もくじ
第1回『朗読が好き』の再発見。 2016-11-08-Tue
第2回声優さんの養成所へ行こう! 2016-11-08-Tue
第3回そして初めてのお仕事は。 2016-11-08-Tue

文章を書くことが好きな人です。
名前を出して文章を書いたり、
名前を出さずに文章を書いたりして生きています。
特技はお箏を弾くこととタロット占い。
沢山ペンネームを持っているので、
色々な名前で呼ばれます。
とても陽気なお姉さんで、
仕事をしながらすぐ歌を歌ってしまうのが欠点。
最近の趣味は、
『ドコノコ』で、
飼っている犬の写真をアップすること。
うちの犬は本当に可愛い。

私の好きなもの「朗読」

私の好きなもの「朗読」

担当・山口じゅり

小学生の頃、大好きだった国語の時間の朗読。
でも私、大人になってから、自分が朗読好きだったことを、
すっかり忘れていました。

26歳の時の手術を契機に、
朗読が好きだったことを思い出したら一直線、
声優さんの養成所へ行き、苦手な運動を克服し、
滑舌の練習から、一見朗読とはまったく関係なさそうな、
人への優しさまで心がけつつ、
文章を読む、ということについて、
まったく何もやってこなかった素人の私が、
今ではラジオCMを読めるまでになりました。

そんなこんなで、
私の大好きな朗読、ナレーションについて書いてみます。
みなさん、ぜひ最後まで読んでみて下さいね。

第1回 『朗読が好き』の再発見。

◆朗読が好きな子ども◆

私がまだ小学生だったころ、国語の時間に、
音読をするのが大好きでした。

自分が心の中で読んでいるように、
自分の感性で文章が読める、
ということが心地よくて好きだったのです。
それに、私は、
文字を読むときにほとんどつっかえる、
ということのない子どもだったので、
音読するたび、先生が、
『つっかえなくてとても上手ですね』
と褒めてくれるのが、子どもごころに、
何だか誇らしくて、嬉しかったのを覚えています。

そう、私は音読・・・・
すなわち『朗読』が大好きでした。
『でした』というのは、私そのことを、
大人になってすっかり忘れていたからです。
 
私が『私って朗読好きだったな』
ということを思い出すのは、
実はその後長い時間が経ってからなのでした。
 
 
◆26歳の夏、朗読が好きだったことを思い出す◆

それは26歳の夏。
私は立っていられないレベルで大変具合が悪くなり、
病院へ行き、その行った先で、
 
お医者さん「あっ・・・・これはちょっと」
「ちょっとなんですか!?」
お医者さん「まずいですね」
 
というやり取りを経て、その一か月後、
がんセンターに入院のち手術、
という事態に陥っていました。
それだけでもおおごとだというのに、

『あのね、手術した場合、
まぁすごく低い確率でだけど、死ぬ可能性あるかも』

とお医者さんに言われ、

「痛いうえに死ぬかもしれないなんて、
手術、憂鬱すぎる・・・・」
 
と手術前夜、私は憂鬱になっておりました。
私は夜、眠る前に考えました。
 
「もし死んじゃったら、私天国で、
これやっとけばよかったなぁ、
って後悔することってあるかな」
 
よく考えると、この時点で、
天国へ行けると確信しているというのが、
我ながら割と神経太いなと思います。
それはさておき、
よくよく考えても、天国で後悔しそうなことは、
特に思い当たりませんでした。
しいていうなら、
私はアイスクリームがすごく好きだったので、
高めのアイスクリームを、
もっと思う存分食べておけばよかった、
ということは後悔しました。
そう、私は今までの人生26年間、
自分がやりたいことを、
全力で好き勝手にやっていたので、
心当たりのある後悔みたいなものが、
あんまりなかったのです。
ここで死んじゃったら、
まぁ道半ば的な後悔はあるにしても、
仕方がないかな~と諦めもつきます。
 
と思いましたが、
よーく考えたらありました。
そう、私は思い出したのです。
 
「子どものころから、本を音読するのが好きで、
ナレーターさんとか、
声優さんになってみたかったけど、
特にチャレンジしてみることもなかったなぁ」
 
私は、自分の好きを、仕事に結び付けがちな人間で、
色々な自分の好きなことを、
いつも何か仕事に結びつくように、
あれこれ考えていました。
つまり、自分の好きな事を、
仕事としてやる、あるいは、あきらめてやらない、
の結論を今まで沢山つけてきたんですが、
そういえば、朗読だけは、
やってみる、ということすら、
考えたことがありませんでした。
あんなに子どもの頃、大好きだったのに、
唯一やるとかやらないとか、
そういうことを全く考えずに、
何もしませんでした。

