『One more time,
 One more chance』
 山崎まさよし

 
1997年(平成9年)

もういちど
はじめられるかも
しれない、と
賭けてしまった。
(ありがとう)

いつでも捜しているよ どっかに君の姿を
向いのホーム 路地裏の窓
こんなとこにいるはずもないのに

今から30年ほど前、
父親の仕事の関係で住んでいたアフリカで
私は台湾人の人とつきあいました。
奥手だった私は日本在住時も
男の人とつきあったことがなかったので
最初の恋でした。

アフリカに来たばかりで英語もおぼつかない彼と、
在住3年目で
なんとか普通に会話ができるようになっていた私。
おぼつかない共通言語で、
でも一生懸命気持ちを伝えようと、
真剣だった二人でした。
私は半年後日本に帰り、
彼がときどき台湾に帰ってくると会いに行く、
という遠距離恋愛。
はじめての真剣な恋だった私は
「こんな私を好きになってくれた人、一生ついていくわ」
と思ってました。
未熟者でした。

台湾の政情も不安定だった当時、
仕事もままならず、
台湾に行きたいという私に
「まだ待ってくれ」という彼。
私は日本で働きはじめ、お互いの生活は流れ、
やがて、離れていてもそれぞれに過ごせるなら
彼にとって私という者の意味はないんじゃないか?
という疑心暗鬼に、
結局私は飲み込まれてしまいました。

別れてから1年後。
突然日本にやってきた彼は
「仕事で日本に来てるんだ。会わないか?」
と電話をくれました。
話し合ったすえ、
大人のフリをして別れた二人だったので
平気なフリで新宿で待ち合わせをした私。

結局私は、賭けたのかもしれません‥‥。
日本に慣れてない彼と、
新宿の人ごみの中の待ち合わせで会えたら、
何かまた、はじめられるかも、と。
携帯もないその頃、
結局私は彼とすれ違いで会えず、
深夜の電話、
「仕事なんて口実に決まってるじゃないか!」
という彼の言葉で
自分がどんなにひどいことをしたのか、わかりました。

何年もたって山崎さんのこの曲を聴いたとき、
涙がとまらなくてとまらなくて‥‥。
私は結局、自分のやってしまったこと、
大事な人を傷つけたこと、
そして、どこかでまだ、そんなことをしたのに
彼を待っている自分を整理しきれずにいたのだと、
思い知らされました。

さすがに30年たって、彼の姿を探す事はなくなり、
今は、弱いけど図太く、ユーモアのある旦那と
子供に恵まれて幸せに暮らしています。
でも、
いまわの際に、
「○○、ごめんなさい」と、
昔の彼の名を呼んでしまいそうな気がして、
そんなことで、
また大事な人を傷つけないよう、
1日でもいいから旦那より長生きしなきゃな、
と思っている今日この頃です。

(ありがとう)

なんだか‥‥、身につまされながら
投稿を拝読しました。

やぁ、もうね、きっとまちがってると
わかっているんですけれども、
どうして自分の考えにのまれちゃうんでしょうね。
そして、重要なところで
どうして賭けに出ちゃうんでしょうね。
わははは(言ってて自分で可笑しくなってきた)。
それで傷つく相手はやってられませんね。
「なんのこっちゃ」でしたね、
ええ、そうだったしょう。
はぁぁぁ。
すみません。
すみませんすみません。

なにより
「いまわの際に、
 『○○、ごめんなさい』と、
 昔の彼の名を呼んでしまいそうな気がして」
という部分がリアルです。

もし私が死ぬときは‥‥ということを
なかば冗談のように言ったりするけれど、
この「もしも彼の名前を呼んでしまったら」は
ほんとうにそう思ってらっしゃるのだろうなと。

おそらくその人が、
心の深い部分に住んでいて
薄れることがないのでしょうね。

そういう人がいることが幸せだと
軽々しく言うことはできませんが、
忘れがたい思い出があるということ自体は
きっと、生きていくうえでの
財産なのではないかなと思います。

まず、もう、
(ありがとう)というペンネームがすばらしくて。
後悔はあるかもしれないけれど、
この投稿にも、今のだんな様にも、
ひっくるめて人生に感謝しているような
うれしさがありました、読んでいて。

弱いけど図太く、ユーモアのある旦那さま
っていうのも、いいなあ〜〜。

そう、なんであんなことを?
というような妙な賭をすることって
ありますよね。
詳しくは言いませんがぼくもあります。
そしてそのことに、
大きく後悔しているという点でも一緒。

うーーむ‥‥‥‥。
いや、すみません。
いろいろと思い出させていただく投稿でした。
ありがとうございました。

きっと、だれにも言わずにいたような
たいせつな思い出であり、
同時につらい記憶でもあるこのお話を
こうして文章にしてくださって、
ほんとうにありがとうございます。
自分も、また、
上の3人とはまたちがった意味かもしれないけれど、
夜空を見上げてふぅっとためいきをつきたくなる、
そんな余韻にひたっています。
ぼくもまた、だいじな人を
とても傷つけてしまったことを、
思い出すことがあります。
その当時のよりも、いまのほうが、
だんだん大きなくさびになってきた気もします。
忘れろっていうほうが無理だものね。

いろんな恋の思い出が、ここに集まっています。
みなさま、よい週末を!

2012-12-01-SAT

最新のページへ
感想をおくる ツイートする ほぼ日ホームへ
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN