HubSpot & ほぼ日刊イトイ新聞

Unusual 2 IT'S A GREAT DAY その日は、すばらしい日

ボストンにある新進のマーケティング会社、
HubSpot(ハブスポット)を糸井が訪ねたのは
6年前のことでした。

その会社の創業社長であるブライアンと
役員を務めるデイヴィッドが
グレイトフル・デッドというロックバンドから
経営を学ぶという本を出版し、
糸井がそれに共感したことがきっかけでした。

そこではなぜか「ほぼ日」が取材され、
「Unusual(変わってる)!」って
ふたりに驚かれたりしました。
そして今年、HubSpotの東京支社がオープン。

かつて東京で働き、日本にとても思い入れのある
ブライアンとデイヴィッドが
久しぶりに日本にやって来ました。

6年振りに語られたのは、やはり会社のこと。

起業について、成長について、
そして、すばらしい日について‥‥。

3人は生き生きと語り合いました。

プロフィール

#6

すばらしい日

糸井
スタートアップに対して
環境が整っているとはいえない日本ですが、
そこに、ハブスポットは支社をつくりました。

いま、どういうビジョンを持っていますか?
ブライアン
日本の市場にハブスポットが参入するというのは
すごくおもしろいことだと思っています。

ハブスポットの基本的な事業というのは、
小さい会社がインターネットをつかって
安価に広くPRをすることで事業を拡大するときに、
そのお手伝いをすることなんです。

この、上位の会社にほとんど変化がなく、
世界のトレンドと無関係に見える日本で、
「寺尾」のような小さい会社が
大きな会社を倒すために役立つことができるか。

そこは非常におもしろいなと思います。

糸井
ハブスポットに「ほぼ日」のPRを
お手伝いしてもらえることもあるのかな?
ブライアン
もちろんあると思いますけど、
こちらが学ぶことのほうが多いと思います。
糸井
いやいやいや(笑)。
ブライアン
まじめにお答えすると、
あまり合わないだろうとは思います。

というのも、お話ししたように、
私たちは基本的に「B to B」の会社の
お手伝いをするようなサービスなので、
「B to C」でやってらっしゃるみなさんに
どれほどお役に立てるかというのは、
正直、よくわからないですね。
糸井
おっしゃることはよくわかります。

ただ、ぼくらも少し仕事が変わってきてます。

「B to C」であることは変わらないんですが、
規模や質の異なる仕事もはじまっていて。

かんたんにいうと、これまでぼくらが
やってきたことというのは、
大きくなること自体を
目的にしてはいなかったんです。

「ほぼ日」にしても、「ほぼ日手帳」にしても、
増やすこと、広げること自体が目的じゃない。

でも、今年、「ドコノコ」という
犬や猫を登録するアプリをつくったんですけど、
これは、広げれば広げるほど可能性が大きくなるし、
性質からいっても、もっと広げたいんですよね。

それこそ、世界中の人を相手にしたい。
ブライアン
ああ、なるほど。

いま、どのくらいの数が出ているんですか?
糸井
ダウンロード開始から3ヵ月で7万人くらいです。

(※12月現在、10万人を超えました)

ブライアン
スタートとしては悪くないですね。
糸井
まったく悪くないんです。

でも、もっと広がってほしいんですよね。
ブライアン
(アプリの説明を聞きながら)
まず、ダウンロードしてみますね。

ぼくも犬を飼っているので‥‥。
糸井
「わかった、寺尾に任せとけ!」
と言ったと、ぼくには聞こえました。
一同
(笑)
ブライアン
ハッハッハ。
糸井
じゃあ、最後に、いまここにいる人から
質問を受けようかな。

‥‥あ、日経BPの竹内さんがいますね。
竹内
よろしくお願いします。

ハブスポットは2年前に
ニューヨークで上場されたんですけども、
糸井さんも会社の上場を
目指しているとうかがっています。

先に上場した立場から、
これから上場しようと考えている糸井さんに、
なにかアドバイスやメッセージが
ありましたら、お願いします。
糸井
あー(笑)。
ブライアン
おもしろいですね(笑)。
デイヴィッド
おめでとうございます。
糸井
まだです、まだです(笑)。

ブライアン
それでは、私から‥‥。

株式公開した日はすばらしい日で、
私はいまだにそれを鮮明に憶えています。
糸井
へぇーー。
ブライアン
ニューヨーク株式取引所に行くんですが、
セキュリティの都合があって、
建物の前には停車できないんですね。

それで、ちょっと通り過ぎて
角を曲がったところで車から降りた。

共同創始者のダーメッシュといっしょに
株式取引所に向かって歩いて、
角を曲がって、建物を見上げたときに‥‥
私はそこで泣きだしてしまった。
糸井
はーー‥‥。
ブライアン
その2日後に社員といっしょに
会社でパーティーをしたんですけど、
そのときも、みんな泣いていた。

ですから、アドバイスとしては、
その日が来たら、ぜひお祝い会を盛大にやって、
みんなでよかったねと言って
感動を分かち合うといいですよ。

糸井
‥‥いや、驚きました。

上場することについて、こんなに、
絵本のようなことを言ってくれた人は、
はじめてです。
ブライアン
すばらしい体験でしたよ!
糸井
いや、ぼくが株式公開を目指しているというと、
いろんな人がいろんなことを言うんですが、
たいてい、こういう難しさがあるとか、
そもそもなぜするんだとか、
まあ、もちろん親身になって
真剣に言ってくださるんですが、
よいことはほとんど言われない(笑)。

ほんとうに、よい思い出として
物語のように語られたのはいまがはじめてですよ。

まるで「ぼくが結婚したあの日は‥‥」
みたいな語り方だったじゃないですか。

一同
(笑)
ブライアン
結婚はまだしたことがないんですけど(笑)、
でも、たぶん、そういうことだと思います。
糸井
ああー、びっくりした。

こんな素敵なことを言ってくれる日本人は
たぶん、これからもいないと思いますよ。
ブライアン
私も、アメリカで、
糸井さんと同じように言われましたよ。
糸井
ああ、そうでしたか。
ブライアン
はい。でも‥‥すばらしい日でした。
糸井
そうですか。

いやぁ、そうとう驚きました。

驚きましたし、うれしかったです。

車をおりて、見上げたとき‥‥かぁ。

これは‥‥夢を見るかもしれない(笑)。
ブライアン
何年もがんばってこられたんだから、
その日ぐらいは
お祝いされてもいいんじゃないですか。
糸井
そうですね。

いまの話を聞いたら、
毎日お祝いしてもいいくらいです。
一同
(笑)
糸井
いやぁ、どうもありがとうございました。

なんというか、このタイミングで
ハブスポットのおふたりと会えたというのは、
なにかあるような気がします。
ブライアン
よかった。
デイヴィッド
これから、ハブスポットがどうなるのか、
そして、ほぼ日がどうなっていくのか、
たのしみですね。

糸井
たのしみです。

どうもありがとうございました。
一同
(拍手)

(ハブスポットのおふたりとの話はこれで終わりです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました)

2016-12-15-THU