『日本の神様』著者、
畑中章宏さん。
おかしな一団のリーダー役。
神様が好き。
グラフィックデザイナー、
祖父江慎さん。
あちこち寄り道するのが
大好き。
イラストレーター。
100%ORANGEの
及川賢治さん。
虫が好き、ハイキング好き。
ほぼ日乗組員。
ふりまわされるのが好き、
首をつっこむのも好き。
デコボココンビ。
北野天満宮を
案内してくれます。
かっこいい権禰宜さん。
大将軍八神社を
案内してくれます。
人気者の宮司さん。
第9回 大将軍群。
ほぼ日
80体の神像を目の前に
息を呑む一行です。
知識のないところからスタートしている、
会話のまどろっこしさも
お楽しみいただければ幸いです。
ほぼ日

大将軍神像八十躯に依る
立体星曼荼羅の世界。

生嶌 はい、そういうことで、やってます。
ソブエ これはすごいわ。
かっこいいね。
あのいちばんいいところにいる方は
どなたですか?
生嶌 ここにあるすべてが
「大将軍」という星の神様です。
オイカワ すべてが「大将軍」?
生嶌 ええ。あそこの位置は
北極星を表す中心です。
そして、その前にずらっと横に並んでいるのが
衣冠束帯の御神像。
こんなふうに並べて、北斗七星を表すような配置を
取らせてもらっています。
ソブエ つまり、神像を
星座図みたいに置いてる、
ということですか?
生嶌 はい。
ソブエ いちばんいい場所にいるのが北極星?
北極星さん。
生嶌 そんなかたちで
私たちが配置させてもらってるということで‥‥、
まあ、もともとどういうふうなことなのか、
ほんまに、想像でしかないんですよ。
ハタナカ そうですね、何も、
わからないんですよね。
生嶌 ええ。
オイカワ そうなんだ‥‥。
生嶌

配置図も何も、残ってないんです。
さきほど申し上げたように、
こういった神像が屋根裏やら藪やらに
ほんまにバーっと隠して置いてあった、
という状態やったんで。

ハタナカ かたちも様式も違うんですけど、
それぞれの神像に名前があるんじゃなくて、
みんなが「大将軍」なんですね。
生嶌

そうです、はい。

ソブエ そのへんがわかりにくかったけど、
そういうことなんですね。
生嶌 そうです。言ってしまえば、
大将軍神像「群」です。
現在、ここに残ってる御神像は80体。
そのうち1体は童子像です。
童子というのは主神となる神さんの
横へお付きになる眷属神なんですけれども、
お付きの神さんとしては
これ1体だけが残っております。
ひじょうに珍しい御神像です。
生嶌 同じ大将軍神像であっても
かたちでふたつに分けることができます。
ひとつが平安の衣装を被った「衣冠束帯像」、
もう1種が、鎧甲冑をまとった「武装神像」です。
ハタナカ 武装してるほうが
歴史的に古いとされてるんですよね?
生嶌

おっしゃるとおりです。
数年の違いやとは思うんですけれども
うちに所蔵されている
御神像の古さとしては
武装で表されているもののほうが
かたちとしては古い形式にあたります。

古いものは、だいたい
平安時代の中期から
鎌倉時代にかけての造像になります。
西暦でいうと、900年から1200年の300年間。
陰陽道の信仰の隆盛と
合わさるようなかたちで
どんどん造られては奉納され、祀られて、
これだけの数が
集まったのではないかと思います。

ハタナカ ただ、日本のなかで
これだけの数の大将軍の神像が
ここに集まっているのが不思議です。
もしかして、ほんとうは
ここ1か所だけのものじゃなかったのかも
しれないですよね。
生嶌

あ、はい、はい。なるほど。

ハタナカ このあたりの広い範囲の
お堂にあったものが
集まったんじゃないかな、
とも思うんです。
だって、この神像一体一体が、
わりと独立して
ご本尊になるくらいの神様です。
生嶌

像の規模はそうですね。
時代の中で淘汰されていった
お堂の御神像が
集まっていったのかも‥‥。

ハタナカ 普通の神社さんでは
ここにおられる方々が
1体、2体、いらっしゃるだけで
祭神としてそうとう立派なことです。
それが、こちらの場合にはいっぱいいらっしゃる。
生嶌 ええ。ある種特種なことだとは
思っています。
ハタナカ 装束もちがうし、
立像、半跏像‥‥
10世紀から12、3世紀ぐらいまでの
期間がありますから
こまかく見ていくと、
バリエーションがいっぱいありますね。
ソブエ 中央に向かって、だんだん大きくなるように
配置されているのはどうしてですか?
生嶌 単純に、我々がそう並べた、
というだけです。
置き方がわからないんで、
そのあたりは、もう我々が
勝手にやるしかないんですよ。
あとは彩色ですが、
いまはみんなほぼ「木の色」に
なってますけれども、
当時は極彩色でした。
オイカワ へえ!
生嶌 赤、青、黄、緑、いろんな色の
着装を施して、
その上から模様を描いたりしていたようです。
武装の御神像は、全身金のものもありました。
ハタナカ 全身金!
生嶌 もうピカピカの状態です。
あの立像は、金で覆われていたとか。
ほぼ日 あちらの、立ってらっしゃる方が?
ソブエ きっと、手にいろいろ持ってた人も
多いんでしょうね。
ハタナカ 持ってたものの種類はね、
だいたいが、剣と刀印。
生嶌 それに、杖とお経が何種類かあります。
オイカワ ピースしてる。
ほぼ日 ほんとだ。
生嶌 あれは刀印(とういん)です。
ハタナカ 厄災を斬る、除ける、
魔除けの印のようなことです。
でも、おっしゃるとおり
ピースですね、
平和を祈っていらっしゃるような‥‥うん、
平和であれば、ということにつながりますね。
ほぼ日 ハタナカさんの本『日本の神様』で
神像の写真をたくさん見ていましたが、
こんなに大きいと思いませんでした。
ソブエ うん。後ろ姿も見れらていいね。
すごいねぇ。
  (ときが経つのも忘れ、
 神像を眺めつづける我々です。つづく)
神像 日本の神様はそもそも、
山や海といった自然そのものでしたが、
飛鳥時代に仏教が伝来し、奈良時代になると
「神様にも姿や形が欲しい」ということで
「神像」が生まれたのです。
こういった神像は
決まったルールがある仏像とは違い、
自由で表現豊かに造形化されています。
2012-02-15-WED