その10 高校の時から「ためしてガッテン」。

糸 井 北折さん、水泳部やってるときって
どういう人だったんですか。
演劇部の部分はわかったんだけど。
北 折 なぜ自分が水泳部を選んだかと言うと、
小学校のときに、好きだった子がいて、
中学が離れ離れだったので
高校がもしかしたら
おなじになるかもしれないと思って、
そのときに、
かっこいいマッチョな自分に
なっていようと思ってみてみたら、
水泳部の人が一番マッチョだったからです。
糸 井 いい形してますもんね。
北 折 はい。
それだけだったです。
観 客 (笑)。
糸 井 そのときから、
すでに精神による肉体の改造を。
観 客 (笑)。
糸 井 死なないぞダイエットの
前哨戦みたいなこと。
北 折 考えてたかも。
それはそうだったですね。
糸 井 やってますね。
 
北 折 ほかの恵まれた体の持ち主よりは、
明らかにひ弱な感じだったんですけども、
がんがん鍛えて速くなるというよりは、
どうやったら効率よく泳げるかっていうのを、
もう、さまざまなものを見て研究して
なるべく練習をしないで
速くなるっていう方向へ走って
いきましたですね。
糸 井 うん。
北 折 でも、結果、学校では一番速かったですから。
いい話にしようと思えば
弱い面があったから、
別の筋肉でがんばったっていうようなところが、
当時からあったってことですかね。
糸 井 うーん。
実際にそれは、考えたり工夫したり
したことが役に立ったっていう意味ですね。
北 折 そうですね。
糸 井 それ、水泳には、そういうことが
いっぱいあるんですか。
北 折 あると思います。
ボートを漕いでるときでも、
オールが深いところでいったほうがいいのか、
浅いところで、いったほうがいいのか
っていうのをずーっと試してて、
わからんなぁっていうことを、
やったりとかっていうようなことは
あったりしましたので。
糸 井 ちなみに、いまのオールの件はどっちですか。
北 折 いや、わからなかったんですよ。
力を入れやすいかどうかと水の抵抗の話の両方あって。
浅いところやると、ときどき、シャバって。
糸 井 外れますね。
北 折 それから考えると多少深くてもいいのかな。
あとは、筋肉の形として、
深いところでやろうと思うのと
浅いところで、やろうと思うのと。
糸 井 引っ張り方ちがいますよね。
北 折 だから自分が持ってる筋肉によって
ちがうなぁと思った記憶が、
いま、よみがえってきました。
今日、糸井さんに会わなかったら、
死ぬまで思い出さなかったと思います。
観 客 (笑)。
 
糸 井 水泳は、前にスポーツクラブで
木原光知子さんが、
宮沢りえちゃんのコーチをしてたんですよ。
りえちゃんそんなに泳げなかったのに
友だちが木原さんになったら、
やっぱり、すっごいかっこよく泳げるようになって。
北 折 うーん。
糸 井 かっこいいと速いが、イコールじゃないですか。
北 折 はい。
糸 井 で、いいなぁと思って
木原さんが教えるのを見てたのね。
そしたら、木原さんが、
糸井さん何見てるの、って言って、
泳いでごらんって言うから、
泳いだら「ああー」って言って。
北 折 (笑)。
糸 井 すぐにわかることがあったらしくて。
北 折 うーん。
糸 井 その、ああー、が何かって言ったら、
「足はね、浮かばしてるだけでいいんだよ」
って。
オレは足で進むのかと思ってた。
なぜかって言ったら、
ビート板を手に持って
バタ足をすると前に進むということを
小学生のときに、先生に教わるでしょう。
だからバチャバチャして進めるのかと思った。
そうしたら「進むののほとんどは、手だから、
足はただふわふわさせてるだけでいい」
って言われて、ええー、まさか!
と思って、やったら、
「速くなったよ」って。
観 客 (笑)。
北 折 (笑)。
糸 井 ほんとにあれ、びっくりした。
そうですよね。
北 折 ですね。
糸 井 もっとうまくなるとまたちがうんでしょうね。
北 折 そうですね。効率のいいのはあるんですけど、
足にビート板挟んでても、
そんなにタイム変わらないですからね。
観 客 へぇー。
糸 井 いいこと教わったでしょ。
木原さんも言ったんだよ。
オレはそれを何十何年さ、
推進力は主に足だとばかり。
北 折 回数も減ってるんですよ。
競泳の選手でも昔は1回掻くあいだに、
6回バタアシしてたのが、
いま、2回とかになってますよね。
 
糸 井 腹が立ちますよね、
昔教えた人について。
観 客 (笑)。
糸 井 それ、「ためしてガッテン」で
やったことありますか。
水泳は。
北 折 ないです。
たぶん、それやると、
視聴率ひと桁みたいな‥‥。
糸 井 そっか。生活に関係ないですもんね。
でも北折さんは水泳部のときも、
すでに「ためしてガッテン」みたいなこと
やってたわけですよね。
北 折 そうだったんだ、って、
自分でいままで知らなかったですけど。
糸 井 栴檀は双葉より芳し。
つながるんですよ、きっと。
北 折 つながってたんですね。
糸 井 脳が肉体を奴隷化して、
ああやれこうやれっていって、
思い通りに動かそうとするということの
例っていうのも、
三島由紀夫さんという人がひ弱だったのに
急にボディービル始めたのとか、
思い出すんですよね。
ああいう体つきって、急になれるんだ
って、いうの、ぼく子どものとき、憶えてて。
北 折 へぇー。
糸 井 実際に、あのー、
ぼくは、53キロだった人ですが、
それが筋肉をつけるのに、
すぐついたってことも、経験があるんです。
そのとき、どうなりたいかが、
その人をつくるんだなっていうのは、
すごく思って。
逆に、なりたい自分を考えることさえ忘れる、
っていうのが、一番、泥沼なんですよね。
北 折 うーん。
糸 井 つまり、勉強ができない生徒って
勉強ができないってことから、
抜け出したいことさえ、
考えてないんですよね。
それは、大人になってもおんなじで、
目標ができたり、ここにいるのだけはいやだ
って思うと、あがくんですね。
それがたぶん、
「死なないぞダイエット」の中心部ですよね。
北 折 あ、そうですね。
健康でいるっていうことは、ふつうは
目標ではないんですよね。
糸 井 立てられないんですよ、イメージがね。
北 折 そうです。
でも、方向性はそっちだっていうことが、
なんとなくわかりさえすれば
いいっていうことと、
そのことが、自分のモチベーションのような
気持ちにさえなっていただければ、大丈夫なようにと、
そう思って書きました。
たぶん、モチベーションとして、
大きなものには、絶対なりえないんですね。
健康っていうのは。
糸 井 うん。
(つづきます!)
2010-06-03-THU
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