なところで
自分の幸せを願うか
相手の幸せを願うか
ということだと私は思っています。
(恋人の場合は、
 相手に自分も混じってる、という感じ?)
ふたりの幸せがぴったり重なっている時期なら
いいんですけれどもねー。

だから、究極の関係は友情だと私も思います。

いいですよね、best friend。
そして、その歌を聴く息子さんとの親子関係もきっと
これからfriendになっていくのですね。
(すでに、なっているのかもしれません)

ホントにすてきな投稿! ありがとうございました。

来週も、水曜日と土曜日にお会いしましょう。
みなさまの投稿、お待ちしてま〜す。

2013-07-06-SAT

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