イベント「活きる場所のつくりかた」より
ライさんジョシさんのおはなし
僕たちが故郷に学校をつくったわけ
~国に恩返し~
第2回
君たち、クレイジーじゃないかな?
ジョシ
私たちが大学4年生だったころ、
なにかをやりたいという気持ちが
心の中にあったのですが、学生だったこともあり、
能力も経験もなくて、
どこからはじめたらいいか、知りませんでした。
大学院に入って東京に出て、いろんな方々と出会い、
いろんなアイデアが出てきました。
2011年の最後のころです。
ライ君のふるさとの地域で、
こんな学校をスタートしました。
学校は、30万円で設立しました。
インフラも整っておらず、
雨が降ったら学校が休みになるような校舎でした。
設立当初は、ただひとりの先生と14人の生徒たちが
学校に所属しました。

いろんなところからサポートが
少しずつ来ました。
さらにあきらめずに行動した結果、
いまは、先生の数は8人になりました。
生徒たちの数も、108人ぐらいになっています。
ライ
3年間ほど、この寺子屋のような建物で
授業をすることになりましたが、
2014年、新しい校舎を建てるための
寄付をいただくことができました。
 
現在、YouMe小学校は、新校舎を建てており、
9つの教室があります。
そしてこれが、私たちの
YouMe小学校の生徒です。
 
いまは保育園の3クラスから、
小学4年生までの生徒がいます。
そのうち、両親がいなくて
学校に行きたくても行けない、など
経済的な理由から
奨学金をもらっている子どもは16人です。
毎年1学級ずつアップしていって、
2019年までには高校3年生までの生徒が
在籍するようにしたいと思っています。

なぜ高校までつくらないといけないかといいますと‥‥
それはつまり、無責任なことになるからです。

いま、4年生までの子どもを預かっていますが、
私たちが5年生からは預からないことにすると、
その子たちは5年生から
政府の学校に行かなくてはなりません。
6年生でやめても、中学2年生でやめても同じです。

いま、私たちは108人の子どもたちの命を
預かっているわけです。
そんなに簡単に、私たちが彼らを捨ててしまうことは
絶対にだめです。
この子どもたちの面倒をずっと見なくてはいけない。
ですから、私たちは高校生まで在籍できるように
学校を大きくしたいと思っています。
 
現地では学校運営会も、保護者の会もあります。

私は日本の小学校と中学校で
英語の講師として1年間働いた経験があります。
そのとき、日本の教育の制度のすばらしさに
感動しました。
大きいもので、3つあります。
日本人にとっては当たり前なんですけども、
ひとつは「時間を守ること」。
会場
(笑)
ライ
みなさん笑いますけれども、ネパールでは
ちっちゃい2歳の子どもから大統領まで、
誰も時間を守らないんです。
だからもし、このYouMe小学校で
子どもたちと先生が時間を徹底的に守ったら、
それは奇跡と言われるでしょう。

日本で感動したことのふたつめは、
「約束を守ること」です。
ネパールでは、言うこととやることと考えることは
全部違いますので。
会場
(笑)
ライ
最後は、これです。
「自分の学校を自分で掃除すること」。
生徒たちが掃除するのは、
日本だけの文化だと思います。
だからぼくたちの学校では、子どもたちが
学校を掃除することにしました。
ジョシ
日本で学んださまざまなことを活かして
ネパールで学校をつくりましたが、
まだ、学校のシステムを
完成させたわけではないんです。
そのため、現在も日本で
いろんな活動をしております。
例えば、日本の小学校や中学校に行って、
教育制度をもっと深くまで勉強しています。
さまざまな異文化交流に参加し、
日本の友達と一緒に
いろんなプログラムを実行しています。
東京にある早稲田塾と、
YouMe Nepalがコラボレートした活動では、
進学決定者たちが社会貢献できるように、
ラブレタープロジェクトをはじめました。

さらに、日本の高校生たちが、
ネパールにあるエベレストの高さと同じ、
8,848本のを目標に鉛筆を集め、
ネパールの子どもたちに贈る活動もしました。
ネパールの大使を早稲田塾にお呼びして
ネパールについての特別な講義もやりました。
いろんな高校に行って、
ネパールのことを教えたり、
日本人の高校生たちと
ディスカッションをしたりしています。
ライ
これからのチャレンジは、3つあります。

まず、ひとつめ。
YouMe小学校はこれから
中学や高校も含めることになります。
そこに行くまでに、この学校が経済的に
寄付金に頼らないようにすること、
つまり、自立することです。

そして、ふたつめは、
奨学生たちのために、
日本や海外で、里親を見つけることです。

最後の目標は、先生のこと。
YouMe小学校は、英語基準の学校です。
ネパール語以外の科目は、
すべて英語を使って授業をしております。
しかし、英語のできる先生がいても、
あんないなかには、なかなか行きたくないです。
もし行っていただいても、
英語で授業をできる先生には、
本来なら3倍ぐらいの給料を
払わないといけないのです。
ですから、英語をできる先生を見つけて、
学校に連れていくことは大きな課題です。

2016年10月までに、
まず2校目の学校を建て、
そしてカトマンズで、
先生たちのために研修センターをつくりたい。
教育の質は先生たちの研修による部分が
大きいですから。
そうして、YouMe小学校の
教育の質を高めていきたいと思っています。

もしいま、2024年だとしたら‥‥、
私たちはもう8校の学校を持っているでしょう。
そして8,000人の学生たちに、
教育を提供しているでしょう。
ということは、8,000人の子どもたちの
将来をつくっていることになります。
私たちは、ネパールで教育革命を起こしている。

それを想像しております。

「君たち、クレイジーじゃないかな?」
と思われるかもしれないんですけど‥‥
やっぱり私たちはクレイジーだよね。
会場
(笑)
ジョシ
はい。それが私たちの夢です。
ライ
ひとつの人生なので、
夢を持つんだったら
でっかい夢を持ったらいいんじゃないかな、
と思っています。
日々楽しみながらがんばっております。
ジョシ
ネパールの若者たちは高校に入らずに
中東の国々に行きますが、
エリートの一部の人たちは、
アメリカの優秀な大学に留学したり、
日本の大学に入ったりします。
問題は、外国で学んで卒業しても、
外の国で働いて
ネパールには戻らないことです。
これは、ネパールのひじょうに大きな問題に
なっています。

もし私たちのように、いい機会をもらって
ここまで勉強をつづけることができた人たちが、
彼らが身をおくようになった社会から
ネパールのために自分ができることをはじめたら、
どうなるでしょう。
「政府が私たちになにもしてくれない」
という言葉を言う必要がなくなるのかもしれない、と
思いました。

ちっちゃな行動でも、なにかをスタートしましょう。
ということで、スタートしました。
ライ
はい、ご清聴ありがとうございました。
(第3回のトークにつづきます)

2015-05-28-THU