もくじ
第1回リアルタンポポと呼ばれて 2016-12-06-Tue
第2回長渕さんと家族のこと 2016-12-06-Tue
第3回ラーメンと群馬と大橋さん 2016-12-06-Tue
第4回上京は2011年3月12日 2016-12-06-Tue
第5回常連さんのこと 2016-12-06-Tue
第6回チャレンジします 2016-12-06-Tue

放送作家です。
ラジオとテレビをちょこちょこと。
輪島塗職人の次男坊でもあります。

やさしいラーメンができるまで。

やさしいラーメンができるまで。

担当・ながけん

自宅から徒歩5分のところにカウンター7席の小さなラーメン屋さんができました。
お店の名前は「中華そば 向日葵(ひまわり)」
その店内にはラーメン屋さんらしからぬ、なかなか珍しい「但し書き」が貼られています。

『小さな子供がおりますため、やむを得ず、臨時休業させて頂く事がございます。』

そうです。ここは3歳と1歳のかわいい盛りの子を持つママさん店主が、ひとりではじめたラーメン屋さんだったのです。

思わず応援したくなるほど「リアルな生活感」と「がんばり」が伝わるお店。
そして、今日も店内に明るく咲き誇る、ママさん店主のひまわりスマイル。
ほぼ日の塾の最後の課題は、やさしさのレシピをお届けします。

プロフィール
大橋純子さんのプロフィール

第1回 リアルタンポポと呼ばれて


【中華そば 向日葵(ひまわり)】
吉祥寺駅から「徒歩30分」のところに2016年5月12日にオープンした中華そば専門店。
アパレル業から転身したママさん店主・大橋純子さん(36)が作るのは国産食材と無化調にこだわった「子供に食べさせたい安心なラーメン」。
大山どりに魚介、野菜の旨味が溶け込んだスープは身体と心にやさしい昔ながらの「あっさり中華そば」となっている。
●中華そば醤油・塩(各700円〜)
●煮干しそば醤油・塩(各700円〜)
●住所:東京都三鷹市下連雀1-4-19
●定休日:木曜・日曜
●営業時間:11時〜14時30分、17時〜21時(夜営業は7月より開始)

——
前からお店のことが気になってまして・・・
大橋さん
そうだったんですか。
——
私、たまに食べに来てたんですけどわかってましたか?
大橋さん
はい、覚えてました。
——
ありがとうございます。
インタビューさせていただけて、すごく光栄です。
大橋さん
こちらこそ、よろしくお願いします。
——
けど、吉祥寺の駅からも遠いし、あんまり場所よくないじゃないですか、ここ?
大橋さん
そうですね。


(Google MAPより)

——
ここにお店を出そうと思ったのは、何か理由があったんですか?
大橋さん
場所は悪といえば悪いんですけど、飲食店としては「けっこうアリかな?」と、ずっと思ってまして・・・
——
そうなんですか・・・

大橋さん
前に自動車メーカーの工場もありますし住宅も多いので・・・
——
はい。
大橋さん
あとは、大通りに沿ってて、前々からここは目を付けてたんですよ。
——
はい。

大橋さん
でも、家から近くないと、私も子供の迎えとかあるので・・・
ちょうどこの物件が空いたので、もうピンポイントで決めました。

大橋さんがお店を出した場所は最寄り駅の吉祥寺から徒歩30分という決してアクセスがよいとはいえないところでした。
まわりには飲食店も少なく工場や住宅が多い。さらには前にラーメン屋さんだったお店をそのまま居抜きで使っているということでした。

——
家はここから何分くらいなんですか?
大橋さん
家までは自転車に乗って3分くらいです(笑)
——
自転車って、お店の後ろにいつも置いてあるアレですか?

大橋さん
そう、アレです(笑)

——
この場所って、前はこってり系のラーメン屋さんが営業してたことは、ご存知でしたか?
大橋さん
はい、知ってました。
——
食べに来たことはあったんですか?
大橋さん
不思議とそれはなかったんですよね。
——
ひょっとして、ほぼ居抜きで使ってますか?
大橋さん
はい、まったくの居抜きです。
——
外観はどうしてこういう外観にしようと思ったんですか?

大橋さん
外観はこのまんまだったので変えずに・・・
予算のこともありましたし・・・
——
ここまで黒一色じゃなかったですよね?
大橋さん
いや、黒です。
まったく変えてないです。
——
え!? そうなんですか?
大橋さん
はい、もう、内装のみで。
——
外はぜんぜん変えてないんですか。
大橋さん
ホントに申し訳ないくらい、いじってないです。
——
そうだったんですか。
前のお店から「変わったな〜っ」て思いながら食べてたんですけど。
大橋さん
ホントですか。
そういう雰囲気になったんですかね、それはよかったです。
——
のれんが変わるだけで、けっこう印象って変わるんですね。
大橋さん
そうですね。

——
内装のデザインとかも、大橋さんのアイデアなんですか?
大橋さん
そうですね、業者さんに考えを伝えてやってもらいました。

——
まあ、でも、最初・・・とにかくびっくりしたのはここに、
 
小さな子供がおりますためやむを得ず
臨時休業させて頂く事がございます。
——
って書いてありまして(笑)
こういう但し書きを貼りながら営業しているラーメン屋さんに初めて出会ったんですよ、私。

