怪・その7

「庭にいた少年」



数年前に体験した不思議な話です。

まだ小学生だった私は、両親が共働きで、
よく留守番をしていました。

留守番をしているときは
カーテンも窓も何もかも閉め、
子供がいるとは悟られないようにしていました。

私の家の庭は少し広く、
さえぎるものもないので、
折り返しの車が入って来たり、
野良猫が来たりしていました。

ある日、その庭にボールが転がってきて、
そのボールの持ち主らしき男の子も
入ってきました。

勝手に入って来て‥‥と、
私は不快でしたが、
声をかけるわけにはいかないので、
黙っていました。

そして、ボールを取り、
出ていくのかと思ったら、
男の子は
「しー」と、人差し指を口にあて、
こちらを見て笑ったのです。

その日は夏でしたが、
窓もカーテンも、いっさい開けていませんでした。
ずっと見てたわけでもないです。
どうして、その男の子がこちらを見たのか、
なぜわかったのか、ゾッとしました。

それだけでも不思議な話なのですが、
その子は話したことも、見たこともない子でした。

うちは、けっこう昔からその土地にいて、
誰かが引っ越しても、
噂話として耳に入ってきます。

近所の子供とは付き合いは薄い方でしたが、
顔は覚えていました。
ご近所の人の親戚の子だったとしても、
よその家に入ったボールを
取りに行かせることはないと思います。

そして、
ボールが転がってきたと言いましたが、
私の家の前は田んぼです。
そこで遊ぶ人なんて、そうそういません。

あの子は誰なのか、
どうして私がいることが解ったのか、
どこから来たのか。
いまだに解らず、たまにゾクッとします。

(翠)

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2023-08-06-SUN