あのひとの本棚。
     
第21回 タムくんの本棚。
   
  テーマ 「影響を受けた日本のマンガ5冊」  
ゲストの近況はこちら
 
マンガじゃない普通の本も読むんだけど、
それはタイの本なので、やっぱり日本の作品がいいかな
と思って選んだら、ぜんぶマンガになりました。
タイでは日本のマンガがたくさん出ているんです。
もちろんタイ語に翻訳されて。
日本のコミックス、好きです。
ぼくが影響を受けた日本のマンガを5冊、紹介します。
   
 
 

『虹色
とうがらし』
あだち充

 

『学校怪談』
高橋葉介

 

『ゴン』
田中政志

 

『ボンボン坂高校
演劇部』
高橋ゆたか

 

『火の鳥』
手塚治虫

 
           
 
   
Amazonで購入
  『火の鳥』(全17巻)手塚治虫
講談社 /561円(税込)
 

手塚治虫さんの、とても有名な作品ですね。
これは全体的にアイデアが好きで、
ぼくはそのアイデアの部分で影響を受けました。



最初にこのマンガを読んだときは
ぜんぜんおもしろいと思わなかったんです。
1巻と2巻あたりは、「ふーん、むずかしいね」。
で、3巻くらいで「何これ!?」みたいな。
いろんな時代に行っちゃうし。
そのあとは‥‥もう‥‥。
いちばんヤバイのはあれかもしれない、
ちがう星に行っちゃったこと。
ああ、そうそう、『未来編』。
もう地球はなくて、ちがう星になっちゃってる。
どんどん大きな話になっていくんですね。

あと、死んでからまた生まれるとか、
テーマのポイントがいいんですよね。
「不老不死って、本当にいいことかな?」とか。
すごく深いポイントがある。
「ふつうに死ぬのがいいじゃん?
 だって死ななかったらやっぱりたいへんだよ」
そうやって考えさせられるところが、とてもいい。

「時間や世界を行ったり来たりする」ことと、
「深く考えさせるポイントを表現する」っていうのは、
すごく影響を受けています。
いまぼくが描いている『ブランコ』もそういうアイデア。
時間の表現なんかは、とくにそう。



『火の鳥』っていうのは未完の作品で
最後まで終わっていないんですが、
それとは違う理由で、ぼくは最後まで読んでないんです。
たしか9巻くらいまでしか読んでない。
なぜかというと、
そのくらいまでしかタイでは出版されていないから。
このマンガは字が多いでしょう?
そして内容も日本の昔のことばがあるし、むずかしい。
だから、むずかしいから、
訳すのに時間がかかっているんじゃないかな。
はやく読みたいですね、未完でも、最後まで。

   
Amazonで購入
  『ボンボン坂高校演劇部』(全12巻)高橋ゆたか 集英社 /390円(税込)
 

日本のマンガを紹介しているんですけど、
じつはぼく、そんなにマンガを読む人ではなくて
タイでは普通の本を読むほうが多いんです。
いろんなマンガを読むタイプじゃなくて、
これは要らないっていうのには手を出さない。
でも、好きになったマンガは
繰り返して何度も読んじゃうんです。

この『ボンボン坂高校演劇部』は
なんか不思議に5回くらい読み返しました。
ギャグマンガですね。
なんにも考えなくていい、悩まなくていい、
軽く読めるギャグマンガ。
あの、ラムちゃん‥‥『うる星やつら』みたいなの
ああいうのは何と言いますか?
‥‥ああ、そう、学園ラブコメですね。



やっぱりぼくは、登場人物の性格を好きになるのかも。
このマンガは、みんなハッピー。
ぜんぶのキャラクターが好きです。
女の子もかわいいし、
こまかいことだけど、手とかすごいきれいで(笑)。
みんな、すごい普通でいい。
‥‥ああ、でも普通じゃないキャラクターもいます。
「徳大寺ヒロミ」っていう演劇部の部長。
このマンガはいちおう演劇部の話だからね。
すごいんですよこの部長、ものすごい演技力。
男性なのに「女優」で、
人間とは思えない演技力。
もう、何でも演じる。液体とか気体も演じちゃう(笑)。
強くてたのしい、そして意外といいヤツ。

これは日本語の言葉遊びが多いですけど、
タイ語で読んでもすごくおもしろかったです。
笑える。
ほんとに気軽に読めるし。
だから、今回ぼくは5冊のマンガを紹介してますけど、
もしもどれかを読んでみようと思ってくれるなら
ぜひこれを最初に読んでください。
かなりおすすめです。
ハッピーで、笑えるから。

   
Amazonで購入
  『ゴン』(全7巻)田中政志 講談社/530円(税込)
 

これ、いいですよ。
ちっちゃな肉食恐竜が主人公で、こいつがすごい。
すごく強いんです。

でも、このマンガのいちばんの特徴は、
セリフがひとつもないっていうこと。
ぼくはこれ、高校生のときに読んだんですけど、
セリフがないマンガなんか読んだことなかったから
やっぱり「新しい」って思いました。
セリフがないのに‥‥
というかセリフがないからこそ、
登場する動物の性格とかが、すごくよく伝わってくる。
それは、絵のパワーがあるからだと思います。
すごいパワフル。
絵の力が表現してるから、セリフが必要ない。



最初にも言ったけど、
主人公のゴンがすっごい強いんです。
ちいさいのに、すっごく強い。
自分より何倍も大きな動物をやっつけちゃう。
でもね、激しくはないと思う。
なんていうのか‥‥ゴンはいつも真剣。
その真剣さがいいんです。性格がおもしろい。
やさしいし。
‥‥ああでも、
やさしいけど、ときどき超ひどい(笑)。
悪いやつを、ものすごくやっつけちゃうからね。
それはすごいよ。超ひどい(笑)。



これ、ほんとにいいんですよ。
なんか、世界が広くて‥‥。
ゴンがいろんなものに出会って
成長していくところもいいんです。
終わりかたも感動的。
もう、ピュアっていう感じ。
で、たのしい。
笑ってる。
(取材の場にいる人々に)ねえ、みんな読んだことある?
え? ないの? 最高だよ?
かんぺき。
読んでください(笑)。

   
Amazonで購入
  『学校怪談』(全8巻)高橋葉介 社 /690円(税込)
 

こんなものを初めて読んだんです。
すごく影響を受けたマンガで、
大学生のころにこれを読んで、
ぼくもマンガを描こうと思いました。

短い話がたくさん入ってるんですけど、たとえば‥‥
登場人物が一度死んじゃうのにまた出てくるみたいな。
え? なんで死んでからまた出てくるの?
って読みながら驚くんだけど、
ああ、まあ、それでもいいじゃんって思えてくる話とか。
それと‥‥途中で終わっちゃったりするんですよ。
まだ話の途中なのにフッと終わって、
それがなんだか不思議なきもちにしてくれて、
ああ、こんな終わりかたもあるんだあ‥‥とか。



新しいと思ったんです。
こんなの読んだことがない。
すごい! こういうのもあるんだ! って思って。
それで、こういうのならぼくも描けるかな、と。
いつも日本のマンガって、すごく長いじゃないですか。
あんなに長いのはとても描けないと思ってました。
でも、これはひとつの話が8ページくらい?
もうちょっとあるのかな?
とにかくすごく短いし、文字もすくないし。
そういうのなら描いてみようかなって思えたんです。
ちょうどそのころ、
変なエレクトロニクスの音楽を聴いていて、
マンガでも音楽でも新しいものに触れて
ぼくも「何かやろう、何かやりたい」という気持ちでした。
だからそう、すごく影響が大きい一冊なんです。

『学校怪談』というタイトルだから、
怖い話がたくさん入っているんだけど、
なんかね、ぼくはこれ、あんまり怖くない(笑)。
怖いって感じじゃなくて、夢みたいな感じ?
夢みたいに、もう、消える。
だから、残った気持ちがあまり怖くないんです。
怖い話だけじゃなくて、
けっこうやさしい話もたまに出てくるし。
「なんか感動するじゃん」みたいな(笑)。
急に恋愛の話とか入ってるから、びっくりしますよ。

   
Amazonで購入
  『虹色とうがらし』(全6巻)あだち充
小学館 /610円(税込)
 

あだち充さんの作品が好きで、ほとんど読んでいます。
なかでもいちばん好きなのが、これ。
ほかのはだいたいスポーツの話が多いでしょ?
野球とか、ぼくはルールがあまりわからないし。
これは、もう、普通。とても普通のお話。
設定は、ええと‥‥サムライ?
ああ、江戸。そう、江戸っぽい。
でもね、1巻のいちばん最初に書いてあるんです。
「これは未来の話です」って。
描いてある世界はあきらかに江戸時代なんだけど、
それは「地球によく似た星でのお話」なんですよ。
よくわからないでしょ?(笑)
だから、設定が重要なマンガではないと思うんです。
ぼくは江戸のルールもよく知らないので
設定を気にしないで読みました。
それでも十分、すごくおもしろかったです。

