BOOK
男子も女子も団子も花も。
「婦人公論・井戸端会議」を
読みませう。

第1回 人は笑いたい

第2回 辛抱はこわい!

第3回 テレビとの距離

第4回
孤独な哄笑でも

談志 俺がテレビにシビアになるのは、
どこかで自我みたいなものをもっていたいからなんだよ。
今のテレビの笑いを認めちゃうと、
俺の自我がなくなっちゃう。
笑いって、そんなもんじゃないだろう
と言いたいわけです。
糸井 談志さんは、落語の世界でも闘ってますよね。
談志 俺はね、いろいろやってきて、
「落語は自己を出せばいいんだ」
ってことに行き着いたんだけど、
よく生意気だって言われ、
落語協会からもバッシングを受けてきたでしょう。
これが何で悪いんだというのを示すうえでも、
笑いって何だ、落語って何だって具合に、
常に分析しながら考える癖ができちゃったんだね。
糸井 自分を守るために。
談志 それが今の俺を支える自信にもなってる。
すぐ崩れそうな自信ではあるけど、
とりあえずそこでもってる。
要するに、俺のしゃべっていることは正当なんだと
自分で確認し、
常に理論でガードしていなきゃもたないくらい、
俺は孤独だったんですよ。
だから『電波少年』見てアハハと笑ってたり、
「いいんですよ、私はこれが好きなんですから」なんて
悠長なことを言ってられなかったんだな。
糸井 必死だったと。
談志 今もはじき出されたまんまで。
糸井 笑いと時代は関係ありますか。
三谷 僕が舞台でやるものは、
時代を反映してるものじゃないし、
関係ないんじゃないですか。
談志 うん、時代じゃない。
自己の問題ですよ。
人間が主体なんですから。
糸井 これから笑いとかコメディといったものは
どうなるんですかね。
三谷 コメディだけをやろうと思ってる人間は
今のところ、他にはいなくて、
だから僕の存在価値もあるような気がするんです。
本当はもっともっといろいろな人たちが出て、
しのぎを削っていくようになると、
もっと面白くなるんだと思いますね。
こんなに笑いを求めているのに、
つくり手側で真剣にそれを考えている人って、
本当に少ないですから。
談志 そのためにも今の場所で落ち着いてちゃいけないやね。
「これやってりゃ稼げるのに、
三谷のバカ、あんなとこ行きやがった」と言われつつ、
来る客だけ集めて理屈つけてやる。
芸人や作家はそれができるかできないかが勝負でしょう。
糸井 談志さん自身もその勢いで……。
談志 俺はあと二年で終わることに決めたから。
決めると楽だよ。
未練はあるけど。
糸井 二年というのは?
談志 二にするか、三にするか、十にするかってことで、
とりあえず二年にしたと、それだけの話だけどさ。

(終)
立川談志さんのホームページはこちら

2000-07-19-WED

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