基本的に私は、物事の白黒をはっきりつけすぎて
「お姉ちゃん・・・・
もうちょっとグレーにしておいてもいいことが、
世の中にはたくさんあるんだよ・・・・」
と妹に言われるほど、
どっちつかずにしない人だったのに、
「そうか、私朗読については、やるもやらないも、
どっちつかずにしたままだったんだ」
とその時はじめて気が付きました。
ちなみに、私の妹が、
私に白黒つけすぎないことを推奨したのは、
私が二十歳そこそこの時の話なので、
今の私はちゃんとグレーもあわせ持つ、
大人レディになりましてよ(笑)。
ほほほ(笑)。

さて、万が一だけどあなた死ぬかもしれませんよ、
と言われて明確になったのは、
『私って朗読が好きだったんだ』
という気持ちと
『好きなら何かしらチャレンジ位すればよかった』
という後悔でした。
そして、
ずっと昔の子どもの頃に、大好きだった朗読が、
15年以上たった今思い出すくらい、
今でも好きだったんだ、
という好きの再発見でした。

◆好きを再発見したものの◆

さて、朗読が好きで、仕事にしてみたかった、
みたいな自分の中にある気持ちを再発見した私。
(あ、病気は治って元気になりました)
再発見したからには、
こう、どんどん何か展開していく・・・・
なんてことにはなりませんでした。
 
再発見の好きだったので、
今まで好きだったものとこう、
なんかちょっと違ったんです。
付き合い方がわからないというか、
しいていうなら
『中学生でできた初彼氏』
みたいな対応になっちゃうんですよ。困りましたね。
お互いに好きってわかって付き合おうってなったけど、
付き合うって何すればいいかわからない、
みたいな状態です。

これがアイスクリームとか、ポッキーとか、
シュガープリッツとか、文章を書くとか、
前から付き合いの長い好きなものだったら、
もう慣れたもんです、相思相愛、
相手も私も付き合い方を了解していますので、
「来週は文章を8000字くらい書いて、
今日はポッキーをお昼代わりに2パック、
アイスクリームは夕飯のあとに食べようかな。
プリッツは1週間後のおやつね♪
みんな大好きだよ♪」
といったようなお付き合いができるんですけど、
朗読に関してはまず何をしたらいいかわからない。
私は発見した好きをもとに、どう動くかを、
先延ばし先延ばしにしていました。
仕事もありましたしね。
忙しいを言い訳にしていたわけです。
 
さて、そうやって先延ばしにしていたある日のことです。
私の仕事場に、男の子を連れて友達がやってきました。

友達「今日は私のお友達の田中君も連れてきてみました」
「あ、田中君もこんにちは。君、何の仕事してるの?」
田中君「声優です」

生まれて初めて職業声優さんというものを見た~~~!!
と、顔にこそ出しませんでしたが、
私は心の中でたいへんにびっくりしました。
そして同時に、
『この子にきけば、朗読の仕事の仕方がわかるかも』
と、大変打算的なことをフル回転で考えました。
 
「た、田中君、君どうして声優さんになったの?」
田中君「実は僕、もともとサッカーやってて、
サッカー選手になりたかったんですけど、
心臓に疾患が見つかって、
それでサッカーできなくなっちゃったので、
もう一つ好きだったアニメの世界で、
仕事したいって思ったからです」
 「すごいな・・・・。
あの、私も声優さんになってみたいんだけど、
どうやってなるの?私でもなれるかな?」
私もド直球にききすぎです。
今考えると、とても失礼な質問だったと思います。
ところがどっこい、田中君はいい笑顔で、
「じゅりさんでも、声優になれますよ」
と言いました。

「ほんとに?」
「なれますよ」
「私、何にも練習したことないし」
「ちゃんと今からやればできますよ」
「まったく若くないし」
「年齢は関係ないです。なれます」
「ほんっとの本当に?声優さんになれる?」
しつこいほど念を押して詰め寄ると、
「ちゃんと練習すればなれます」 
と彼は言いました。

「じゃあ、どうすればいいかな?」
「とりあえず声優さんの養成所にいきましょう」
「養成所とは?」
「要するに学校みたいなところです」
「そこに行けば声優さんになれるの?」
「ちゃんと言われた通り練習すればなれますね」
「ほんとだね?」
「本当です。養成所へ行ったら、
ちゃんと言われた通りに練習するんですよ?」

『田中君、君を信じる』
と私は思いました。
思ったので、
私は養成所の門を叩くことにしたのでした。
次回、私は声優さんの養成所へ行っちゃいますよ~!

(第2回『声優さんの養成所へ行こう!』へ続きます)

第2回 声優さんの養成所へ行こう!