あのひとの本棚。
「ほぼ日」ではときどき糸井重里が「あの本が面白かった!」とか
「これ、読んどくといいよ」と、本のオススメをしていますが、
これを「ほぼ日」まわりの、本好きな人にも聞いてみようと思いました。
テーマはおまかせ。
ひとりのかたに、1日1冊、合計5冊の本を紹介していただきます。
ちょっと活字がほしいなあというとき、どうぞのぞいてみてください。
オススメしたがりの個性ゆたかな司書がいる
ミニ図書館みたいになったらいいなあと思います。
     
第27回 祥見知生さんの本棚。
   
  テーマ 「そばにいて静かに励ましてくれる5冊」  
ゲストの近況はこちら
 
「器(うつわ)」を伝えたり、文章を書いたり、
音楽の会を催したり‥‥私はそんな仕事をしています。
そうした活動や出会いを通じて、
「いいものは普通に、人のそばにある」
というちいさな信念を持つようになりました。
本当にいいものは、気がつかないくらいの存在感で
人を励ましてくれるのではないかと。
本も同じ。
私のそばで、静かに励ましてくれる5冊を紹介します。
   
 
 

『種まきノート』
早川ユミ

 

『植物知識』
牧野富太郎

 

 

 

 
           
 
   
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1冊目でご紹介した
早川ユミさんと小野哲平さんに出会ってから
何度も高知に行くようになったのですが、
行くたびに毎回かならず立ち寄るところがあるんですよ。
それは「高知県立牧野植物園」という場所です。
牧野富太郎先生‥‥ご存知でしょうか。
どうしても私は「先生」って言っちゃうんですけど(笑)、
博士ですよね、植物の博士で、
「日本の植物学の父」と呼ばれているかたです。

この牧野博士の記念館が、高知の植物園の中にあって、
そこがほんとうにすばらしいんです。
何度訪れても何か受け取るものがある。
最初に行ったときは、
こういう日本人がいたんだってことにまず驚きました。
あそこの雰囲気は、なんというか‥‥
「私たちは植物から学ぶべきなんだ」
ということが伝わってくる場所なんです。
とはいえ、行っていただければわかると思いますけど、
偉ぶっていないんですよ、ほんとに。
牧野先生がどれだけ植物を愛していたかが
じんわりと伝わってくる展示なんです。

牧野先生はたくさんの書籍を残していらして
私もいろいろ読んだのですが、
きょう持ってきたのはこれですね。
「植物知識」。
入門書としてとてもいいと思います。
薄くて読みやすくて。
でも、薄い本ですけれど、牧野先生の植物への愛情は
ちゃんと知ることができる本です。
あたたかな筆づかいの図が入って、
ひとつひとつの植物がとても丁寧に紹介されていて。

これを読んだら、ぜひ他の本も読んでほしいです。
絶版になっているものや高価な本もありますが、
がんばって手に入れる価値はあると思うので。
たとえばこれ‥‥高知の牧野植物園で買ったんですけど、
この先生の写真、チャーミングでしょ?
励まされるんです、この笑顔に。

蝶ネクタイに真っ白なシャツで
植物たちに会いに行くんですよ、先生は。
なぜかというと恋人に会いに行くから(笑)。
かっこいいですよね。
植物に会うときは正装。
お弟子さんたちも、みんな正装だったそうです。

牧野先生は音楽も好きで、
高知で初めてコンサートを企画した人なんですね。
私も二度、この植物園での音楽会を
コーディネートさせていただきました。
1回目にはハナレグミのライブを、
2回目には細野晴臣さんを招いて開催しました。
そのことは私にとって、
とても大切な経験になっています。

   
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一冊目に、私が自分で編集した本をご紹介します。

早川ユミさんという、ひとりの布作家さんの本です。
そもそもは、ユミさんのご主人、
小野哲平さんという、
器を作るかたと展覧会をやったのが最初だったんです。
哲平さんは高知の標高450メートルの
棚田のある土地に暮らされていて、 
私はそこに何度も行って寝泊まりしたんですね。
もう、何十回お邪魔したか‥‥。
年に6回くらい行ってた時期もありました。
そのたびに、みんなで一緒に
ユミさんのご飯を食べるんですよ。
それで、なにか、こう、なんででしょうね‥‥
ユミさん自身がたぶん、
書きたい人なんじゃないかな、と思ったんですね。

