『This Love』
 アンジェラ・アキ

 
2006年(平成18年)

 私、本当に
 よくがんばったわ。
 (れおん)
奇跡を待つより
この手をつなぎたい
信じる力が私を自由にする

私が18も離れたその人に会ったのは
社会人になって4年目の頃でした。
お酒が好きで、一人で飲みに行くことを覚え
仕事以外の知り合いができるのが
楽しくて仕方なかった。
最初は単に知り合いのつもりだったのに、
よく行きあって、話して、メールするうちに
どんどん惹かれていきました。
彼も私の気持ちに気付いていたのだと思います。
そのうち、送ってもらったあとに
うちにあがっていくようになりました。

その頃はただただドキドキして、
大人な彼と恋人同士になれるかもしれないという
淡い期待で楽しかった。

でも決定的なことを言ってくれない彼に
徐々に不安を感じるようになりました。

多分、そんな私の気持ちを
よく分かっていたのでしょう。
ある日、彼から話があると言われました。
彼から言われたのは
「私と同じような人がほかに3人いる」
ということでした。
でも、誰とも付き合ってはいない、と。

そんなことはうすうす分かっていました。
でも、そう言われてもあきらめられないぐらい
彼のことを好きになっていました。

そこからが苦しい恋の始まりでした。

彼と会えるかもしれない土曜の夜は
予定を空けて待っていました。
彼と女の人がいるところに
ばったり会ってしまうこともありました。
毎年、誕生日やクリスマスなどには
淡い期待をいだいてしまいました。

そんな生活がしばらく続いて、
もうこの恋を終わらせようかと思ったころ
この曲を仕事中の車の中で聞いていました。
なんだか歌詞がすっと心に入ってきました。

約束なんかいらない。
私が好きなんだから。
こんなに好きで愛しているんだから。
誰に何を言われても、やめたほうがいいと言われても
彼がやめてくれと言うまで愛し続けよう。
こんな気持ちにさせられるような人に
会えたんだから、
他には何もいらないよ。

仕事中にも関わらず
(そして運転中にも関わらず)
泣きながら歌っていました。

今月、その彼は私の実家に挨拶に来てくれました。
今では笑いながら本人にも言っていますが
私、本当によくがんばったわ(笑)。

ちなみに今は、彼の方が私のお世話係です(笑)。

(れおん)

おお、そんなふうに着地するとは
思いませんでした。
いやー、がんばった。
がんばったわ。がんばった!

「こんな気持ちにさせられるような人に
 会えたんだから何もいらない」

そんなこと言ってる友だちがいたら
私も、ご多分に漏れず、
やめとけよーと言うと思います。
でもね、そうなんですよ、
他人のアドバイスなんて余計なお世話。

人を好きになることも、
気持ちの持っていきようも、
関係の築き方も、
とても個人的なことなんだから。

やー、よかった。
存分に、尻に敷いてあげてください。

あーっ、そう! そう来た!
もう最後の最後のちょっと前まで
「だめなんだろうな‥‥」
と、つらい結末を予想して読んでいたので
ほっとするやら驚くやら。
ほんと、よかったですねー。
「それでもそんな彼じゃ心配?」
という気分も最後の1行がふっとばしてくれたし。

ところで出会いが
「社会人になって4年目の頃」で
「18も離れたその人」ってことは
(れおん)さんが当時26歳と仮定すると
彼は44歳だったんですね。
そのときに3人も‥‥
ふうむ。
こないだテレビでマイケル富岡が
51歳でガールフレンドが12人いるって言ってた。
誉めたかないけど驚いちゃいますね。

出ました、
「恋歌くちずさみ委員会」名物、
ラスト数行での
あっさりどんでん返しハッピーエンド!
これ、このコーナーでしか
味わえない爽快感だと思う。

「私、本当によくがんばったわ(笑)」
というセリフで思い出すのは、
やはり(なにが「やはり」なんだか)、
ロンドンオリンピック女子バレー、
3位決定戦で勝利し、
銅メダルを獲得した直後の
ベテラン竹下佳江選手のインタビュー。
「よくがんばりましたねー」と
しみじみ語りかけるアナウンサーに対して
竹下選手が即答したのは
「はい、ほんとよくがんばったと思います」
という真顔のコメント。

ほんとによくがんばった人にしか
絶対に言えないセリフだなあと
ぼくはたいへん感動したのでした。

18歳年上の恋多き彼と
ついにたどりついたゴール。
がんばったんでしょうねぇ、ほんとうに。

やんや、やんや、やんやーーーー!
(スタンディング・オベーション)

ほんとにスパーンと決まりました、
急転直下のハッピーエンド! 一本っ!

まいったなぁ、まいりました。
最後の数行で泣かされちゃいましたよ。
すばらしい。
心を曲げずにがんばって、がんばり続けて、
最高の現在にたどり着く。
そのまっすぐな物語(もちろん実話)に、
気持ちよく感動をいただいた思いです。

そうかー、スポーツ。
恋歌の投稿を読ませてもらう作業って、
スポーツの観戦に似ているのかもしれません。
ひとつひとつの展開で手に汗を握り、
最後の一行まであきらめずに結末を見守る。
繰り広げられているのは、まさしく真剣勝負。

いやはや、
「事実」を見せていただけるって、
ほんとうにエキサイティングです、光栄です。

あなたの「事実」も、よろしければ。
忘れられない一曲と共にお送りください。

 

2012-09-22-SAT

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