第5回 @東京 被災地の誇り。

糸井 西條さんの「ふんばろう」プロジェクトには
「解散」のイメージって、あるんですか?
西條 うーん‥‥難しいところですね。

プロジェクトごとに
被災地での「ニーズ」や「ウオンツ」は
違うので。

解散するわけではないですけど、
次の「3月11日」が
ひとつの節目になるだろうな‥‥とは
思っています。
糸井 このあいだ気仙沼でもしゃべったんだけど、
そのあたりまでに
「ふんばろう」の体制を
「脱中心的な方向に整備していこう」と。
西條 はい。
大きな方針としては「現地の独立化」です。

個々の支部ごと、
あるいはプロジェクトごとの独立を高めて
個々の判断で「回して」いけるように。

そのほうが機動性も高まるし、
無理もないし、
だいぶコストが減ると思うんですよね。
糸井 うん、うん。
西條 テレビやラジオといったマスコミへの露出も
3月11日を過ぎたら
できるだけ各プロジェクトのリーダーなどに
任せたいと思っていて。
糸井 はじめて対談したときに
「自分がいなくなるのが目標」って。
西條 はい。

いかにぼくがいなくても機能する体制を作るか、
ずっとその体制作りをやってきたといっても、
いいぐらいです。

最近は、各チームのリーダーさんたちが‥‥
といっても何十人といるわけですが(笑)、
かなりいい感じに回してくれているので、
ようやく
イメージしていた体制になってきたかなと。
糸井 現在の課題は?
西條 3月11日以後、活動を続けていくためにも
最低限の資金は必要だということですね。

なので、月々1000円から定額の寄付ができる
ふんばろうサポータークラブをつくって。
糸井 なるほど。
西條 あの‥‥糸井さんが立ち上げた
「気仙沼のほぼ日」って
「2年」という期限付きではじめたって
おっしゃってたじゃないですか。
糸井 はい。
西條 そのことが
ずっと、気になっていたんですよね。
糸井 そうですか。
西條 はい‥‥どうして「2年」なのか。
「1年」でも、「3年」でもなく。
糸井 まぁ、僕のやることですからね、
まずは「直感」です。
西條 んー‥‥。
糸井 ‥‥なんですけど、適当にやってたら、
1年でたぶん「飽きる」んですよ。
西條 ‥‥ほう。
糸井 自分の動機が、そのままでは続きにくくなる。

1年目は、春になったら桜の話ができるし、
春が終わったら
「夏休みが来るぞーっ」って書けるんですね。
西條 ええ、ええ。
糸井 でも、季節がひとめぐりしちゃうと、
つまり「2年目」に入ると、
去年と同じこと、書けないじゃないですか。

そこに
新しい「ニュース」なり「アイディア」が
載っかってないと。
西條 なるほど‥‥。
糸井 そういう「2年目」を
誤魔化さずにやっていけるかどうか‥‥が、
知恵を絞るポイントなんです。

だから、1年でやめちゃったらダメ。
西條 じゃあ「3年」でもない理由は?
糸井 3年目については
「あとは、自分らでやってねーっ!」って
言いたいから。

だって
僕たちが「主人公」じゃないですもん。
西條 ‥‥なるほど。
糸井 もし「2年」であるていど利益を生むような
やりかたが見つけられたら、
それを渡して、使ってもらいたいんです。

なんというか
「半完成品のプロジェクト」を置いて
「さらば」って言いたいんですよ。
西條 先日、お会いしたときに「義足論」と。
糸井 そう、そういう発想って、「義足」とか
「補助輪」とか「エンジン」とか、
そんなようなものかなって思うんですね。
西條 あくまで「走る」のは、現地のみなさん。
糸井 うん。
西條 この間も、すっごく感じたんですが‥‥。
糸井 ええ。
西條 5月とか夏ごろ‥‥とか、定期的に
お会いさせていただいてるんですけれど、
糸井さんのパワーが
どんどん上がってるのを感じるんですよ。
糸井 ほんとですか(笑)。
西條 いや、何が言いたいかというと
いまの状況は
「糸井さんのフェーズ」になってるんだろうなぁと
思ったんです。
糸井 ‥‥なるほど。「俺的な人」の。
西條 そう、震災が起きた直後は
とにかく「ガテン系」の人のはたらきが
重要だったわけです。