それで、「文章を書いてみませんか」
というところからはじめてみたんです。
とにかく1年間、私に手紙を書くようなつもりで
メールを書いてみてください、と。
そうしたら、もう、
溢れるくらいに言葉が出てきたんです。
文章が上手だとかそういったことでなくて、
ユミさんそのものの、体から湧き上がるような‥‥。
彼女は作品もそうなんですけど、
決して頭で書いてない、
体で学んだことを言葉にしている。
私はそこに、強烈に惹かれました。

そんな早川ユミさんという人を
思いきり表現する本にしたかったので、
本にまとめるときには
「整えない」ことを編集の方針にしたんです。
デザイナーさんにも、
「ユミさんの魅力が詰まったものにしたいので
 きれいにまとめず、
 そのままデザインしてください」
とお願いしました。

ユミさんがつくるもののはじまりは、
誰かに見せるためではなく、やはり家族のためのもの。
平穏な日々の中でひたひたと大事なものが含まれている。
それはやっぱり、胸に迫るものがあるんですよ。

自分で編集した本なのですが、
いまは読者として、
そばにいて静かに
そして力強く励ましてくれる1冊になりました。

早川ユミさんと小野哲平さん、
おふたりのHPがあります。
ぜひ、訪れてみてください。

 

鎌倉のギャラリーを運営しながら、
著述・編集、そして音楽会をコーディネートするお仕事もされている
「祥見知生」(しょうけん ともお)さん。
「ほぼ日」では「担当編集者は知っている。」にご登場くださり、
自ら編集された『セツローのものつくり』という本の
紹介をしていただきました。

そんな祥見さんから、
ご自身がプロデュースした3つの展覧会についての
おしらせがあります。


2009年3月18日〜4月20日
会場/SFT GALLERY
東京都港区六本木7-22-2 国立新美術館 B1F
SOUVENIR FROM TOKYO 内
Tel/03-6812-9933
営業時間/10:00〜18:00(金曜日のみ〜20:00)
定休日/火曜日

「ほぼ日さんでも以前、書籍を取り上げていただいた、
 小野セツローさんの展覧会を開くことになりました。
 ことしで80歳になるセツローさん。 
 まだまだお元気ですが、
 「かんざしは80歳でやめようかな」と
 おっしゃって、ちょっと心配しています。
 ですから、ほんとうに貴重な展覧会になると思います。
 この機会に、ぜひみていただきたいですね。
 かんざしのほかにも、スケッチや、
 木のさじとか、土の人形なども展示いたします。
 そうですね‥‥ほんとに、実物をみていただきたいです」

2009年4月24日(金)〜4月30日(木)
会場/鎌倉・うつわ祥見
(祥見さんのギャラリーです。
 アクセスはこちら

「木工家・須田二郎さんの作品展です。
 2年ぶりの展覧会になるので、
 わたし自身もとてもたのしみにしています。
 木の肌をそのまま生かした作品たちを、
 ゆっくりとご覧いただけるとうれしいです」

2009年 5月7日(木)〜5月23日(土)
会場/東京・馬喰町ART+EAT

「こちらも大好きで仲良くしていただいている、
 吉岡萬理さんの展覧会になります。
 カルロス君というのは、萬理さんが描く人物の名前です。
 土を耕し農に生きる農夫をモティーフにしています。 
 萬理さんは、このカルロス君を、
 お皿やマグカップや壺など様々な物に描いています。
 ずらりと並んだカルロス君は
 それぞれ違う表情を見せてくれるので、
 これもやはり、ぜひ実物をみていただきたいですね」

「それと、最近きまったことなので、
 お見せできる写真などがまだないのですが‥‥
 ことしの5月1日に、鎌倉駅そばに、
 あたらしい空間をオープンすることになりました。
 お店の名前は、
 『ustuwa-shoken onari NEAR』といいまして、
 つい最近ようやくロゴマークができたんです。
 このような。

 

 なんでもなくてほんとうのもの、
 日々の器を伝えるお店になります。
 鎌倉にいらしたときは、ぜひお立ち寄りください」

祥見さん、ありがとうございました。
今回うかがった展示会の他にも、
様々な展覧会や音楽会などが
この先いくつか企画されているのだとか。
それぞれの催しや、新しいお店についてのおしらせは、
ギャラリーのHP「うつわ祥見」の中で
随時ご案内していかれるそうなので、
ときどきチェックしてみてくださいね。


「うつわ祥見」は、こんなギャラリーです

※今回の取材は鎌倉にあるイタリアンレストラン、
 「フォセッタ」で行われました。
 鎌倉野菜のおいしい、祥見さんとも仲良しのお店です。
 スタッフのみなさま、快くご協力くださり、
 ありがとうございました!

 

2009-03-24-TUE

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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN