いつもくちびるに、季節の風とラブソングを。
こんにちは、恋歌くちずさみ委員会です。

あまずっぱい企画は、とっても好評!
たーくさんの、おたよりがとどいています。
みなさんの、
たいせつなたいせつな思い出の「恋歌」、
どんどん紹介していきますね。
なのでどしどし、おたより(メール)くださーい!

ワタクシの人生を引き受けてくれた
夫の男気を思います。
(投稿者・n)

『よそゆき顔で』
 歌/松任谷由実

 1980年(昭和55年)
 シングル『Esper』
 B面収録曲
 

My恋歌ポイント

 今の相手はかたい仕事と 
 静かな夢を持った人

いわゆる前夫は、熱い男で、
長渕を愛し、尾崎の死には号泣し、
浜省はバイブルのようでした。
コンサートのチケットを入手するため、
嵐の中一晩中一緒に並ばされたり、
ギターでワタクシへの愛を奏でたり‥‥‥と
今振り返るとちとおもしろいですが
どちらかというと、冷めた女であるワタクシには
ハードすぎる男でした。

そういう男だからこそ、
新しい愛に一直線で突っ走ったのでしょう。
「運命の人と出会ってしまった。離婚してくれ」
まったくもって、迷惑な話です!
1才になったばかりの娘を抱え、途方に暮れましたよ。

ときは流れ、娘がもうすぐ中学生になるという頃、
今の夫と再婚しました。

さだまさしの国文学的歌詞を研究し、
中島みゆきのひねた歌詞の中の深層心理を探求し、
ジャズやクラッシックに、フィーリングではなく、
学識的観点から入るような現夫。
「めんどくせー」とか「うぜー」とか
思うときもあるけど、結構おもしろかったりします。

ユーミンの歌は、自分の通ってきた道にセットされてて、
聞く度に、懐かしかったりほろ苦かったりします。
そして、それはたいていの場合、
過去に思いを馳せることになります。
でも、この「よそゆき顔で」を聞くと、
前夫のことはほろ苦く思い出したりするものの
♪今の相手は、かたい仕事と、静かな夢を持った人♪
のところまで聞くと、
必ず夫の顔が浮かび、
娘ごとワタクシの人生を引き受けてくれた
夫の男気を思います。
これからの自分たちの未来(老後?)に思いを馳せます。
なかよく年を取っていこうね、という
やさしい気持ちになります。

そして、またときは流れ、娘は18になりました。
いまは
「佐藤健チョーかっこいい!」
「市原隼人ってばイケメン!」
とか言ってますが、
きっと夫によく似たやさしい彼氏を
連れて来る日も
そんなに遠くないんだろうなあ。

この『よそゆき顔で』は
アルバム『時のないホテル』に収録されている曲です。
個人的にはアルバムからこの曲を聞いていたのですが、
(『時のないホテル』は全曲すごい、
 という話はさておき)
『Esper』のB面だったということで
今回のジャケ写はシングルのほうにしました。

もー、この歌、大好きです。
どこがいちばん好きかというと
まさに(n)さんの挙げたフレーズ
「いまの相手は」というところです。
「静かな夢を持った人」というところで
じわーんときます。

それだけでもやっかいな歌なのに、
(n)さんのエピソード!
涙がぽろぽろしていまいました。
ぽろぽろぽろぽろ‥‥

わ、なんだこれ‥‥。
この投稿‥‥なんだこれ‥‥。
たのしくスイスイ読んでいたら、
最後のあたりで目から水が。
‥‥ごめん、だめだ、すみません、ちょっと中座。

あ、山下さん泣いちゃった。

ぼくもスガノとおなじでこの曲は
「時のないホテル」で聴いたくちです。
あのアルバムはすさまじいよね。大好き。
でも「Esper」っていう曲は
ユーミンのアルバムは3年後の
「REINCARNATION」収録なんだよね。
というようなことはさておき、
「よそゆき顔で」。
悪ぶってた青春を送っていた主人公女性が
観音崎の歩道橋に立ち、
あすの結婚を前に、過去に決別する。
最初は「結婚なんてまだしたくない
けれど今日まで流されて」だったのに、
この「今の相手はかたい仕事と
静かな夢を持った人」で、
そうか、この女性はほんとうに
覚悟を決めたんだとわかる‥‥
ああ、ユーミン的。

「よそゆき顔」にでくわす瞬間があったと
友人男子が語ってました。
むかしつきあってた女の子が
結婚してしあわせそうに歩いているすがたを
クルマの中から見つけたんだそうです。
なんとも複雑な気持ちになるもんだなあと
そいつは言ってました。

この投稿はほんと、いいですねぇ。
「名作!」とうなるような投稿は
これまでもたくさんあったけど、
これはほんと、ちょっと特別だ。

リアルで、あたたかくて、泣ける。
冷酷さも、幸運も、あきらめも、肯定も、
それぞれ同じくらい淡々と入ってて。
生きているってそういうことだから
泣けるのかもしれない。

もしもこの連載が本になるのなら、
最後はこの投稿で終わりたい。
そんな気がしました。

随所をいちいち挙げてほめたいのですが
野暮になりますのでやめておきます。
素敵なお話を届けていただき、
ありがとうございました。

山下さんまだ泣いてんのかな?
あ、帰ってきた。

すいません、失礼いたしました。
どうも最近、目から水が出やすくて困ります。
洗面所で顔を洗い、ガラガラとうがいをして、
中座から戻ってまいりました。

‥‥そのあいだに、コメントが入ってますね。
(読む)‥‥ああ‥‥ああ‥‥はい。
まったくもって、同感です。
名作中の名作。
これ以上ことばを重ねるよりも、
お時間があるならもういちど、
(n)さんの投稿をお読みください。
いい投稿は、いい恋歌のように、何度でも味わえます。

2012-01-05-THU

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