パワーのある人たちが先頭切ってくれて、
ガレキを撤去して‥‥。
糸井 ものすごく重要な役割でしたよね。
西條 そういう人たちの活躍で、
どんどん、ガレキが片付けられていって‥‥
先日、陸前高田を通りかかったとき、
一瞬、気づかなかったんですよね。
糸井 ほう。
西條 そこが「陸前高田」だってことに。
糸井 つまり「風景」が変わっていて。
西條 こんな広い場所、あったかなぁ‥‥と。

そのくらい状況が変化してきてるいま、
やはり次は「仕事」をどうするか
というフェーズに入ってきてると思うんです。
糸井 「ふんばろう」も
「雇用創出」の方向へ舵を切ったし。
西條 そうすると、糸井さんみたいに
知恵とか行動力とかアイディアを持った人に
地域の経済を
サポートしていただくことが重要かなと。

よその大企業がポンポン入ってくるのは
いやだな‥‥というのが
たぶん、現地の本音だと思うんですよね。
糸井 そうですよね。
西條 瀕死の重体になった状態から
必死に立ち上がろうとしている中小企業が
たくさんあります。

そこへ、無傷の大企業がバーンと入ってきて
競争原理がはたらいたら‥‥。
糸井 ええ。
西條 だから、可能なかぎり地元に根づいた企業を
サポートしていくという
道すじをつけていかないことには。
糸井 大企業が
「お金持ってるから、これをやってあげます」
といって入ってても
次に繋がらないし、循環していく気がしない。
西條 うん、うん。
糸井 西條さんの言う「仕事」について思うのは
今の局面って
僕は「誇りの時期」になったなって。
西條 誇り、ですか。
糸井 たとえば、打ち合わせで気仙沼に行ったりすると、
とうぜん僕らなりに気は使ってんですが、
「ごちそう」されちゃうんです、現地の人たちに。

そのことについて、やはり考えるわけです。
西條 逆なんじゃないか、と。
糸井 そう、で、もう友だちになっちゃってるから
「なんでキミらは、ごちそうするんだ!」
と、言ったんですよ。
西條 ええ(笑)。
糸井 そうしたら、
「そういうことをしたくて生きてるんだ!」
って、逆に言い返さちゃって。
西條 なるほど‥‥。
糸井 「東京から気仙沼に来てくれることが
 嬉しいんだから、
 ごちそうしたいに決まってるじゃないか。
 それをやめろっていうのは、
 何か物くれってねだるよりひどいぞ」と。
西條 ええ、わかります。
糸井 だからもう、弱っちゃうんですけど
「‥‥美味いね」って言うしかないんです。
会場 (笑)
西條 いや、本当にそうだと思います。
糸井 その意味での「誇り」がひとつ。

もうひとつは、
たとえば「歌を聴いてもらう」にしたって、
きちんとお金を取れる人が来て、
歌ってくれるのが
嬉しいじゃないですか、やっぱり。
西條 糸井さんのおっしゃる
「ニーズ」ではなく「ウォンツ」ですね。
糸井 うん、それは「支援される側の誇り」と
言い換えられるんだと思う。
西條 ‥‥なるほど。
糸井 だから、自分に何ができるのかわからないという
問いに対しては
いちばん簡単なことで言うと
「被災地を
 野次馬として見に来てくれていい」
というのは、全員が言いますね。
西條 そうですね。
糸井 「行ったり来たりの交流がはじまれば、
 少なくとも
 オレたちは『忘れられてない』ことが
 よく分かるから」って。
西條 うん。
糸井 「こりゃひどいですね〜と
 笑ってくれても、かまわないくらいだ。
 そしたら
 笑えないような場所を見せてやるから。
 ワハハハハ!」
みたいに、笑って言ってますから。
<つづきます>
2012-02-23-THU