ほぼ日刊イトイ新聞 フランコさんのイタリア通信。アーズリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

2009-09-01-TUE

イタリアにゴールドラッシュ?!

franco

こちらの写真をごらんください。
ゴールドラッシュ? しかも、イタリアで?
そうなんです。
といっても、本当のゴールドラッシュではなく、
ちょっと風変わりな競技会のお話です。
イタリア北部、ピエモンテ州にある
エルヴォという小さな渓流で催された、
「金(ゴールド)探し世界選手権」の写真なんですよ。

世界中から参加者が!

1800年代終わりごろ、
カナダのユーコン準州にあるクロンダイクで、
本当のゴールドラッシュが起こり、
アメリカ大陸中から人々が押し寄せたそうですが、
世界選手権当日のエルヴォは、
伝説のクロンダイク、かくありき、と思わせる、
にぎわいを見せました。

もちろん、この世界選手権で
ほんとうにお金持ちになる人なんていません。
エルヴォの水の中にあるのは金の塊ではなく
ごくごく小さな金の粒です。
じつはこの金は、自然のものではありません、
競技の開始前に、砂がいっぱい詰められた桶の中に、
主催者側スタッフたちによって埋められているんです。

そう、これは、冒険心と勝つ意欲を競う遊び。
ピエモンテの8月の蒸し暑さの中で、
金を見つけるために世界中から集まった
情熱的な人々が、
水の流れが堆積させた金の粒を求めて、
忍耐強く砂をふるいにかけました。

参加者は、カナダ、日本、南アフリカを含む
23カ国からの約400名で、
男女比は6:4というところ。
子どもたちも40人ほどいました。
服装はそれぞれが気ままに、
色とりどりのカジュアルな服装で、
明るく元気に、この一風変わった国境なき競技の
主人公をつとめました。
色彩豊かな帽子やかぶり物をつけ、
鉱山で働く人のような
あご髭をたくわえている人もいました。

franco
▲アラスカから参加したチームの人

参加者たちは入り口で登録し、
参加ナンバーのゼッケンと、
見つけた砂金を入れるための
空っぽの試験管をもらいます。
参加者たちは男性、女性、熟練者、16歳以下、
ナショナルチームなどのカテゴリーごとに、
30組に分けられ、
それぞれ探す場所が決められています。

埋められた金の粒は5個から12個。
カテゴリーごとに同じ数の粒が埋められた
桶が用意されています。
その先には、砂を洗い流すための水が張られた
30個の桶が待ち受けており、
専用の皿で、金探しのスタートです。

franco
▲フィンランド・チームの人

勝負は2分以内に決着がつくようです。
全員ができる限りの速さで
皿に砂を入れ、桶の水で洗いながら、
より重たい金が表面に現われるまで、
何度も砂を補給するのです。
素早く金の粒を回収したら、
そしてすぐさま粒を試験管に入れ、
皿を頭の上に持って行って
「ストップ!!」と叫びます。
誰かがその声をかけたら競技が終了です。

franco

決まった数の金の粒が
埋め込まれているんじゃ興ざめだなんて、
言わない言わない。
多くの観衆に見守られ、
金探し人たちは幸せいっぱいで
帰路に向かいます。

franco
▲南アフリカ・チームの人

夢は人生の助け。

競技に参加していたイギリス人
ヴィンセント・サーケトルさんに
話を聞きました。
ちょっと風変わりな人に見えましたが、
53歳だそうです。
彼はロンドンから200キロのイングランド南西部
サマセット州ヨーヴィルに住んでいるそうです。

「私は少し前までヨーヴィルの公園で
 監視員をしていましたが、
 金探しに自分を捧げようと、
 3年前から年金暮らしをしています。
 貧乏でも、夢見る自由があるほうが好きなのです。
 私たちの間には家族的な雰囲気がありますが、
 それぞれ本業は地質学者や核エネルギーの技術者、
 物理学者、歴史学者などもおり、
 ほかにも工員や左官屋や主婦たちもいます。
 こうした社会的な立場を超えて、
 みんな同じことに情熱を注ぐ、
 それが、この集まりの素晴らしいところです」と。

古い諺にいわく
「夢は腹の足しにはならないが、
 生きる助けをしてくれる」
この諺の真実味が増すような競技会でした。

ちなみに、世界チャンピオンになったのは、
オランダ人の、サム・ソセフさんでした。


訳者のひとこと

いいですねぇ、少なくも
ピエモンテの素晴らしい自然が味わえます。

っていうか、
旅費で足が出ることまちがい無しな気が‥‥。

うららさんイラスト

ちなみに、Piemonteというのは、
山の足許というような意味です。
この絵のおじさんの左膝のあたりの
ヴァッレ・ダオスタ州は、
フランスのモン・ブランの足許です。

翻訳/イラスト=酒井うらら



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