大橋さん
そうですね(笑)
私も見たことがなかったので「どうなんだろう」って思ってました。
——
今はそんなに食べてないですけど、私もラーメンが好きで、ハマってた時は「年間200店」くらい行ってたこともあったんですけどね。
大橋さん
はい。
——
でも、このフレーズが、かなり衝撃的で(笑)
大橋さん
そうでしたか。
——
すごいな〜って思ってました。
大橋さん
いえいえ。
——
この但し書きをお客さんの前に出すことについては、自分の中で抵抗はあったんですか?
大橋さん
抵抗はまったくなかったですね。
——
ほう。
それは、わかってもらいたい、みたいな感じだったんですか?
それとも、これを書いておかないと、子供がしょっちゅう熱を出すのでホントにまずいな〜みたいな・・・
大橋さん
そうですね。
どうしようもないので・・・熱を出したら。
主人も仕事でいないので、どうにもならないっていう・・・休むしかないっていう・・・
——
なるほど。
ただ、女性がひとりでラーメン屋さんをやるって大変じゃないですか?
大橋さん
そうかもしれないですね〜。
——
仕込みから何から。
大橋さん
はい。
——
応援したくなる感が、それはもう、すごくあるんですけど・・・
お客さんから直接「がんばって」とかいわれることってありましたか?
大橋さん
ひとりでやってると、すごく多くの方にいっていただきます。
私の作業してる感じが、いかにも、忙しそうに見えるんですかね(笑)
——
ハハハ(笑)
大橋さん
ハハハ(笑)

——
オープンして半年ですか。
大橋さん
そろそろ半年ですね。
——
特に最初の1ヶ月くらいって、お客さんに何ていわれました?
大橋さん
大変ね〜とか、ちっちゃい子がいるの〜とか。そんなことばっかりでしたよね(笑)
——
お客さんの方が、かえって気をつかうみたいな。
大橋さん
そうそう、そうです。逆に申し訳なかったですけど(笑)
——
それもお店の味になってるのかもしれませんね(笑)
大橋さん
「どんぶり洗いましょうか」とか「今度、手伝いにきます」とかいってくれる高校生がいたり。
ひとりでやってるとお客さんがやさしくて、ありがたいです。
——
なかなかラーメン屋さんでは見られない光景ですよね。
大橋さん
確かにそうかもしれませんね。
——
そういう「やさしい気持ち」にさせてくれるお店なんですよね。
大橋さん
ありがとうございます。
——
大橋さんを見てると「タンポポ」とだぶるんですよね〜。
大橋さん
らしいですね(笑)お客さんにも「リアルタンポポだね」ってすごくいわれます。
——
そうそうそう。
宮本信子さんっぽい(笑)
大橋さん
そうなんですかね〜。
——
伊丹十三監督の「タンポポ」って映画、見たことあります?
大橋さん
実は私、まだ見たことがなくて。
気にはなってるんですけど・・・もう、ホントによくいわれるので。
——
ぜひ機会があれば。
大橋さん
はい、お店とか、家事育児とか、ひとりの時間がとれないんですが、がんばって見てみます(笑)

【映画・タンポポ】
1985年公開の日本映画「タンポポ」
タンクローリー運転手の男(山崎努)がさびれたラーメン屋の未亡人(宮本信子)に惹かれ、そのラーメン屋を町一番にするまでを描いた作品。
監督・脚本・出演/伊丹十三
出演/山崎努、宮本信子、役所広司、大滝秀治、渡辺謙、ほか

——
けど、3歳と1歳ですよね。
そんなに子供たちが小さいのに、なんでラーメン屋さんをはじめようと思ったんですか?
大橋さん
この場所が空いたからって以外に理由がないんですけど・・・
——
パスタ屋さんでも、カフェの店主でもなく?
大橋さん
そうですね〜、確かに。
まあ、でも、食べ物の中で、いちばんラーメンが好きだった・・・っていうのが大きいですかね。
——
そもそも接客は好きなんですか?
大橋さん
接客、大好きです。
アパレル時代は接客中心だったので、接客はもともと自信があるというか。
——
なるほど〜。
じゃあ、お店をはじめるときに「家族の反対」ってあったんですか?
大橋さん
まったくなかったです。
——
ご主人からも?
大橋さん
そうですね、ないです。
——
子供たちはふだんは、どうしてるんですか?
大橋さん
いつも保育園にあずけてます。
今、保育園って3ヶ月からあずかってくれるんですよ。
——
あ〜、そうなんですか〜。
大橋さん
お店がオープンしたばっかりのとき、下の子は0歳だったんですけど、ちょうど保育園に入れたので・・・
これはタイミングが「もう出すしかないね」って思って。
——
お店をはじめたときは上の子は何歳だったんですか?
大橋さん
上の子は2歳です。
——
ご主人は?
大橋さん
主人は別の場所で居酒屋をやってるんですけど昼夜逆転の生活なんですよ。
朝3時に帰ってきて、お昼くらいまで寝てます。
——
そうなると保育園にあずけるしかないわけですね。
大橋さん
そうですね。
もうほとんど母子家庭みたいな感じなんですよ(笑)
——
お店の定休日は木曜と日曜ですよね。
大橋さん
はい、なかなか忙しいですよ(笑)
仕事と育児は・・・
——
ラーメン屋さんってハードってイメージがありますけど、やっぱりきついですか?
大橋さん
そうですね。仕事自体はハードですね〜。

——
思いついたら「即、行動」なタイプなんですね、きっと。
大橋さん
そうかもしれないですね。もともと仕事好きというか、動きたいタイプなので・・・
突っ走りました(笑)
——
なるほど〜。
大橋さん
まあ、働くお母さんはたくさんいますからね〜。

(つづきます)

第2回 長渕さんと家族のこと