このマンガをぼくは5回くらい読み返してるんですけど、
どこがおもしろいかというと‥‥
それはやっぱり雰囲気が好きなのかも。
この雰囲気に、ぼくは影響を受けていると思います。



7人の兄弟がいて、その兄弟の関係が
すごく、いい。やさしいんです。
7人の兄弟は、落語家とか発明家とか忍者とか、
ファイアーマン‥‥? そう、火消しとか。
その人たちは、お母さんが違う兄弟なんだけど
とても仲がいい。
みんなが仲よくてやさしくて、
そういう雰囲気が大好きですね。

あだち充さんのマンガで好きなところは、人と人の関係。
『タッチ』『ラフ』も友だちとか仲間とか、
その関係に感動するし、読んでいてしあわせになれるんです。
で、いちばんしあわせになるのが『虹色とうがらし』。

あだち充さんのほかの作品は
即興というか、毎回の気持ちや勢いで
描かれているんじゃないかとぼくは思うんです。
それにくらべて『虹色とうがらし』は
最初から最後のことを考えてるみたいな、
そういう印象がありました。
ラストまで読み終わったときに
「ああ~、そうだったんだ」と驚いたから。
大きなストーリーが最初に考えられてたような‥‥。
まあ、本当はどうかはわからないですけど(笑)。
ぼくはそんなふうに感じました。

 
タムくんの近況

タイの漫画家で、アニメーション作家で、
そしてミュージシャンでもある、タムくん。
(本名はウィスット・ポンニミットさん)
「ほぼ日」では、こんなコンテンツ
いっしょにたのしく遊んでいただきました。

そんなタムくんのことで、
おしらせしたい情報がふたつあります。
まずはコミックス最新刊のインフォメーションを。

『ブランコ 3』


Amazonで購入

ウィスット・ポンニミット
小学館/720円(税込)
発売日/ 2008/11/28

心やさしく、ふしぎな力をもつ少女・ブランコ。
ユニークなキャラクターたちが
彼女と出会い、関わり、影響を与え合い、
時にはどちらかが救われたり‥‥。
あたたかくて、でもすこし奇妙な世界が広がっていく
『ブランコ』の第3集が先ごろ出版されました。
この作品は現在『月刊IKKI』で連載中です。

作品にまだ触れていないかたのために、
タムくんが『ブランコ』のことをすこし話してくれました。

「主人公の女の子、ブランコっていう名前は、
 こう、時間を行ったり来たりして、揺れるから
 その名前になりました。
 人って、未来とか過去とかを考えるでしょう?
 それって、ブランコみたいだと思って。

 1巻と2巻では、パパとママが消えちゃって、
 ブランコがひとり残されちゃうっていうのが、
 いちばん大きな筋としてあったんですけど、
 3巻目ではようやく、
 じゃあパパとママを探すにはどうしたらいいのか
 っていう、メインのストーリーが動き出すんです。
 1巻目はブランコの紹介のような感じで、
 ひとつのお話ごとに、すごい時間が飛んでました。
 いろんな時代のブランコが出てくる、
 短編が並んでる感じで。
 それが2巻では、ちょっとだけ飛びながら
 すこしずつ、つながっている印象になってくる。
 この3巻は、話が飛ばずに進んでいきます。
 だから、それまでのいろんなことがわかってくるんです。
 めちゃめちゃだったパズルのピースが、
 埋まっていくように。
 ここから全体のビッグピクチャーが見えてくる。
 だから、まあ、どんどん面白くなります(笑)」

 

さて、もうひとつのおしらせは、
今回の取材が行われたあとで「ほぼ日」に届いたものです。
集英社のウェブサイト『レンザブロー』で、
タムくんの連載マンガがはじまります!

『うらにわアニマル』

なにやらふしぎなキャラクターが動きまわる
この連載マンガは、12月5日(金)スタート予定で、
毎週金曜日に更新されていくのだとか。
気になる内容をうかがってみたら‥‥。

〈物語〉
舞台はタイのどこかにある裏庭。
ここは、動物たちの楽園です。
ニセのにんじんを持つうさぎ、
レトロなヘビ‥‥。
一筋縄ではいかない個性的なキャラたちが織りなす、
シュールでキュートな物語。
メインのキャラクターは、
周りを不幸にしてしまうので、
いつも何かに隠れている黒猫のドロミちゃん。

うーん、これはもしかしたら
タムくんのまた違った面が見られるかもしれませんね!?

ちなみに『うらにわアニマル』は、
タイ語と日本語のバイリンガル表記で連載されるそうです。
12月5日(予定)、
ぜひ、『レンザブロー』をチェックしてみてくださいね。

 

2008-12-08-MON

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