もくじ
第1回料理ができないから姑と同居。 2017-05-16-Tue
第2回子育てには一生懸命じゃなかった、のかも。 2017-05-16-Tue
第3回努力はしません。 2017-05-16-Tue
第4回夫婦って、似てくるものじゃないのね。 2017-05-16-Tue
第5回レコーダーがなくても。 2017-05-16-Tue

フリーランスのライターをしています。
旅先で、おいしいお酒とごはんを楽しんでいる時が心底幸せです。
Twitter:@yabu_tw

おかあさんって、どんな人?

担当・やぶ

「親の背を見て子は育つ」といいますが、
私は背中といえば、母です。
キッチンに立つ母をリビングから眺めて、
「今日のごはんなにー?」と声をかけるのは、
子どものころも、大人になった今でも、
変わりません。

先日、「おかあさんはどんな人?」と聞かれました。
言葉に詰まって、どうしても答えられませんでした。
父のことは、なにかしら表現することができるのに。

専業主婦で、A型で、ちょっと心配性で‥などと、
いろいろ思い浮かぶ言葉はあるのですが、
どれもしっくりきません。
あれっ、私、母のことを何も知らない‥?

どうしても、たったひとりの「おかあさん」であって、
自分とおなじ、1人の人として
見たことがなかったのかもしれません。

いったいうちのおかあさんは、どんな人なんだろう?
それが知りたくて、インタビューを申し込みました。

第1回 料理ができないから姑と同居。

おかあさんのことを記事にしたいから話を聞かせてほしい、
とお願いをして、ICレコーダーを回し始めました。
レコーダーってドラマで見たことあるよ、
なんて言われながら、ふしぎな緊張感の中で、
初めての母へのインタビューが始まりました。

***

——
ええと、今日はよろしくお願いします。
なんの話をすればいいの?
——
テレビとか料理のことはいつも話しているけど、
おかあさん自身の話ってあんまり聞いたことないじゃない。
だから、そういうお話を伺いたいなと‥。
ええと、おかあさんは、そもそも結婚願望があったの?
うーん、ふつうかな。人並みに。
——
結婚してからずっと専業主婦だけど、
仕事を続けるという選択肢はなかったの?
あのころは、
結婚したら仕事をやめるっていうことになっていたから。
みんなそれが当たり前だと思っていたから、
そのまま会社にい続けようとは、考えなかったな。
 
それに、職場の人間関係にすこし悩んでいたから、
結婚したらやめられる!
っていう気持ちもあったかも(笑)。
——
そ、そうなんだ‥。
結婚して、おとうさんの両親、
私のおじいちゃん、おばあちゃんと
同居することになるわけだけど、それは抵抗なかったの?
あ、それはぜんぜん。
——
そうなんだ。
「姑との同居」というのも嫌ではなく?
うん、べつに。
だって私、料理できなかったし。
——
えっ?
実家暮らしで、仕事から帰ればごはんはできていたから、
ほとんど料理をしたことがなくて。
だから、同居して、
おばあちゃんに教えてもらおう、って思ってた。
——
ああー、そういう考え方なんだ‥。
ポジティブだねえ!(笑)
ちゃんとおとうさんには
「料理はできません」って言っておいたよ?
そしたら、なんて言ったと思う?
 
「うちの姉ちゃんも料理できなかったけど、
それでも嫁にいったんだから、大丈夫じゃないの」
って、それだけ(笑)。
 
だから、私もお嫁に来て、
この家のおばあちゃんに教えてもらったよ。
——
へえー‥。
でもね、ここのおばあちゃん、
調味料を計って入れたりする人じゃなかったの。
「いちいちスプーン何杯って決めてないから、
教えられない」って(笑)。
いちから教わるというよりも、
自分で味を見ながら覚えるしかないんだなと思って。
 
それにね、料理ができたとしても、
その家の食べものの好みがあるでしょ?
だからお嫁に来た以上は合わせないといけないしね。
毎日おばあちゃんに「今日のメニューはなに?」って聞いて、
買い物に行って、つくり方も教わってたなぁ。

——
おかあさんって、けっこう心配性だと思ってたんだけど。
家族の中にぽんと1人で入ってくるなんて、
緊張しなかったの?
ああ、だからよく胃が痛くなって寝込んでいたんだよね。
——
えっ、そうなの!?
もともと体が弱かったわけではなくて?
うん、だって会社は5年間一度も休んだことなかったから。
——
それが、結婚したら胃が痛くなっちゃったの?
今振り返ってみればの話だけどね。
当時はストレスだなんて思ってなかったよ。
おばあちゃんも本当にできた人で、
いじめられたりなんてしなかった。
でもまあ、多少は気を使っていたんじゃない、やっぱり。

***

子どもながらに、
おかあさんは小さなことまで気にするなぁと思っていたので、
胃が痛くなる姿はなんとなく想像できたのですが、
まさか「料理は教えてもらえばいいや!」という
超ポジティブな発言が飛び出すとは、驚きました‥。
聞いてみなければわからないものです。

(続きます)

第2回 子育てには一生懸命じゃなかった、のかも。