おさるアイコン ほぼ日の怪談

「呼びかける声」

私が高校生だった頃のある夜の話です。

眠っていると、
ふすまを隔てた隣の部屋の姉が
突然、私の名前を呼んできました。
顔を上げると、「大丈夫?」と聞いてきます。
そして姉は
「ここ、少し開けておくね」と言って
20センチほどふすまを開け、
眠ることになりました。

私は眠かったので、またすぐにウトウトしました。
ところが、また私の名前を呼ぶ声がしたので、
顔をあげてふすまの方を見てみました。
部屋は暗いままで、
何も変わったところがなかったので
気にせず、目を閉じました。

すると、また呼んでいるようです。
その度にふすまの方を見るのですが、
何も変化はありません。
もう、眠さも限界なので、名前を呼ばれても
無視することにしました。
すると、名前を呼ぶ声が
はじめは姉の声のようだったのに、
だんだん回をおうごとに低く低くなっていき、
テープが間延びしたような声になりました。

そこまできて、私はついに怒り心頭。
絶対に姉のいたずらだと思い、
掛け布団をかぶりながら、
「うるっさいなー! 眠いんだよ!」
と声に出して怒りました。
その途端、名前を呼ぶ声が
小さくぶつぶつ言うような声に変わり、
しばらくしたら静かになりました。
私は満足して眠りました。

翌日、姉に昨夜なぜ突然ふすまを開けたのかを
尋ねると、姉は

「お前の部屋から人が歩き回る音がしたから
 泥棒だと思って、勇気を出して様子を見たんだよ。
 お前の布団のまわりを
 ぐるぐる歩き回ってるみたいで怖かった〜」

と教えてくれました。
前の話にもどる もう、やめておく 次の話も読んでみる