怪・その7
「散らかった部屋」


20年ほど前、私が大学生のころです。

友人の下宿に遊びに行き、
コンピューターゲームをしていました。

最初は二人で遊んでいたのですが、
夜中の1時を過ぎたあたりで友人は寝てしまい、
私は一人でゲームを続行していました。

そのまま3時くらいまで一人で遊んでいたのですが、
のどが渇いたので、外の自販機まで
ジュースを買いに行くことにしました。

ジュースを買って友人の部屋まで戻り
ドアを開けると、
電気が消えている上に
何だか部屋の雰囲気が違いました。

部屋の電気を点けると明らかに別の部屋で、
友人の部屋はいつでも整理整頓が
行き届いていたのですが、
その部屋は雑然としていて
典型的な男の一人暮らしの部屋でした。

悪いことに
その部屋で寝ていた男を起こしてしまったようで、
男は布団から上半身を起こして
こちらを見ました。

すっかり動揺した私は
無言のまま部屋から飛び出てドアを閉めたのですが、
その時のドアの閉まる音が
お寺の鐘のような「ゴーン」という音でした。

完全に動転していた私ですが、
その音に驚いて一瞬真っ白になり、
逆に冷静になりました。

改めて周囲を確認すると、
そこは間違いなく友人の部屋の前です。

恐る恐るドアを開けると、
部屋の中は見慣れた友人の部屋でした。

しかも友人は
さっきまでと同じ場所で寝ています。
ホッとしたものの何だか気味が悪かったので、
ゲームを切り上げて帰ることにしました。

友人に置き手紙を残し、電気を消して
部屋を出ようとしたところ、
部屋の奥から

「ごめんなさいくらい言えよな」

という声がしました。
明らかに友人の声ではありません。
ごみごみした部屋にいた男の姿が脳裏をよぎり、
私は全速力で自転車をこいで家に帰りました。

翌日、私は自分が体験したことを
友人に話したのですが、
友人は全く信じていませんでした。

しかし、その数週間後、友人の祖母が
友人を訪ねてきたのですが、
部屋に一歩入るなり有無を言わさず
引越しの準備をさせたそうです。

友人は私が言ったことを思い出して
「この部屋、もしかして誰
かいるの?」ときくと、
おばあさんは厳しい口調で
「あんたは知らなくていい」と言ったそうです。

(おーで)
この話、こわかった! ほかのひとにも読ませたい。
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2011-08-05-FRI