| ほぼ日 |
「テレビ人・伊丹十三」の時代がありまして、
それから伊丹さんは、映画の世界に行かれました。
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| 佐藤 |
うん、そうだね。
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| ほぼ日 |
師匠は「映画をやるんだ」というお話を、
伊丹さんからどのようにうかがったのでしょう？
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| 佐藤 |
いちばん最初の映画『お葬式』の前にね、
別な話があったんですよ。
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| ほぼ日 |
『お葬式』の前に別な企画が。
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| 佐藤 |
ええと、あれはなんてタイトルだったか‥‥
あ、そうそう、『イエスの方舟』。
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| ほぼ日 |
『イエスの方舟』。
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| 佐藤 |
その話を聞いたんだけどね、
僕にはその、僕には何の興味もなかったんですよ、
その『イエスの方舟』っていうことに。
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| ほぼ日 |
はい。
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| 佐藤 |
まあ、その企画はなくなったんですけど、
その次にきたのが、
『侘助たちの秋（わびすけたちのあき）』
っていう台本だったんです。
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| ほぼ日 |
『侘助たちの秋』。
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| 佐藤 |
「ちょっとこれ読んでおいてよ」って。
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| ほぼ日 |
伊丹さんから。
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| 佐藤 |
うん。
でも、何ていうんだろうな‥‥
映画を撮るっていうのは、
僕の土俵じゃないところで仕事をするわけで。
それがやりたくなかったんだな、結局。
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| ほぼ日 |
はい。
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| 佐藤 |
テレビと違って、映画は、
個人プレイがあまりできないから。
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| ほぼ日 |
そうでしょうね、大勢のチームワークで。
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| 佐藤 |
僕は自由に撮れる仕事が面白いと思って、
伊丹さんと付き合ってるわけですから‥‥。
そこが、ちょっとね。
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| ほぼ日 |
なるほど。
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| 佐藤 |
ま、伊丹さん自身も、
佐藤と組むとうるせえって
思ってたと思いますよ（笑）、多分ね。
僕は何でも「はい、はい」とは言わないから。
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| ほぼ日 |
はい（笑）。
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| 佐藤 |
だから、台本が来たっていう段階までで、
その話はなくなりましたね。
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| ほぼ日 |
どんなお話だったんですか？
その『侘助たちの秋』というのは。
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| 佐藤 |
だからそれは『お葬式』ですよ。
『お葬式』のこと。
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| ほぼ日 |
え？ 映画の『お葬式』？
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| 佐藤 |
そう。
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| ほぼ日 |
ああ、最初はそのタイトルだったんですか。
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| 佐藤 |
あれは、主人公の名前が「侘助」ですから。
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| ほぼ日 |
あー、そうかぁ。
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| 佐藤 |
そうです。
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| ほぼ日 |
なるほど。
では、伊丹さんが映画監督になってから、
いっしょにお仕事は？
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| 佐藤 |
やりましたよ。
映画のメイキングはずいぶんやりました。
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| ほぼ日 |
あ、メイキング！
『タンポポ』のメイキングとか
すごく面白いですよね。
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| 佐藤 |
あれが初めてですね。
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| ほぼ日 |
へえー。
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| 佐藤 |
浦谷（年良）のアイデアですね。
あれは楽しかったね、好きにしていいから。
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| ほぼ日 |
そうでしたか、あれは師匠が。
撮影現場での伊丹さんは、
どんな感じだったんでしょう？
やはり、厳しい方で？
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| 佐藤 |
そりゃそうだけど、でも、
誰かを怒ったことは、あまりないなあ。
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| ほぼ日 |
へえー。
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| 佐藤 |
誰かに対して厳しくするんじゃなくて、
自分を鍛えるのが好きな人なんだと思う。
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| ほぼ日 |
ああ。
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| 佐藤 |
当時のＡＤにもね、怒ったりはしないけどさ、
「もっと面白がらないとだめだ」
っていうのは、よく言ってましたよ。
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| 佐藤 |
面白がる。
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| 佐藤 |
ちゃんと達成感を持てるように、
テーマや目標を自分で決めろ、と。
どんなことでもいいから。
たとえば弁当配りでも、
「今日は誰よりも早く弁当を配る」とかね。
「今日いちにちは明るく挨拶してみよう」とか。
目標の設定と達成感が大切なんだ、と。
だから、あの人自身もさ、
しょっちゅう禁煙をやるわけ。
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| ほぼ日 |
しょっちゅう（笑）。
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| 佐藤 |
そういうことが好きな人なの。
「今日いちにちは煙草をやめてみよう」ってね。
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| ほぼ日 |
常に目指すものがほしかったのでしょうか。
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| 佐藤 |
目指すというか、
自分を律することが好きだったんでしょう。
伊丹さんらしいと思いますよ。
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| ほぼ日 |
律することは、伊丹さんらしい。
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| 佐藤 |
うん。
だって、いっぺんコマーシャルにね、
あの、ほら、あったじゃないですか、
「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい」
っていうコマーシャル。
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| ほぼ日 |
はい、ありましたね。
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| 佐藤 |
伊丹さんは、あのコマーシャルに怒ってた。
あれは憎んでましたね（笑）。
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| ほぼ日 |
憎んでた（笑）。
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| 佐藤 |
「わんぱくでもいいとは何だ！」って（笑）。
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| ほぼ日 |
わんぱくっていうのは、
「いうことをきかない」わけですからね。
「律する」とは、たしかに真逆です。
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| 佐藤 |
「たくましく育て、はまあいいけど、
わんぱくでもいいって、何だ！」
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| ほぼ日 |
（笑）
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| 佐藤 |
そんなに怒るこたあねえじゃねえかって
思うんですけど（笑）、
まあ、そういうことを言う人でした。
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| ほぼ日 |
へえー。
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| 佐藤 |
ただ、ああ見えて繊細ではあったよね。
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| ほぼ日 |
繊細。
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| 佐藤 |
うん。
それを気取られるのが嫌だっていうか、
たとえば閉所恐怖症だったりするわけ。
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| ほぼ日 |
へえー。
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| 佐藤 |
意外でしょ？
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| ほぼ日 |
意外ですね。
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| 佐藤 |
そうは見えないじゃない。
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| ほぼ日 |
ええ。
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| 佐藤 |
ふたりで長い時間、
飛行機に乗ってるとわかるんだ。
気取られないよう、ずーっと寝てたりするの。
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| ほぼ日 |
ああ。
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| 佐藤 |
繊細でね、乱暴なのが嫌いなんだ。
野卑っていうの？ 野蛮とか。
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| ほぼ日 |
はい。
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| 佐藤 |
そういうのがものすごく嫌なんだ、
伊丹さんは。
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| ほぼ日 |
そうでしたか。
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| 佐藤 |
うん。
‥‥そうか、もう12年か。
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| ほぼ日 |
‥‥‥‥はい。
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| 佐藤 |
‥‥‥‥うん。
まあ、こんなところですかね。
勝手にしゃべっちゃったけど、まとまりますか。
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| ほぼ日 |
それはもう。
ありがとうございました。
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| 佐藤 |
うん。
じゃあ、またね。 |
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（おわります） |
