大いなる愛もいずれは終ります。
人生においてと同じように、
サッカーにおいても。
アンチェロッティとＡＣミラン、
カカとＡＣミラン、
その愛も偉大でした。
もしかすると、それ以上の関係でした。
過去形になっているとお気づきですか？
はい、過去形にせざるを得ないほど、
彼らの愛情関係も風前の灯火なのです。
この世界的経済恐慌も、
一因でないとは言えません。
世界中で起きているように、イタリアでも、
日に日に失業者が増え続けています。
イタリア首相でありＡＣミラン会長の
シルヴィオ・ベルルスコーニは、
自分のサッカーチームのために大金を使いながら
国民に犠牲を強いることは、もうできません。
もしベルルスコーニが、
政府の責任を負わないですむ多くの金持ちのひとり、
例えばインテル会長の
マッシモ・モラッティのような立場であったら、
次期のサッカーマーケットでも
過去と同じように世界の偉大な選手を
買いまくれるでしょう。
しかし現状はそんなに簡単ではありません。
イタリア首相ベルルスコーニとしては、
自分のチームの事どころではないと
思っているようです。
１月に、マンチェスター・シティからの
申し出を断るようにと、
カカを説得したベルルスコーニは、
このイギリスのチームから提示された１億ユーロを、
彼自身も拒絶しました。
最終的にはカカの意志に任せるしかないと言っていた
ＡＣミラン会長ベルルスコーニと、
この最優秀なブラジル人選手カカの
動きが一致した裏には、
両者間に何かの合意があった可能性もあります。
いずれにせよマンチェスター・シティは
国際的に大きなアピール力を持っていませんし、
その辺りがカカにとってネックだったのかもしれません。
現在のこの状況は、いつ解決するのでしょう？
じつは全てが６月にもつれ込みそうな気配です。
なぜなら、この６月には、
レアル・マドリードの会長が新任するのです。
そこには過去にロナウド、フィーゴ、
ジダン、ベッカムなど
可能な限りのスター選手たちを買い集めた、
辣腕のフロレンティーノ・ペレスが着任する見込みです。
彼はＡＣミランにカカへの提示をするでしょうし、
その申し出を断るのは難しいと思われます。
レアル・マドリードは２００２年からずっと、
ＵＥＦＡチャンピオンズ・リーグに
優勝しておりませんので、
まずヨーロッパを、そして世界を制するところに、
戻りたがっています。
そのために、目下ペレスはマンチェスターＵの
クリスティアーノ・ロナウドを、
桁外れな契約を提示して説得中です。
そして未来のレアル会長であるペレスは、
次のねらいはカカであると、すでに語っています。
候補者は他にいませんから、
まちがいなく彼がレアルの会長に選ばれるとして、
彼はカカの他に、現役監督としてはただ一人
ＵＥＦＡチャンピオンズ・リーグで２回優勝経験のある
カルロ・アンチェロッティにも誘いをかけるでしょう。
カカは今でも大金を稼いでいますが、
信仰しているブラジルのある宗教団体に
稼ぎの１割を捧げていますから、
お金はいくらでも必要です。
カカの白いシャツには「I belong to Jesus」
“私はイエスに属する”と書かれており、
これはキリスト教に属していることを意味しますが、
彼の通う教会はカトリックの宗派ではないために、
バチカンは公認しておりません。
じつはこの宗派の長には
いろいろなスキャンダルが噂されており、
麻薬売買の疑惑をかけられているために
ブラジルからアメリカ合衆国に逃亡中です。
もちろんカカは彼の無罪を信じています。
そしてＡＣミランより多額の契約でチームを移籍すれば、
もっとこの宗教団体へ貢献できることになります。
 |
|
もう一方のアンチェロッティは
普通のカトリック信者で、
特別な宗派には属しておらず、
チームを変りたいと思っているのは、
ＡＣミランが遠からぬ時期に野望を見直して
大チームの役割を捨てるだろうと思っているからです。
アンチェロッティとベルルスコーニは、
単なる会長と監督の関係を超えた、
ほとんど家族のような付き合いをしています。
アンチェロッティの息子はこのイタリア首相を
「シルヴィオ伯父さん」と、
愛情をこめて呼んでいるほどなのです。
それでも、レアル・マドリードの交渉は、
来週にはレアルにとって良い結果が見えそうです。
もしそうなれば、イタリアサッカーにとっては、
最強のカカとアンチェロッティ監督を失うという、
地に堕ちたことをダメ押しするような結果ですが‥‥。 |
