第13回 高平さんのおすすめは、続く‥‥。

高平 マイルス・デイヴィスの『バグス・グルーブ』。
 
MILES DAVIS『Bags Groove』
MILES DAVIS『Bags Groove』
ユニバーサル
権利者の許可を得ずに複製することを禁じます。
高平 このセッションのときに
マイルスとモンクがケンカしてるって
エピソードがあるんだよ。
── ケンカしながらレコーディングですか!?
高平 うん、マイルスが
「オレがラッパのソロを演奏しているときは
 ピアノを弾くな!」ってさ、
モンクに注文をつけたらしいとか、なんとか‥‥。
 
── それで、険悪な雰囲気に?
高平 まぁ、そういう逸話が
語り継がれるほど、名盤とされているんだよね。

なにより、メンバーがすごいし。
── えっと、たとえば‥‥?
高平 トランペットはマイルスでしょ。
テナー・サックスには、ソニー・ロリンズ。
ピアノは、ケンカ相手のモンクと
ホレス・シルヴァー、
ドラムはケニー・クラーク‥‥。
── そうそうたるメンバーなわけですね。
高平 うん、いわゆるオールスターセッションだよね。
モダン・ジャズの名盤。

それと、この
マックス・ローチの『ウィ・インシスト!』。
 
MAX ROACH『We Insist! Freedom Now Suite』
MAX ROACH『We Insist! Freedom Now Suite』
Candid
高平 これ、なんで
「オレたちは主張する!」っていう
タイトルかって言うと‥‥。
── 「ウィ・インシスト!」、ええ。
高平 まぁ「ジャズ」って、ひとつにはさ、
人種差別にたいする黒人たちの抵抗というか、
怒りの表現でもあったわけだ。
── はい。
高平 で、その抗議行動のひとつである
「シット・イン」の光景を模したのが
このアルバムジャケットと
タイトルだって言われてるんだよね。
 
── ははぁ‥‥それで「オレたちは主張する!」と。
高平 ビル・エバンスも入れとこう。
植草(甚一)さんも、好きだって言ってたやつ‥‥。
 
BILL EVANS/JIM HALL『UNDERCURRENT』
BILL EVANS/JIM HALL『UNDERCURRENT』
EMI ミュージック ジャパン
高平 ああ、これだこれ、『アンダーカレント』。

『ポートレイト』とか、
『ビレッジ・バンガード』とか、
ほかにも、たくさんいいアルバムがあるけど‥‥
俺は、このジャケットが好きなんだよなぁ。
── 天才ピアニストと呼ばれた人ですよね。

じゃ、高平さん、リクエストしてもいいですか?
ボーカルが入ったやつで
おすすめのものが、なにかありましたら‥‥。
高平 文句なくすごいの、あるよ。

コルトレーンが
ジョニー・ハートマンとつくったやつ。
 
JOHN COLTRANE/JOHNNY HARTMAN 『JOHN COLTRANE AND JOHNNY HARTMAN』
JOHN COLTRANE/JOHNNY HARTMAN
『JOHN COLTRANE AND JOHNNY HARTMAN』

ユニバーサル
権利者の許可を得ずに複製することを禁じます。
高平 これ、ほんとに、かっこいい。気持ちいいしね。
1曲目の「They Say It's Wonderful」なんて最高。

ボーカルもののアルバムとしては
とくにおすすめだし、
見開きの紙ジャケットもイイんだよ、これが‥‥。
── ふん、ふん。
高平 あとね、
絶対はずせないのがアート・ブレイキーだよね。
── あ、60年代当時、高校生だったタモリさんを
ジャズに目覚めさせたという、
アート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズですね!
 
ART BLAKEY『Moanin'』
ART BLAKEY『Moanin'』
Blue Note
高平 アート・ブレイキーといえば、
「モーニン」と「チュニジアの夜」と‥‥
「ブルースマーチ」なんかが、代表曲。

で、この3曲が入ってる
『サンジェルマン・デュプレ』ってアルバムが
日本でもいちばんよく売れたんだ。

‥‥でも、それを検索したらさ、
2枚組で5,000円もするっていうから、やめた。
── より、リーズナブルなものを
おすすめして下さってるわけですね!
高平 だから、今回、選んだのは
ブルーノート盤の『モーニン』。

おそらく、日本にモダン・ジャズを
最初に根付かせたのが、彼ら。

‥‥昭和20年代の終りぐらいかな?

当時は「黒い旋風」とかって言われてたね。
── 日本で大ヒットしたとき、
そば屋の出前の人までが
「モーニン」を歌いながら自転車をこいでいた、という
「そば屋のモーニン」伝説を聞いたことがあります。
高平 うん、もちろん日本だけじゃなくて
パリなんかでも
ものすごくモダン・ジャズが流行ってね。

トリュフォーだ、ゴダールだって
ヌーベルバーグの旗手だった人たちがみんな、
モダン・ジャズを好きになっていったんだ。

たとえば、そうだなぁ‥‥ルイ・マル監督の
『死刑台のエレベーター』っていう映画なんか、
なかでも、有名な作品だよね。

そうそう、それとさ、
ジョン・コルトレーンとかも、挙げとかなきゃな‥‥。

ほら、日本でも流行ったでしょ?
あのJRかなんかのCMで、
「そうだ京都、行こう」なんてやつでさ‥‥。
 
  ‥‥と、こうして
高平さんの「はじめてのJAZZ」CD講座は、
このあとも
日付が変わるくらいまで続きました。

残念ながら、この連載では
すべてを詳しくご紹介することはできそうにないので、
残りのぶんは、
最終回の明日、まとめて掲載いたしますね。

どうぞ、おたのしみに!
<続きます>
 
今回、高平哲郎さんにお聞きした
おすすめCD取材のようすは、
HMVさんの特設ページでも
HMVバージョンとして掲載されています。
「ほぼ日」バージョンとは
またちがった編集をしておりますので、
どうぞ読みくらべてみてくださいね。
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2007-11-22-THU