「フランコさんのイタリア通信」が本になります。 酒井うららさんと、 イタリアについてしゃべろう!


第5回 イタリアのおいしいもの。

なんこ さっき、ローマはわりと関西ぽくて、
ミラノはもっとビジネスっぽいって
おっしゃっていましたが、
イタリアの、あの長い昼休みは
ミラノのような経済都市でもあるんですか?
酒井うらら うん。
シェフ たっぷり?
なんこ お昼ご飯食べてちょっと休んでから、
仕事に戻るみたいな。
ちゃんと戻ってくる感じですか、ミラノの方は?
酒井うらら それは戻ってはくるとは思う。
なんこ わたしが留学したときは
画材屋さんとかがお昼休みで、
夜、開くかなあと思って行ってみたら、
やっぱり開いてないとか(笑)。
全部休みになっちゃうんです。
シェフ そのまま休んじゃうの?
キノシタ 昼休み、取ったまま?
なんこ そうなの!
酒井うらら (笑)そのあたりは、
ミラノの方がちゃんとしてるかな。
あやや イタリアの人って、
基本的にはそういう大らかさがあるんですか?
酒井うらら もうそういうもんだと思ってるの。
なんこ お昼ご飯もちゃんと2時ぐらいまでに買っとかないと
買えないんですよ、4時まで。
酒井うらら 買えない。そう。
なんこ 4時とか5時まで。
もう絶対開かないの。
酒井うらら だって昔は、デパートがお昼、
休んじゃってたのよ。
最近は、ミラノのデパートの
ラ・リナシェンテは
昼休み無し、日曜日も営業してますけど。
なんこ そういうところを探さない限り、
何もやることないんですよ。その時間は。
あやや じゃほんとに日本とか見てると
不思議でしょうね、
何でみんな、こんな、働いてんのよって。
酒井うらら うん。
酒井うらら だから、お客様は神様じゃないの。
フィフティ・フィフティなの。
あやや あ、素敵なことですね。
キノシタ それでもやっていけるんですね。
酒井うらら でもやってけないのよ。
EU統合しちゃったら、
もうほんとに大変なのよ、
みそっかすで、弱くて。
EU加盟で帳尻を合わせちゃったツケが
国民に回ってる。
なんこ さらに、イタリアは、南と北の差があると
聞いたことがあります。
酒井うらら そうなのね。北に住んでる人たちに言わせると、
ローマから南は違う国っていうぐらい。
やまかわ そうなんですか。へえ。
酒井うらら もう、ぱっと見て顔が違うくらい、違うのね。
肌の色、髪の色、顔つき。
シェフ 食いしん坊から言うと、南の食事、
シチリアとかナポリとかの食べ物は
美味しそうだぞって思うな〜。
あやや酒井うらら
キノシタなんこ
  やまかわ
(笑)。
酒井うらら おいしいのよ、ほんとに。
それはもうしょうがない。
あややシェフ
キノシタなんこ
  やまかわ
(笑)。
酒井うらら 食材も豊かだしね。
北で美味しいのは、
ジェノヴァのあるリグーリア地方、
ボローニャのあるエミリア・ロマーニャ‥‥
中部のトスカーナにウンブリア‥‥
あ、全部だわ。
シェフ え、じゃミラノは?
酒井うらら ミラノは‥‥美味いものなし。
あややシェフ
キノシタなんこ
  やまかわ
(笑)。
酒井うらら 美味いものなし、観るとこなし、って言われて、
そんなことないもん、
米料理はミラノだもん(笑)、
て言ったりするのよね。
レオナルド・ダ・ヴィンチの
「最後の晩餐」だってあるもん! って。
‥‥でもね、フィレンツェみたいに
観光の目玉がたっぷりっていうわけじゃないの。
なんこ 他の地方がいっぱいいろんなものが
ありすぎなんですよね、きっとね。
酒井うらら そう、あり過ぎなの。
でもほんとにミラノはね、
やられてきたんですよ、通り道だから。
フランスがだだだだーって通ってったら何もない、
スペインがどどどーってきたら
もう何もなくなるみたいな。
凱旋門だって、ナポレオンが建てたんだから、
ミラノの凱旋門は。パリに向かって。
なんこ ね、かわいそう、ミラノ。
シェフ で、ミラノ、美味いものないんですか?
米料理だけ?
住んでた人からしても?
酒井うらら うん、でもやっぱり美味しいものの
種類は少ないと思う、ミラノ。
バラエティに富んではいない。
シェフ 少ないんだ。
何が好きでした?
酒井うらら サフランのリゾットは好きだったな。
やまかわ ああ、美味しそうですー。
酒井うらら それから、オーソブッコっていってね、
すね肉を骨ごと、煮込んだやつ。
で、骨の髄もいただく。
あと、コトレッタ・アッラ・ミラネーゼ。
これは薄べったいビーフカツですね。
あやややまかわ いやー、美味しそう!
酒井うらら とか、あることはあるんだけど、
でも他のとこに行って、
どれから食べていいか分かんない、
って迷うほどはないのね。
パスタの種類なんかももう、
ボローニャなんかに行った日には
もう、ちょっとずつ、
ぜんぶください!
って、言いたくなるくらい。
それでも1日、2日では
食べ切れません。
シェフ パスタの種類だけで!
酒井うらら うん、それからワインだって、
ミラノのあたりのワインていうのは
聞かないのね、あんまりね。
なんこ そうですね。確かに。
酒井うらら 農家の地ワインでおいしいものは
あるかもしれないけど、
やっぱりジェノヴァの方まで、
ボローニャの近辺まで行かないと、
ミラノの地酒っていうのはあんまり聞かないです。
シェフ へえ。そうだったんだ、
知らないよね、こういうこと。
酒井うらら ミラノは、唯一、
水田があのあたりに多かったので、
米料理が得意ではあるんです。
「にがい米」っていう映画があったんだけど、
その世界かな。
いまはどうかわからないけれど
むかしはその水田の仕事で
出稼ぎの人たちが来ていたくらい。
やまかわ 全部がつながりました。
何でお米なのかとか、知らなかったです。
酒井うらら でね、ミラノは、私たちが知ってるような
主要都市の中でいっちばん海から遠いの。
内陸なのね。
だからどちらかというと、
畑のもの、山のもの、
お肉を生かした料理が得意なのかな。

(つづきます)

2008-12-02-TUE

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