「ほぼ日」の就職論。

面接試験の「本当の」対策。

第2回 聞きたいのは「大切にしてきたこと」

河野 糸井さん、
就職活動、なさいました?
糸井 してない、ですね。
河野 やっぱり(笑)。

いや、僕もほとんどしてないんで
あまり偉そうなことも言えないんですが、
かすかな記憶をたどると
「会社」というものに、
これだけたくさん仕事の種類があるってこと、
ご存知でした?
糸井 知らないですよね。
河野 僕も「会社」には
「営業」があって、「経理」があって、
こうして面接されてるんだから、
「人事」もまあ、あるんだなと。

あとは、メーカーだったら
「開発」という部署もあるだろう。
あ、そうそう「工場」もあるはずだな。

‥‥それくらいの知識ですよね。
糸井 学生のときなんて
それ以上、考えようもないですよね。
河野 そればかりか、そもそも
「この会社は、何をして
 お客さんを喜ばせているんだろう」
ということについて、
深くは分かっていなかったと思うんです。
糸井 ええ、分かってませんでしたね。
河野 でもそこで、
いま僕がやりとりをしている
エグゼクティブの人たちを見てみると
考えかたが、
みなさんとっても「シンプル」なんです。

つまり、自分の会社は何をやって
お客さまを喜ばせているのか、ということが
考えかたの基軸になっているんですね。
糸井 逆に言うと、とっても大勢の人が、
自分の会社は
何をしてお客さんを喜ばせているか、
ということを考えずに
仕事をしている、ということですよね。
河野 目の前に与えられた役割に
一生懸命になるがあまり、
そういうことについて
ぜんぜん分かっていない、ということが
普通に起きているわけです。

「そういえばウチの会社、
 何してるんだっけ」って。
糸井 たとえば、取引先のえらい人の
機嫌を損なっちゃったりして
そればっかりに汲々としてたら、
自分たちが何でお客さんを喜ばせてるか、
なんて、そっちのけになっちゃいますよね。
河野 でも、エグゼクティブになるにつれて、
どんどんシンプルになっていく。

糸井 以前は、河野さんも
新卒の面接をやっていたわけですよね。
河野 ええ、主に最終面接ですね。
糸井 いま、実際に働いている社会人でさえ
そうなんだから
働いたことのない学生さんに
そんなことを聞いても、分からないでしょ。
河野 ええ、もちろん
わかっていて欲しいのですが、
そういう人ばかりではありませんね。

ですから、
本当のことを言っちゃうと
新卒の面接をやる場合、
「君がさ、これまで
 大切にしてきたことって何?」
という、ものすごい
概念的な質問で十分なんですよ。
糸井 ほぉー‥‥。
河野 「本当に大切にしてきたことは何?」
「あるの? ないの?」って。
糸井 うん、うん。
河野 「それは、言葉になってるの?」。
そういうことですね、聞きたいのは。
糸井 その話を聞いているだけで、
わくわくしますね。
河野 ははは(笑)。
糸井 いや、つまり
面接官がそう思ってるんだって知ったとき、
「聞いてもらえた!」という嬉しさと、
「やばい、聞かれた!」というあせりと
どっちかの反応しか、ないですよね。
河野 はい。その場面では、
すごい答えなんて期待してないんです。
でも「やばい、聞かれた!」と
悲しそうな顔をした人は採用できない。

だけど、そこで、
嬉しそうに話をしてくれる人は、
あ、仲間になれそうかな、と思える。
糸井 うん、うん。
河野 嬉しそうに目をぐるぐるさせながら
考えてくれる人も、
すっと答えられる人もいるんだけど、
本当のことを言ってるかどうかは、
きちんと伝わりますからね。
糸井 そこは、わかるもんなんでしょうね。
バッターボックスに立ってる数が
違うわけですから。
河野 だから、お辞儀の角度がどうだとか
そういうことは、
ほんっとに、心の底から、どうでもいい。

そんなことで落とす会社があったら
むしろ入らなくてホント良かったね、と。

何をどれだけ大切にしてきたか、ということを
こちらに伝えてくれるかどうか、なんです。
糸井 つまり、この人と一緒に
仕事をやりたいと思えるかどうか。
河野 それにたいする答えだって、
ぜんぜんたいしたことじゃなくていい。

サークル活動なんかでも
俺、主将じゃなかったからなぁなんて
考える必要はない。

たとえば、
サークルを辞めそうになった人を、
引き止めた。
これ、素晴らしいことじゃないですか。
糸井 ええ、素晴らしいですね。
河野 あるいは、高校生までウソつきだったけど、
大学生になってからは
とにかく愚直に、目立ちはしなかったけど、
ウソをつかずにやってきた。
できるだけ、誤魔化さないようにしてきた。

これって、答えとして全然OKですよね?
糸井 はい、全然OKです。

<続きます>
2007-04-09-MON
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