糸井 こんど、良重さんのブランド「CACUMA」が
「ほぼ日」からデビューしますけど、
洋服は、ずっと、やってみたかったんですか?

渡邊 はい。

デザインが好きな服は見つかるのですが、
ふだんに着る、ふつうの洋服で
自分が着たいちょうどよい服が
なかなか探せなくて。

あまりにも見つけられないので、
つくったほうが早いのかなぁって思っていました。

糸井 なるほど。
渡邊 ‥‥ですけど、
実際にやるとなると、具体的に考えられなくて。
糸井 そうでしょうね。
渡邉 それで、ミナ ペルホネンの皆川明さんとの
トークショーのとき、
「次につくりたいものは、何ですか?」って
聞かれて‥‥。
糸井 うん。
渡邉 きっとそういうのもあって
「洋服です」って。

糸井 その言葉を、いち観客として
「ほぼ日」の松本って社員が聞いていたのが
「CACUMA」のきっかけなんだよね。

植原さんは、良重さんの服を見るのはじめて?
植原 いや、今日がはじめてではないいんですが‥‥
こんなにたくさんあるのか、と(笑)。
糸井 いやあ、ほんとつくりたかったんだよ。
植原 そう思います。
渡邉 はい(笑)。
糸井 どういう気持ちで、つくったんですか?
渡邊 特別なかたちの洋服にしようだとかは
思っていませんでした。

世のなかには
「なんで、ふつうの洋服がないのかな」
と感じることがよくあったので‥‥。

糸井 ええ。

渡邉 たとえば「首まわりの空き具合」とか
生地の厚さとか‥‥ちょうどいいのが売ってない。

あとは、個人的に「七分袖」が好きなんですけど、
それも、なかなかいいのがない。
糸井 つまり「自分の好きな洋服」をつくったと。
渡邉 はい、そうなんです。
洋服に「部分的な絵」を入れたのも、そう。

総柄のプリントというよりは、
部分的にイラストの入った洋服があったら
かわいいのにと思っていたので。
植原 一見、無地に見えるワンピースやブラウスにも
刺繍とか絵が入っていますもんね。
糸井 でも、こういうイラストを描ける人って
服屋さんには、いないですよね。

だから、見ていると
イラストの側からつくった洋服になってますよ。


▲ 渡邉さんのイラスト入った
 『CACUMA』のプリントスカート

渡邊 新しい洋服のカタチを考えていくのは
わたしにはできないけれど、
絵だったら、どんどん描けるんです。

だから、なにか、どこかに
活かせるところがあるんじゃないかな、と。
糸井 ちなみに、そのトークショーの現場での
皆川さんの反応は、どうだった?
植原 たしか
「それって、どういうお洋服なんですか?」
って。

で、良重さんの説明を聞いて
「ああ、それはいいですね。
 着たいっていう人、いっぱいいると思う」
って。
糸井 なるほどね。つまり、皆川さんは
「CACUMA」の助産婦の役をしてくれたんだ。
植原 まさに、そうだと思います。

でも、そういえばむかし、
良重さん、
いろいろ洋服のラフを描いてたの、思い出した。

渡邊 ああ、そうそう(笑)。

やっぱり、
「洋服をつくりたい」という気持ちは
ずっと持っていたんだと思う。
植原 だから、ここまでの経緯をずっと見ていたら
良重さん、
やりたかったことをついにやったんだなあと。
渡邊 ‥‥うん。
糸井 パタンナーの人とは知り合いだったんですか。
渡邊 いえ、知人の知人を、紹介してもらいました。
連絡してみたら、とても感じのいい人で。
糸井 この人だったら、いっしょにできるなと?
渡邊 はい、そう思いました。
糸井 それは、とっても運がよかったですよね。
そこをちゃんと探したら、大変だもの。
渡邊 実際に服をつくってくれた三越伊勢丹さんが
また、素晴らしくて。

糸井 チームのメンバーにも恵まれたんですね。
じゃ、あとは、まだ見ぬお客さんだけだ。
渡邊 はい、ドキドキしてます‥‥(笑)。

(この座談会は5月中旬に行われました)

糸井 大きくスタートするわけじゃないから、
自然にやったら、うまくいくんじゃないかな。

洋服じたいには、力があると思うから。
渡邉 ほんとです‥‥か?
糸井 だからまずは、お客さんと出会いたいよね。
渡邊 すごく、楽しみです。
糸井 「洋服、ふだん何を着てる?」という質問の
答えになるような服になったらいいと思う。
植原 ああ‥‥。
糸井 お出かけのときの短い時間じゃなくて、
ふだんの生活で
長い間、着ている服が重要ですからね。
渡邊 それは本当に、そう思います。

だからまず、きがるに洗濯できることなどを
必須条件にしてつくったんです。

これからの季節、汗をかくと思うので
かるくて、すぐに洗える洋服‥‥。
糸井 やっぱり、あくまで「自分用」なんだ。
渡邊 はい、まずは「じぶんがほしい服」を
つくったんだと思います。
<つづきます>

2013-06-27-THU